ショート法で卵子が増えない、育ちません

Q 卵子が増えず、育ちも悪い。 AMH値が高いのが原因?

吉田 仁秋 先生 獨協医科大学卒業。東北大学医学部産婦人科学教室入局、 不妊・体外受精チーム研究室へ。米国マイアミ大学留学後、竹 田綜合病院産婦人科部長、東北公済病院医長を経て、吉田レ ディースクリニックを開設。2016年1月に「仙台ARTクリニック」 として移転・リニューアルオープン。今秋に開催される日本IVF学 会の主催者を務める吉田先生。今回は20回目という記念すべき 年。ゲストの招致から懇親会の企画まで、1~2年前から準備を 進めているそうです。

ドクターアドバイス

●AMHが年齢平均値より極端に高い場合、多嚢胞性卵巣症候群である可能性も。

●経過を見て結果が出なければ、卵巣刺激法を変えたほうがいいケースもあります。

いちこさん(30歳)からの相談 Q.今月から体外受精の採卵周期を始めました。ショート法に よる刺激で今D11ですが、なかなか刺激に反応せず、 卵子が増えないし、育ちません。AMHは8.21ng/ml、 FSHは月経開始7日目あたりで 9.9mIU/mlと少し高め でした。先生になぜ育たないかを聞いたところ、「AMH は誤差があるし、これだけがすべてではない」といわれ ています。このまま採卵、移植、妊娠できずとなるので はないかと思って、どうしたらいいかわかりません。「やっ てみないとわからない」という話でしたが、過去に妊娠 経験(胎児の異常で中期中絶になりました)があり、体 外受精すれば妊娠する可能性は十分にあるといわれてい たのでかなりショックです。

AMHが 8 ・ 21ng/ ml ということですが、 この数値は年齢の割に高めなのでしょうか。

吉田先生 AMH(抗ミュラー管ホルモン)は 25 歳くらいだと 4.2ng/ ml 前後、 30歳だと 3.5ng/ ml 前後が平均値だと思うので、 8 ・ 21ng/ ml というのは確かに高め だと思います。
AMHはほかのホルモンのように月経周 期に左右されず、いつ測ってもそれほど誤差はないと思いますが、極端に高い・低いという場合は何か異常が隠れている可能性もあるので、それを確かめるという意味でも再度検査を受けてみてもいいかもしれません。
AMH検査では卵巣内にあとどれくらいの 数の卵子が残っているか、つまり、卵巣の予備能力を知ることができると考えられています。
年齢が高くなると当然、値は低くなっていきますが、逆に年齢平均値より高い場合は小さな卵胞が増えてしまうPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の可能性があります。
刺激をしても卵胞の育ちが悪いというのも気になりますから、いちこさんには多嚢胞性卵巣の傾 向があるのではないでしょうか。

高AMH=PCOSと判断していいので すか?

吉田先生 PCOSの診断基準はほかにもあります。
生理不順がある、超音波検査で 10 ㎜程度の未成熟な卵胞がたくさん見られる、血中の男性ホルモン値が高い、基礎ホルモン検査でLHFSH比が2以上、インスリン抵抗性をもつ……など。
AMH以外にこれらの要素も調べ、PCOSでないかどうか、確認されてみてはどうでしょうか。
PCOSだった場合は、その重症度によっ て今後、卵巣刺激法を変えていったほうがよい場合もあります。

現在はショート法で刺激されているようで すが、こちらのクリニックではどのような方法を選ぶことが多いのでしょうか。

吉田先生 当院では現在、ショート法は行っていません。
PCOSということであれば、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)に注意する必要があるので、当院では、IVM(未成熟卵体外培養)という方法をご提案しています。
これは卵胞から未成熟の状態で採卵し、体外で培養して成熟させるというもの。
卵胞を成長させなくてよいので、排卵誘発 のための注射が減るというメリットがあり、卵巣への刺激も少なくて済むので、誘発を行うと過剰に反応しやすいPCOSの方でもOHSSのリスクを避けることができます。
正常な方に比べて、未成熟などの傾向が少 しあるかもしれませんが、未成熟な卵子でも成熟して受精さえしてくれれば、その後の過程は通常と同じなので、あまり気にすることはないと思います。
卵胞チェックで3個確認できたということ ですが、それもたまたまこの周期だけだったかもしれません。
まだ途中の段階なので、今はあせらず、このまま経過をみていってよい のでは。
ご担当の先生もそうお考えだと思いますが、結果を見てから検査や今後の刺激法を検討していっても遅くないでしょう。
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