女性ホルモンと妊娠
月経、排卵、妊娠の成立には、女性ホルモンが大きくかかわっています。
そもそも女性ホルモンは、どんな存在で、どんな働きをしているのでしょうか。
妊娠とホルモンのしくみについてしっかり知っておきましょう。
女性ホルモンの分泌とメカニズム
1. 脳下垂体から、性腺刺激ホルモンの FSH(卵胞刺激ホルモン)が分泌され て卵巣へ。
2. 卵巣の中の卵胞のうちの1個がFSH に刺激されて成長。
3. 発育した卵胞から、E2(エストラジオー ル・卵胞ホルモン)が分泌され、子宮内 膜に働きかけて子宮内膜を厚くしていく。
4. E2 の分泌量がピークに達すると、脳 下垂体からLH(黄体化ホルモン)が分泌。
5.LHが卵巣に届くと、成熟した卵胞か ら1個の卵子が飛び出す。これが排卵。
6.排卵後の卵胞は黄体というものに変化 し、プロゲステロン(黄体ホルモン)を多 量に分泌。この時、E2 も少量分泌される。
7.プロゲステロンは子宮内膜に働きか け、受精卵が着床できるように準備。
8.受精が成立しないと、プロゲステロ ンとE2 の量は減り、子宮内膜がはがれ、 月経血となって出ていく。
LH(黄体化ホルモン)
脳下垂体から分泌される性腺刺 激ホルモン。卵胞ホルモンと黄 体ホルモンの分泌を促進する作 用がある。LHは卵巣に送られ、 FSHが成熟させた卵胞に排卵 を促す。排卵の直前に多く分泌 されるため、LHを測定するこ とで排卵日の予測ができる。
エストロゲン(卵胞ホルモン)
月経周期や排卵にかかわる女性ホルモン。女性らし い体をつくり、受精卵が着床しやすいように子宮内 膜を厚くしたり、頸管粘液を出して精子を入りやす くする働きがある。分泌量が減少すると生理不順や 排卵障害、さらに更年期障害につながる。
FSH(卵胞刺激ホルモン)
脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモ ン。卵胞ホルモンの分泌を促して卵胞を 成熟させる。FSHが正常値よりも高い、 または低い場合、不妊症や月経異常、更 年期障害の可能性が考えられる。
E2(エストラジオール)
卵胞ホルモンを構成する主成分の一 つで、卵胞の成長を促す働きがある。 不妊治療の一般検査では、E2の値 によって卵巣が正常に機能している かを判断。正常値より高い、または 低い場合、排卵障害や卵胞の発育不 全などが考えられる。
プロラクチン(PL)
脳下垂体から分泌されるホルモンで、乳腺 を発達させて乳汁(母乳)の分泌を促す。 妊娠していないのにPLの値が高い場合、 無排卵などの月経異常を招く、高プロラク チン血症が考えられる。
卵子の成長、受精、妊娠まで
1.生理の時期にホルモン の刺激で卵巣の中で卵 胞が成長
2.途中から1個だけが大 きく成長して卵巣の外 に飛び出す(排卵)
3.卵管に入り、卵管膨大 部で精子と合体すれば 受精卵に!
4.細胞分裂しながら子宮 内へたどり着く
5.受精から約1週間かけ て子宮内膜に着床
6.着床が完了すると妊娠成立!
プロゲステロン(黄体ホルモン)
妊娠の維持をサポートする女性ホルモン。体温を上げる作用 があるため、妊娠を助けるホルモンともいわれる。受精卵が 着床しやすいよう子宮内膜を厚くする。また、妊娠に備えて 乳腺を発達させる。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)
発育過程にある卵胞から分泌されるホルモ ン。AMHの値は卵巣に残された卵胞の数と 比例していると考えられている。AMH検査 をすることで、卵巣に残された卵胞の多さを 推定することができる。一般的には、AMH の値が高いほど残っている卵胞が多い。
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)
排卵障害の1つで、卵巣の中に卵胞はたくさんで きるものの、発育が遅く排卵できなかったり、排 卵できても卵子の質が悪い傾向がある。原因には 血糖値をコントロールするインスリンへの抵抗 性と男性ホルモンの高値などが関与している。