胚盤胞移植について

Q 受精後、胚盤胞に育ちません。 顕微授精を続けるべき?

内田 昭弘 先生 島根医科大学医学部卒業。同大学の体外受精チームの一員とし て、1987年、島根県の体外受精による初の赤ちゃん誕生に携わる。 1997年に内田クリニック開業。生殖医療中心の婦人科、奥様が副 院長を務める内科、大阪より月1回来院の荒木先生による心理カウン セリングをもって現在のクリニックの完成形としている。今年は開院20 周年を迎え、「島根県で初めて、不妊治療中心の婦人科クリニックを 35歳で開業し、皆さんに支えられてきました。これからも、与えられた使 命を全うするべく前に進みます」と、気を引き締める内田先生です。
ばろんさん(41歳)からの相談 Q.2人目不妊で治療中です。1人目はタイミング法で妊娠し、 40歳で出産しました。AMHは0.6~1.1ng/ml程度 です。低刺激系かつ胚盤胞移植のクリニックに通い、2回、 自然周期で採卵、顕微授精しました。でも、2 回とも3 ~4個が受精したものの胚盤胞まで育たず、移植に至って いません。採卵、受精はできているので、良好な卵子が できるまで採卵の数をこなすべきかとも思いますが、低 AMHの場合でもショート法をする病院もあると聞き、こ のまま今のクリニックで採卵を続けるか、ショート法を試 してくれるクリニックに転院するかを考えています。また、 初期胚の移植も考慮すべきでしょうか?

胚盤胞まで育たない時、考えられること は何でしょうか?

内田先生 年齢から低AMHというのは明らかですが、 41 歳にして 0.6 ~ 1.1   ng/ ml という数字が出ているので、もう少し刺激したら、卵子がちがう育ち方をするかもしれません。3 ~ 4 個の受精卵があるなら、採卵の回数を重ねるというのもあるし、胚盤胞を待たずに初期胚の段階での移植もあるだろうし、初期胚を凍結してから移植する方法もあるでしょう。別の方法を試して、その結果でまた次を考えるということだと思います。ばろんさんに関しては、まだほかのプランがありそうな気がしますよ。

内田クリニックでは、どのような治療を 提案しますか?

内田先生 僕は、顕微授精で胚盤胞にならなくても、体外受精ならちがうかもしれないという考え方をします。まずはスタンダードな方法で、卵子数が仮に 2 個だとしたら、1回目には体外受精をします。それで受精卵にならなかったら、 2 回目は、おそらく同じ方法に近い内容で排卵誘発剤を使い、その時に卵子の数が 2 個であれば、顕微授精にするでしょう。結果、卵子数がやはり少ないということになれば、次は低刺激でと変えていきます。僕は、特に採卵周期、卵子を育てる周期にはできるだけ同じことの繰り返しにならないよう心がけています。注射薬の種類や排卵誘発剤の内服薬を変えてみる、点鼻薬を使っていなかったら、今度は使ってみようかとか、何かを変えてみることを伝えます。

ばろんさんは、このまま今のクリニック で採卵を続けるべきか迷っています。

内田先生 限られた治療法のなかで、ばろんさんが別の方法を模索するのも無理はないと思います。今のクリニックでは、AMHの状況を考えると大きくは変えられないからということかもしれませんが、「変わらないかもしれないことを前提として、別の治療もやってみたいのですが」という提案の仕方はあると思います。今のクリニックの先生から別のプランの提案がないとしたら、ばろんさんから別プランがあるかどうかを先生に確認し、提案があればそれでやってみてもいいですし、なければ、相談のできる施設に転院することもありでしょう。いずれにしても、年齢のことを考えると、決断はできるだけ早いほうがいいと思います。

まずは、抱いた疑問を担当医に伝えるこ とでしょうか?

内田先生 そうですね。疑問を抱いても、それを聞けずにいるという人は意外と多いようです。転院を考える前に、今、通院している施設の先生に相談することは大切なこと。わからないことがあったら勇気を出して聞いてみましょう。施設の治療方針、別の方法などを聞くことで、転院をするかどうかの判断もできるのではないでしょうか。
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