人工授精のタイミングと精子の寿命について

Q 人工授精するタイミングが 早いのではないかと心配です

堀川 隆 先生 琉球大学医学部卒業。国立国際医療センター、国立成育医療 センター不妊診療科勤務を経て、2009年12月より高崎ART クリニック院長に就任。国際医療センター勤務時より内視鏡手術・ 生殖補助医療に従事。成育医療センターでは難治性不妊治療・ 加齢と不妊についての研究に取り組む。桜が大好きという堀川 先生。ご出身の沖縄にも桜はありますが、やはり繊細な色み のソメイヨシノに惹かれるとか。とうとう苗木を3本購入。ベ ランダで育てて、"マイ桜"が咲くのを楽しみにしているとか。

ドクターアドバイス

●排卵日前後、半日以内程度のズレなら問題はないと思います。
●ヒューナーテストが不良でなければ、同時に自然のタイミングもとってみては?
ききさん(33歳)からの相談 Q.土曜日に卵胞チェックと血液検査をして、月曜に人工授精を することに。月曜日の午前11時過ぎに実施し、その後HC G注射をしました。私がつけているカレンダーでの排卵予定 日は火曜日。生理周期は安定していて、D14に排卵して いると思います。前回の人工授精でも排卵予定の前日11 時頃行っており、排卵検査薬をみても排卵は人工授精の翌 日の夕方から夜にかけてだったと思います。今回はHCG注 射をしているので、検査薬が反応してしまってよくわからず、 今朝火曜日の基礎体温はまだ低温でした。人工授精のタイ ミングが早かったのではないでしょうか。洗浄・濃縮後の 精子の寿命もネットで調べると6〜12時間、24時間、2 日とバラバラで、少し心配です。

人工授精はどのタイミングで行うのが一番 望ましいのでしょうか。

堀川先生 以前は、「卵子は1日程度、精子 は2~3日は受精能力があるので、排卵より 前に精子を入れたほうがいい」というのが一 般的な考え方でした。
しかし最近は、遠心分 離や抽出など、人工授精前に必ず精子を処理。
負荷をかけることで、受精能力が落ちてしま うことがあるんですね。
そうすると、受精で きる期間はあまり長くない。
ききさんも処理後の精子の寿命を調べて、 6~ 12 時間という情報もあって心配されたよ うですが、それは少し短いかもしれません。
おそらく1日くらいは、能力を保つことがで きるのではないかと思います。
そのようなことを考えると、やはり適した タイミングは排卵日あたりが最も望ましい。
ぴったり合わせるのは難しいかもしれません が、排卵日前後で半日以内程度のズレなら問 題はないと思います。

なるべく確実に排卵日を見極めるためには どうしたらいいのですか?

堀川先生 排卵日を探る方法として、一つ は排卵時に分泌が高まるホルモン・LHの 値を目安にタイミングを見つけます。
もう 一つはHCG注射などで排卵誘発をして、 タイミングをしっかり合わせていく。
この 二つがあると思います。
それぞれの方法には一長一短があって、施 設の考え方や患者さんの状況によって、選択 が異なることも。
LH値の上昇を目安にみて いったほうがよりナチュラルで、本当の排卵 日のところでタイミングを合わせやすいと思 いますが、そのためには連日のように来院し ていただいて、採血や卵胞チェックを何度も しなければなりません。
一方、HCG注射で排卵誘発する場合は、 本来よりも早く排卵させようとするので、 子宮の準備が追いつかなかったり、卵子が成熟していないこともゼロとはいえないの で、あまりよくないという意見も。
ただし、 来院回数が少なく、人工授精の日を決めや すいという利点もあります。
担当医の先生もそれらをご存じで、コス トや患者さんの負担など、さまざまな側面 からみて、方法や実施日を決められたのだ と思います。
ご自身でも検査薬などで排卵日を予測されていますが、生理が順調な方 でも周期によって1~2日ずれてしまうこ とはよくあります。
今回の先生の判断は一 般的だと思うので、神経質に考えすぎるこ とはないのでは。
このパターンでも妊娠の 可能性は十分あると思います。
もっと厳密に行うなら、日曜日にも診 察したり、月曜日だけでなく、火曜日も 人工授精する方法もあるかと思いますが、 それで妊娠の可能性が劇的に高まるとは 考えにくいでしょう。
当院では人工授精のリスクヘッジとし て、ヒューナーテストなどに問題がなけれ ば、受精しやすい時期ということで、同時 に自然な形での夫婦生活をもっていただい ています。
ききさんのご主人は精子の数が 少なめということですが、極端に悪い数値 ではないので、タイミング法も重ねてトラ イしてみてはどうでしょうか。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。