食事と生活スタイルを変えると2〜3か月後には妊娠体質となる!

赤ちゃんを授かりにくい理由は、年齢や機能的な問題などさまざまですが、毎日の食事もその一つといわれています。妊活中にとりたい栄養素や生活習慣について、大宮レディスクリニックの出居貞義先生にお話を伺いました。

大宮レディスクリニック 出居貞義先生 信州大学医学部卒業。自治医科大学産婦人科に入局後、産科、婦人科、不妊症の治療にたずさわり着床研究の道へ。03年、大宮レディースクリニックを開業。加齢と活性酸素にかかわる不妊症の研究をすすめ、栄養療法を取り入れた最短で効果的な不妊治療を提案。難治性の不妊症や高齢で卵胞が少ない人の治療にも定評がある。

毎日の食事によって妊活の結果に差が出る!

 

日本は凍結胚移植など生殖医療の技術に優れていますが、それでも赤ちゃんを授かることができず、救われないカップルもたくさんいます。その理由の一つに「食べ物」があると考えています。

採血検査を丁寧に栄養解析すると、不妊症になりやすい人はもちろん、一般の人にも不足しているのが、「鉄分」「ビタミン」「カロリー」「タンパク質」です。

必要な栄養素についての個別の情報はたくさんありますが、不足している栄養素についての簡単で優先的に摂るべき栄養を効率的に摂取する方法は意外と知られていません。

日本人は生命代謝に必要な鉄分が不足している

たとえば、厚生労働省のデータによると、以前は普段の食事で1日10mgの鉄分をとっていましたが、2001年以降は、1日の必要摂取量が8.5mgに対して、平均7.0 mgしかとれていません。東日本大震災の2011年以降は平均6.5mgにさらに低下していますので、国民の約95%は貧血で、それからサンプル抽出して作成した赤血球の基準値は、貧血を否定できないのです。これはほとんどの医師も知らない事で、不妊を訴えて受診される方のほとんどは自覚症状がなくても貧血を抱えています。

鉄分は、赤血球のヘム鉄として全身に酸素を運びエネルギー産生、免疫力や解毒、甲状腺ホルモンの産生、コラーゲン産生(髪や爪)など約1000の生命代謝にかかわる最も大切なミネラルです。ですから鉄分が不足すると朝が弱い、疲れやすい、頭痛、肩こり、冷え性、ネガティブ思考、不安を感じやすくなります。

貧血対策として、もっとも鉄分を補充しやすいのが牛肉です。しかし、牛肉を食べると腸内に悪玉菌が増えやすくなるため、ごぼう、豆、根菜、こんにゃくなどの水溶性の食物繊維と一緒にとるのがポイントです。

例えば、すき焼きには、しらたきを必ず加えてください。しらたきの水溶性食物繊維が腸内の善玉菌を活性化し、悪玉菌・日和見菌を抑え、短鎖脂肪酸のエネルギーと体に必要な全てのビタミンを大量につくり出してくれます。

シンプルな基本食で必要な栄養素が簡単に補える

これに加えて、妊活中の基本食としておすすめしているのが「玄米」「具たくさんの味噌汁」「納豆」です。

玄米は白米に比べてビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれています。なかでも玄米の胚芽にはナイアシン(ビタミンB3)が多量にあり、私たちの細胞のエネルギー源であるミトコンドリアを強力に活性化する働きがあります。またエルゴチオネインという強力な抗酸化物質もあるため、腸管内の食物の腐敗や酸化、悪玉菌の増殖を抑制します。

味噌や醤油、酒、みりんなどを作る麹菌にもとても強い抗酸化作用があり、麹菌の持つ豊富な酵素が摂取した食物の栄養素の多くを数倍〜10数倍に増やし、消化も助けてくれます。

加えて、玄米や納豆にしかほとんど含まれていないスペルミジニンは、男性の精巣で精子をつくるときに必要な貴重なタンパク質の栄養素です。おすすめの基本食は不妊傾向の男性にもおすすめです。

とくに朝食をとる習慣がない男性は、精子の状態が思わしくない傾向があります。毎朝、具たくさんのお味噌汁を1杯摂るだけでも、精子運動率は20〜40%程度向上します。朝食を玄米でしっかり摂れば精子濃度も簡単に1〜2ヶ月で向上します。朝食を取らない不妊男性は是非試してください。

バランスのとれた食事や良質な睡眠も治療の一つ

栄養バランスのとれた食事を毎日とるのはむずかしいと思われがちですが、玄米、味噌汁、納豆を基本として、野菜多めにして肉を一緒に摂ると、鉄分、ビタミン、カロリー不足を簡単に解消できます。

逆に、小麦製品や乳製品、白砂糖を含む甘いお菓子やスナック菓子などの摂取を控えることをおすすめしています。なかでも小麦のグルテンは腸粘膜に炎症を起こし、牛乳に含まれるカゼインはアレルギーや自己免疫疾患の原因になることもあります。また甘いものは糖化を促進します。

この食事法だけでも私たちの体を活性酸素から守り、ミトコンドリアの活性化を期待できますが、さらにその生活スタイルを変えて活性酸素を抑制することも大事です。

私たちの体の細胞増殖と修復は夜寝ている時に行われ、同時に卵子と精子もつくられます。ですから妊活中の方は、良質で十分な睡眠をメラトニンと成長ホルモン分泌を促すようになるので、なるべく18時ごろに夕食をとり、21〜22時には寝るようにアドバイスしています。

特にメラトニンは体内最強の抗酸化物質で、寝ている時に身体中の全細胞の活性酸素を除去し、染色体の並びを整えてくれて、正常な細胞分裂を促します。それによって閉鎖卵胞になるのを防ぎ、抗ミュラー管ホルモン(AMH)値や卵胞刺激ホルモン(FSH)値の改善、小卵胞数(AFC)増加、流産予防を可能にしてくれます。

そのうえで、採血データーを解析して、大きく欠乏している栄養素を個別にお勧めしています。オンラインでそのような栄養相談を受けつけていますのでご利用ください。主にお勧めしているサプリは、発酵玄米のサプリメント、抗酸化能がCoQ10の100倍以上の抗酸化作用をもつサプリメントなどお勧めしています。これによっていままで難しいと思われていた卵子の質が改善し、妊娠率の向上が期待できます。

出居先生からのメッセージ

活性酸素を多く発生させる食事や生活スタイルは、がんをはじめ、流産や卵子の染色体異常、不妊の原因になります。

簡単で質の良い食事と十分な睡眠を心がけて毎日を過ごすことこそが、妊活中の体を活性酸素から守り、ミトコンドリアの活性化をうながすための大事な不妊治療の基本です。

サプリメントを試すよりも、まずは食事と生活スタイルを変えてみましょう。「クオリティ・オブ・ライフ」の向上をすぐに実感できるはずです。2〜3ヶ月後には卵子や精子の質も変わり、多くの方が自然妊娠できるかもしれません。

 

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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