良好胚なのに着床しません。今後どうすれば?

神谷レディースクリニック 岩見 菜々子 先生 札幌医科大学卒業。2014 年より神谷レディースクリニック勤務。日本生殖医学会生殖医療専門医。日本産科婦人科学会認定専門医。日本抗加齢医学会専門医。

相談者:みーこさん(30歳)6 回の人工授精を経て、体外受精にステップアップしました。採れた卵子 20 個のうち胚盤胞になったのは 3 個のみ。一番良い胚(4BA)をホルモン補充周期に戻しました。ドクターからは 良好胚なので妊娠すると言われましたが、着床しませんでした。残りの胚はBB とBC のみでとても心配です。10 代の頃の中絶経験は影響しますか? 着床しない原因は何でしょうか? 卵管造影、子宮鏡検査ともに異常なし。ルティナスⓇ腟錠をやめて3 日、まだ生理がこないことも少し心配です。

 

検査の結果など、今の状態についてはどう思われますか?     

岩見先生●生理がこないことを心配していらっしゃいますが、プロゲステロン(ルティナス R腟錠)の投与終了後の出血時期は、患者さんによって違います。投与日以内に出血すれば問題ないと思い ます。また、子宮鏡検査や卵管造影なども行ったうえで移植をされています。移植時の子宮内膜の厚さやホルモン値が正常であれば、みーこさんの状態に特に問題はないでしょう。

4BAの良好胚で着床しませんでした。胚の評価法や、妊娠率ついて教えてください。

岩見先生●「4BA」はガードナー分類という評価法で胚の状態を表したものです。数値は胞胚腔の大きさからみた発育状態で、1が初期で6が着床寸前の状態。AからCのアルファベットは順に内細胞塊と栄養外胚葉のグレードを表します。一般的には3BB以上が良好胚といわれます。みーこさんの4 BAは胚のグレードとしてはかなり高いといえます。

この評価法は判定者の主観が入るため、施設によって評価が変わることがあり、グレードごとの妊娠率も異なってきます。当院のデータでは、  37歳以下の胚盤胞グレードBAの場合、着床率は  70%弱、妊娠継続率は60%程度BB胚でも着床率58%、継続率は  50%前後です。ですからみーこさんの残りの胚も移植に適していると思います。

着床しない理由は何でしょうか?

岩見先生●実は受精卵の染色体異常が極めて低いだろうと予想される胚であっても、妊娠継続率は70%前後との報告が多数あります。子宮内環境や着床の窓(胚移植に最適な時期)、免疫学的な要因など、染色体異常以外の要因が妊娠維持には関与しているといわれており、そのような背景因子に関する検査の技術進歩も進んできました。特に子宮内環境に関しては子宮内に存在する細菌のアンバランスが高頻度に検出される慢性子宮内膜炎という状態が起こりうることも報告されています。

次の移植に向けてのアドバイスをお願いします。

岩見先生●残りの2個の胚は貴重ですから、もう一度移植をしてみるか、子宮内環境や免疫学的要因などの検査を先に行うか、ご主人と相談してみましょう。

今後  2回以上の移植でも着床しない場合、着床前スクリーニングができる施設での採卵を考えるのも選択肢の一つです。

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