自然妊娠はむずかしい?

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群) で排卵誘発剤を服用。

卵巣が腫れて心配です

吉田 仁秋 先生 獨協医科大学卒業。東北大学医学部産婦人科学教室入局、不妊・ 体外受精チーム研究室へ。米国マイアミ大学留学後、竹田総合病 院産婦人科部長、東北公済病院医長を経て、吉田レディースクリニッ ク開設。地元のサッカーチーム「ベガルタ仙台」や野球の「楽天イー グルス」の年間シートをお持ちの先生。今年は自ら観戦したいと意気 込んでおられました。健康維持のために県内の産婦人科の先生たちと ゴルフも楽しんでいるそうです。
キセキさん(28歳)からの相談 Q.結婚 2 年で子づくりを開始。病院で PCOSと診断され、排卵誘発剤のセロフェ ンⓇを服用。薬の副作用なのか、卵巣が7㎝になり腫れてしまいました。血液検 査はLH18.5mlU/ml、FSH9.2mlU/ml、TES0.36。ヒューナーテスト(性 交渉から13~15時間後)では、医師から動いている精子が1匹もいない といわれ、薬の影響ではないかと心配です。以前はセキソビットⓇも飲んでいま した。精液検査では精液量2.5ml、運動率58%。夫は多血症のため数値が 低下しないか不安です。卵巣の腫れなどが気になり、別の病院で検査しました。 すると、PCOSの特徴であるネックレスサインがなくなっていました。突然、 PCOSが治ることはありますか? これまで人工授精1回と卵管通水を、新し い病院ではタイミング療法を1回行いました。現在、サプリメントはベルタや グリスリンを飲んでいます。

ホルモン負荷と、インスリン値

キセキさんはPCOSと診断され、服薬後に卵巣が腫れたことを心配しています。
吉田先生 LHやFSHは 10 以下で同じ くらいの数値が理想ですが、キセキさんは倍近い。
LHが高いのもPCOSの特徴ですが、確実に診断するためには、ホルモン負荷試験を行います。
さらに、空腹時の血糖値とインスリン値を血液検査で調べ、インスリン抵抗性が高いかどうかを分析します。
キセキさんが未検査なら受けてみてください。
一方、薬はセロフェンⓇのほかに、セキソビットⓇも飲んでおられますが、これらは作用する場所が違うだけで、2つとも排卵を起こすための薬。
卵巣の腫れは、薬の投与量を加減することで軽減が可能です。
卵巣が腫れるくらい卵胞が大きくなるということは、薬に対する反応がよく、極めて有効と考えられます。

卵巣の腫れ対策

薬の加減とは、具体的には?
吉田先生 卵巣の腫れが心配であれば、いくつか対策があります。
一つは薬を飲む錠数を減らす。
たとえば、1日1錠を5日間飲むのが通常なら、 3 日分だけに。
ほかにもステロイド剤を併用したり、あるいは漢方薬の「柴苓湯(さいれいとう)」との併用で卵巣の腫れを和らげる働きが期待できます。

ヒューナーテストの結果

ヒューナーテストの結果もキセキさんは不安のようです。
吉田先生 通常のヒューナーテストでは、1回の検査だけでは決められません。
最初の結果がマイナスであれば、再度、試してみてください。
今回のテストでは性交渉から 13 時間以上と時間が経っていますよね。 次回は、できれば当日の朝に性交渉をして午前中に来院し、もう一度調べてみてはいかがでしょう。
精子の検査データは正常なので「動いている精子が一匹もいない」というのも、心配はないかと思います。
また、ご主人が多血症とのこと。
多血症は血液中の赤血球の量が増える状態を指します。
私は多血症の専門医ではありませんが、多血症は一つの病気ではなく、さまざまな疾患や原因で起こり、いろいろなタイプがあるようです。
たとえば、飲酒後や運動後では、血液中の赤血球の割合(ヘマトクリット値やヘモグロビン濃度)が上昇することがあります。
その時のコンディションによって数値が大きく左右されるため、内科の医師とよく相談してみてください。

PCOSと自然妊娠

PCOSが突然治ることはありますか?
吉田先生 PCOSは生理周期にも関係していて、診断基準の中には生理が 2 、 3 カ月来ない稀発月経があります。卵胞が連なってネックレス状態だと排卵が起こりにくい。
しかし、生理が来るとコンディションが変わって消える場合もあります。
一方で、ホルモン療法でPCOSが治る場合もあります。
また、ベルタサプリやグリスリンサプリもPCOSに良いといわれており、その効果が表れたのかもしれません。
排卵を確かめていれば、薬を飲むことで自然妊娠は十分可能です。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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