【Q&A】保険診療移植前に優先すべき検査は?~中島先生【医師監修】

OCさん(40歳)

あと2回しか保険診療移植回数が残っていません。
今後最優先して行った方がいい検査はありますか?

福岡ARTクリニックの中島章先生に伺いました。

【医師監修】中島 章 先生 先生 (福岡ARTクリニック)
鹿児島大学医学部卒業。久留米大学病院産婦人科、国立成育医療センター周産期診療部不妊診療科(現・国立成育医療研究センター)などを経て、2025年9月、福岡ARTクリニック開業。サッカー観戦が趣味で、特にアビスパ福岡を応援しているそう。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

ご相談内容を拝見しました。これまでに十分な検査と治療を受けておられ、その中で複数回「着床している」という事実はとても重要な情報です。この点から考えると、現在の課題は「着床するかどうか」ではなく、「着床後に妊娠を維持できるか」という部分にあると判断されます。その前提で、今後の方針についてお伝えします。

①先生でしたら、どのような検査を最優先として提案されますか?

まず、最優先で検討したいのは、子宮内の環境と不育症に関わる因子の評価です。

・子宮内の慢性的な炎症がないかを確認するため、子宮鏡検査に加えて慢性子宮内膜炎の評価(CD138なども場合によっては実施)を行うこと
・子宮内フローラの状態を確認する検査(EMMA/ALICEや子宮内細菌叢検査2)
・不育症関連の検査、特に抗リン脂質抗体症候群や凝固系異常の評価

これらは「着床後の維持」に関わる要素であり、今回の経過を踏まえると優先度が高いと考えます。なお、ERA検査についてはすでに複数回着床していることから、着床のタイミングのズレが主因とは考えにくく、現時点では積極的には必要ないと考えます。

②移植の成功率を高めるために推奨される検査は何ですか?

次に、移植の成功率を高めるための考え方ですが、今回のケースでは移植自体は成立していますので、問題は着床率ではなく妊娠継続率にあります。したがって重要なのは、

・子宮内環境(炎症や細菌バランス)の正常化
・血栓傾向や免疫的要因の評価と必要に応じた治療

といった、「維持側」に対するアプローチになります。

③保険診療の回数が限られている場合の効率的な進め方を教えてください。

また、保険診療の回数が限られている中での進め方としては、戦略的に治療を進めることが非常に重要です。

・一度採卵を行い、良好胚をしっかり確保すること
・胚の質を見極め、条件の良い胚に絞って移植すること

限られた回数の中では、回数を重ねることよりも「質の高い胚を選択して移植する」ことが結果につながりやすいと考えます。

④特定の遺伝的検査の必要性について先生のご意見をお聞かせください。

遺伝学的検査については、不育症の観点から

・夫婦の染色体検査(G-band法)
は一度確認しておく意義があります。さらに自費診療にはなりますが、

・PGT-A(着床前胚染色体検査)
は、流産を繰り返している症例では一定の有用性が期待されるため、希望があれば検討してよい選択肢です。

⑤移植成功率を上げるための生活習慣の改善法についてアドバイスをお願いします。

最後に生活習慣についてですが、見落とされがちではあるものの非常に重要な要素です。現在のBMIがやや低めであることから、軽度のエネルギー不足が関与している可能性も考えられます。

・タンパク質を意識した食事
・非精製の炭水化物(玄米や全粒穀物など)
・食物繊維の摂取
・朝食をしっかり摂ること
・十分な睡眠の確保
・冷え対策

といった基本的な生活習慣の見直しが、子宮環境やホルモンバランスの安定につながります。サプリメントについては、すでに取り組まれている葉酸、ビタミンD、亜鉛の継続は非常に良いと思います。

まとめますと、今回の経過からは「着床できない状態」ではなく「妊娠が継続しにくい状態」と考えられます。そのため今後は、着床率を上げる検査や治療よりも、妊娠を維持するための環境整備に重点を置くことが、最も合理的なアプローチになると考えます。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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