「冷え」の自覚がない人も要注意。体を温める習慣を

「冷え」の感じ方は人それぞれで、自覚のある人はもちろん、自覚のない人も注意が必要です。また、「冷え」の原因はふだんの生活習慣のなかに隠れていることも多く、意識を少し変えることで改善できることも。身近にできる方法を久保みずきレディースクリニックの石原尚徳先生に教えていただきました。

久保みずきレディースクリニック 石 原 尚 徳 先 生 高知大学医学部卒業後、神戸大学医学部大学院修了。医学博士。兵庫県立成人病センター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、2008 年より久保みずきレディースクリニック菅原記念診療所勤務。不妊治療から周産期・小児医療まで、地域に根ざした総合的なサポート体制が整う同クリニックで、不妊治療/婦人科、産科を担当する。

ドクターズアドバイス

卵胞や子宮内膜の育ちが気になる人は「冷え」を意識して

・「冷え」は骨盤内の血流に影響し、不妊症の原因にも

・生活習慣の見直しで、「冷え」を改善できる可能性も

体が冷えると血流が悪くなり 不妊症や早産、流産の原因に

西洋医学では「冷え」を病気と捉えていませんが、日々患者さんに接していると「冷え」を気にされている方は多いですね。「私は冷え性なんです」とおっしゃる方は、お腹や手足が冷たいなどの自覚症状があり、日常生活でなんらかの不調を感じておられるようです。

女性の平均体温は36.5度前後ですが、なかには35℃台の低体温で明らかに体が冷えている方もいます。もともと女性は男性に比べ

て筋肉量が少なく、体内でつくられる熱量が小さい傾向にあります。これを補うためにある程度の体脂肪が必要ですが、無理なダイエットなどで体脂肪が減ると、体は冷えやすくなります。できるだけ適正体重( BMI値) に近づけることが大切です。

体が冷えると全身の血流が悪くなり、骨盤内にも影響します。子宮や卵巣に必要な血液が供給できなくなると生理痛や生理不順を引き起こして、卵胞や子宮内膜が育ちにくくなることが考えられます。また、妊娠中も胎盤の血流が悪くなり、子宮の収縮が増えて切迫早産や流産のリスクが高くなります。

身近な生活習慣を見直して  体を温めれば免疫力もアップ

「冷え」の原因は環境や服装、食事など身近な生活習慣のなかにもあります。たとえば、寒い季節はもちろんのこと、暑い季節のエアコンも体を冷やす要因の一つです。外来に来られる患者さんのなかには薄着や首元など肌の露出が大きく、素足に近い服装の方を見かけます。特に首と手首、足首は皮下脂肪が少なく、体の深部に近い部分です。寒さが増すこれからの季節は、自宅では足首をしめつけない厚手のルームソックスなどで足元をしっかり温め、外出先ではネックウォーマーやレッグウォーマーをうまく活用するといいですね。

また、湯船に入らずにシャワーで済ませている方は、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるようにしましょう。ぬるめのお湯は副交感神経を刺激して心身をリラックスさせ、体の芯から温めて体温をゆるやかに上昇させます。また、体内の免疫細胞を増やして免疫力を上げる効果もありますから、インフルエンザや新型コロナウイルスの感染予防も期待できます。

朝食は体温を上げるエネルギーのもと 体を温める食材も取り入れて

私たちが一定の体温を保ち、活動するためのエネルギーは毎日の食べ物で得られています。一日の体温にはリズムがあり、起床後の体温がもっとも低く、夕方にかけて緩やかに上昇します。

体温を上げるためにはエネルギーのもとになる朝食をきちんと摂り、代謝を高めることが大切です。ただ、冷たい飲み物や食べ物は胃腸を冷やし、全身の「冷え」につながります。できるだけ温かい食べ物を口にするようにしましょう。

また食べ物のなかにも「体を温める食材」(魚介類、発酵食品、ネギ、生姜など)と「体を冷やす食材」(小麦、砂糖、南国の果物など)があります。それぞれの食材の特性を知り、両方をバランス良く摂ることが大事です。たとえば、小麦は体を冷やす食材ですので、パン食よりもご飯とお味噌汁といった和食にすると、体を温める魚介類や発酵食品などと組み合わせやすくなります。寒い季節はいろんな種類の食材が一度に摂れる鍋料理もいいでしょう。チーズには体を温める作用がありますから、チーズフォンデュなどもおすすめです。

「冷え」は毎日の生活習慣を少し見直すだけで改善できることもあります。ふだんから「冷え」を気にして対策を心がけている方はもちろんですが、知らず知らずのうちに体を冷やし「冷え」の自覚がない方も体を温めることを心がけ、気になることがあれば気軽に相談してください。

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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