不妊治療は女性の年齢によって治療の内容やスピードが 変わってきま。治療を始めるにあた、どのような点 に注意したらいいのでしょう。生理や必要な検査につ いてな、今回 20 代の女性から寄せられた悩みや問をもと、秋山レディースクリニックの秋山芳晃先生 に詳しく解説していただきました。

 

ク  先生 東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医科大学附属病院、国立 大蔵病院に勤務後、父親が営んでいた産科医院を継ぎ、不妊症・ 不育症診療に特に力を入れたクリニックとして新たに開業。

生理の経血量が多いと妊娠しにくい というのは本当なのでしょうか?

妊活を始めて4カ月。知人に相談をしたら、「生理の経血量が多い と妊娠しにくいよ」と言われました。確かに私は昔から経血量が多 く、生理痛もひどいほうです。 質問者:ナナさん(27 歳)

 

子宮筋腫など婦人科系疾患が原因の場合は妊娠しにくくなることも。

経血量が 30ml 以下の非常に少ない場合を過少月経、経血 の量が多く、150ml 以上ある場合を過多月経といいます。生 理の血液量を正確に測るのは困難ですが、血液と一緒にレ バー状の塊が出たり、健康診断などで貧血を指摘されている 場合には過多月経の可能性があります。

過多月経の原因として、子宮筋腫子宮腺筋症、子宮内膜 ポリープなどの婦人科系疾患が挙げられ、このような病気が あると妊娠しにくくなる、いわゆる不妊要因の一つになると 考えられています。

経血の量が多いと感じられたら、あるいは健診で貧血と指摘 されたら、一度婦人科を受診して将来の妊娠の妨げになる病気 がないかどうか診ていただいたほうがいいかもしれません。

もちろん、婦人科的な病気でなくても毎月のホルモンの出 方によっても出血の量は変わりますので、1、2回生理の時 の出血量が多かったからといって過度に心配される必要はな いと思います。

 

妊娠できる体なのかチェックは必要?  男性の肥満についても教えてください。

結婚したら早く子どもが欲しいので、ブライダルチェックを受 けたほうがいいですか。また、婚約者がおデブなのですが、男 性も肥満だと妊娠しづらい? 質問者:かすみ草さん(23 歳)

20 代の方でもブライダルチェックを。 男性肥満 BMI 30 以上なら要注意!

血液検査により十分な風疹抗体をもっているか、クラミジアや淋菌感染の有無、甲状腺ホルモンの異常がないかど うか、また子宮がん検診や超音波検査により妊娠前に精密 検査や治療が必要な病気がないか、年齢が若くてもあらか じめ調べておくのはとても大切なことだと思います。

これらの検査をブライダルチェックとして行ってい るクリニックや病院も多いのでは? 当院でも実施し ており、ご結婚前でも受けることができます。検査は自 費ですが、だいたい1万円前後で受けられると思います から、お近くの婦人科のホームページなどで調べてみて はいかがでしょうか。

男性の肥満については不妊の原因になることが知られてい ます。イギリスのガイドラインでは BMI が 29 を超える男性 肥満は造精機能(精子をつくる能力)を低下させるといわれ ています。BMI(ボディマス指数)は体重と身長から算出さ れる肥満度を表す体格指数。体重(kg)÷[ 身長(m)]2 の計 算式で割り出します。

たとえば身長 170cm の方の体重が 100kg であったら、  100 ÷(1.7 × 1.7)で BMI は 34.6 になります。30 を超え た場合は、せめて 25 ~ 30 未満(肥満1度)程度に減量 することが望ましいでしょう。

 

夫が不在の3カ月間ピルを服用予定。 数カ月でも妊娠への影響はある?

夫が出張で3カ月不在の間に、子宮内膜症や PMS を悪化させ ないためにピルの使用を提案されました。服用をやめたら、 翌月から妊娠は可能でしょうか? 質問者:ちかこさん(25 歳)

内服中止後、3カ月以内に排卵が再開。 妊娠への影響は心配ありません。

低用量ピル中止後の妊娠率は6カ月で 74%、12 カ月 で 88%です。これはピルを内服していなかった集団と 変わらないという報告があります。また、低用量ピルの 内服を中止して1周期目で 21.3%、3周期目で 45.1%、  1年後で 79.4%、2年後で 88.3%の方に妊娠が認めら れており、これも低用量ピルを内服したことのない女性 の妊娠率と変わりなかったという報告があるのですね。 また、低用量ピルの服用期間によっても妊娠率に差はな く、長く内服している方の妊娠率が低くなるということ もないといわれています。

低用量ピルの服用が、すでに子宮内膜症のある患者さ んの妊娠しやすさを改善するという証拠は今のところ ありませんが、卵巣にできた子宮内膜症の病巣を縮小さ せる効果は期待できるといわれています。

数カ月の使用でどの程度の効果があるのかわかりま せんが、性交渉をおもちになれない間、使用する選択肢 はあるのではないでしょうか。

内服中止後、排卵が回復する期間はピルの種類により 異なりますが、だいたい3カ月以内に約 90%の確率で 排卵が再開するとされています。

 

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。