顕微授精6回目で着床すらしない。「着床の窓」が原因では?

蔵本ウイメンズクリニック 蔵 本 武 志 先 生 久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修 了。山口県立中央病院産婦人科副部長、済生会下関総合病院産婦人科部長を経て、1990 年オーストラリア・PIVET メディカルセンターへ留学。帰国後、1995 年蔵本ウイメンズクリニック開院。JISART(日本生殖補助医療標準化機関)理事長。久留米大学医学部臨床教授。

相談者:ギズモさん(37歳)着床には、「着床の窓」というものがあると聞きました。顕微授精で、良好な胚を移植しても着床すらしないことが続き、私はその「着床の窓」に原因があるのではないかと思い始めています。ホルモン補充周期で移植の場合は、どこを基準に排卵日とするのでしょうか?  また、私の通っている病院では移植前の血液検査も、移植後のホルモン補充の注射もありません ( エストラーナテープⓇと腟坐薬はいつも出ます )。子宮内膜の状態だけで移植に最適な日を判断できるのでしょうか?

 

「着床の窓」について教えてください。着床できないことと関係がありますか?

蔵本先生●着床するためには良好胚とよい子宮内膜環境が必要です。ギズモさんのご年齢で形態良好な胚盤胞 1個移植であれば、通常は  50 %程度は着床します。

胚移植時期については、ホルモン補充療法でエストラーナの貼付剤で子宮内膜7〜8㎜以上あれば問題ありません。

ホルモン補充療法の場合は排卵させないため排卵日とはいいません。プロゲステロン製剤(通常、腟剤)の投与を開始した時点で排卵と仮定し、その5日後に凍結胚盤胞を融解して胚移植します。

胚盤胞が着床する子宮内膜の時期は限られており、子宮内膜の着床準備ができている状態を「着床の窓」と呼んでいます。数年前スペインの施設で、着床の窓の時期にズレがないかを調べる遺伝子検査法 E R A (子宮内膜受容能検査)が提唱されました。反復着床不全の方が対象で、症例の約3割に着床の窓のズレがあり、そのうち約8割は後ろにズレている、最も多いのは1日後ろにズレている

ことが報告されています。ズレている場合は、良好胚を移植しても妊娠が成立しませんので、治療施設で E R A 検査ができるか尋ねてみてはいかがでしょう?

他に考えられる原因はありますか ?

蔵本先生●着床不全のもう一つの大きな原因に、胚の染色体数の異常があげられます。現在、日本産科婦人科学会が特別臨床研究として、胚盤胞の胎盤になる細胞を  5〜7細胞採取して、染色体数の異常の有無を調べる着床前胚染色体異数性検査( P G T-A )を認定施設で行っています。

さらに、E R A と合わせて E MM A (子宮内膜マイクロバイオーム)検査と A L  I  C E (感染性慢性子宮内膜炎症)検査もされるとよいでしょう。E MM A は、子宮内の細菌叢のバランスが正常化どうかを調べる検査。 A L  I  C E は、慢性子宮内膜炎の原因となる悪玉菌の有無を調べるもので、3つ同時に行うことが可能です。また子宮鏡検査で、内膜に異常がないか調べてみることもおすすめします。

血液検査やホルモン補充の注射がないことを心配されていますが?

蔵本先生●きちんと腟剤を腟奥に挿入すれば、プロゲステロンは血中をあまり介さず、直接子宮内膜に作用するので、血中プロゲステロン値は気にする必要はありません。追加のプロゲステロンやHC Gの注射をしても、妊娠率には差はみられないと思います。大事なのは、腟剤は入り口付近では吸収率がよくないため、きちんと奥まで挿入することです。

 

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