このまま続けていって見込みはある?

8回移植を行っても 妊娠に至りません。

続けても見込みはある?

さまざまな方法で採卵や移植を試してもなかなか結果が出ない場 合、その後はどんな選択をしていったらいいのでしょうか。

俵IVFクリニックの俵史子先生に伺いました。

俵史子 先生 浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携 わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。 2007年、 出身地の静岡に俵IVFクリニックを開業。 静岡駅前に 移転し、3月9日にリニューアルオープン。「患者さんが堂々と 来られる施設を目指したい」という俵先生の思いを反映した施設 は、まるでホテルのように広々と明るい空間。インテリアにも先 生のこだわりが詰まっています。
たみこさん(35歳)からの相談 Q.33歳から男性不妊で顕微授精をしています。 陰性3回、化学流産2回のあと、6回目以降 は別の施設に転院。新鮮胚移植を2回行って 陰性、8回目はシート法で胚盤胞を2個移植 して胎嚢が確認できたのですが、6週で流産 しました。8回目で妊娠できたということは このまま続けていって見込みはあるのか、良 い受精卵に当たれば妊娠できるのか。それと も8回失敗しているから、今後も見込みは少 ないと思うべきなのでしょうか。一度、3カ 月ほど休憩して海外旅行をしたりしましたが、 休んでいるほうがストレスになりました。続 けるなら回数の目安などは?

●これまでの治療データ

検査・ 治療歴

2年前より顕微授精を実施。
1回目:アンタゴニスト法で5個採卵、2個受精し、4分割を新鮮胚移植(陰性)、2回目: ショート法で8個採卵、2個受精し、8分割を新鮮胚移植(陰性)、3回目:凍結胚盤胞5 BAを移植→陰性、4、5回目:ロング法で12個採卵、3個受精し、5BAの胚盤胞を2 つ凍結して移植するも、どちらも化学流産。
<転院後> 6回目:低刺激で3個採卵、1個受精し、4分割を新鮮胚移植→陰性、7回目:アンタゴニ スト法で7個採卵、3個受精し、8分割を移植→陰性、8回目:胚盤胞4BBと5BBを2 個移植したが、流産。女性側のホルモン検査の結果は特に問題なく、AMH(抗ミュラー管 ホルモン)の値は4.7~5.2程度。

不妊の原因となる病名

乏精子症、精子無力症

現在の 治療方針

流産後の生理再開待ち。

精子 データ

精液量3.1ml、精子濃度470万/ml、運動率19.1%、奇形率53.2%

受精率の低さが気になる

これまで約2年間、2つの施設で計8回、顕微授精による移植を行ってきましたが、 結果が出なかったそうです。原因はいった いどこにあるのでしょうか。
俵先生 男性不妊ということで顕微授精を受 けられているようですね。
これまでのデータ を拝見すると、卵子の数は比較的多く採れて いるのに受精率があまり良くない。
ご主人は 乏精子症と精子無力症ですが、精子の所見は それほど悪くないようです。
本来なら、もう 少し受精率が高くてもいいのではないかと思 いますね。
卵巣刺激法を見てもアンタゴニスト法、 ショート法、ロング法、低刺激法とひと通り 試していらっしゃる。
胚盤胞のグレードも移 植できる状態です。
移植時の子宮内膜の厚さ はだいたい8~9㎜で、平均より少し薄い印 象ですが、それが大きな妨げになっていると も思えません。
なぜ妊娠に至らないのか、こ のデータだけでははっきりわからないという のが正直な感想です。
ただ一つ気になるのが、冒頭でも指摘しま したが、共通して受精率が低いということ。 自然な形の受精ではなく、顕微授精ですから、 受精をさせている時の状況がどうだったのか、 培養士や医師が見ればわかるのではないで しょうか。
卵子が良くなかった、精子に問題 があったなど、そのへんの状況をもう少し詳 しく正確に説明を受けてみられたらいいかと 思います。

治療を休んでリフレッシュ

今までかなり移植を重ねているので、精神的にも煮詰まり、疲れきっていらっしゃ るようですが。
俵先生 原因がはっきりわからないので、つ らいお気持ちはよくわかります。
でも、この ままではストレスがどんどんたまってしまい ますよね。
治療をお休みしたくないというこ とですが、当院だったらあえてリフレッシュ することをおすすめします。
3カ月程度ではなく、思い切って半年ほど休んでみられたら どうでしょうか。
それは、たみこさんの状態 だからおすすめできることです。
AMH値が悪くなく、ほかのホルモンの状 態も正常。卵子もしっかり採れています。
年 齢も 35 歳とまだ少し余裕がありますよね。
も しかしたら治療を続けすぎたことで、卵巣が 疲弊して機能が弱くなっていることも考えられます。
このへんでゆっくり休ませてあげた らどうでしょうか。
何もしないでいると、よけいに子どもができないことが気になって、ストレスが大 きくなってしまうそうです。
俵先生 では、別の形で妊娠するための努力 をされてみては?
たとえば鍼灸治療やヨガ、 漢方などで体質改善に励むなど。
休むというのが本当の休みではなく、違うアプローチで の治療だと考えれば、それほどストレスには ならないと思います。
もし精子の状態が悪い ことが受精率に影響しているのなら、ご主人 も一緒に体質改善を。
二人でやれば、ご夫婦 の精神的なつながりも深くなると思います。

年齢別累積分娩率

今後、移植を続けていってもいいのでしょうか。妊娠の可能性はありますか?
俵先生 「年齢別にみた累積分娩率」のグラ フ(下)を見ると、
たみこさんの年代では8回 以上治療を行っても分娩率、つまり妊娠率は 横ばいになるという結果が出ています。
回数 的には厳しいかもしれませんが、卵巣をリフ レッシュして臨めば、妊娠にとって良い状態 に戻ることも大いに期待できます。
ただし、漫然と続けても良くないので、や はり回数をあと2回、3回と決めて臨んだほ うがいいのでは。
これまでの治療は決して無 駄ではなく、意味のあるデータとなりますか ら、それを参考に担当医とよく相談して治療 方針を立てていただきたいと思います。

ジネコ注目のスタッフ!

培養室・培養部長 藤田智久さん 私は静岡県の中では早くから胚培養の修業をして きたので、顕微授精等の技術において県内では誰 にも引けをとらないと自負しています。 現在は、現場で作業に従事するほか、後進の育成 にも力を傾け、すべての培養室スタッフが一定以 上のレベルに達することができるように指導。実 は妊娠率には培養室スタッフの実力も大きく影響 しています。リニューアルを機に培養室の設備も グレードアップしたので、これからよりいっそう 技術を磨き、ドクターの評判だけでなく、培養室 スタッフの力でも患者さんに当院を選んでいただ けるようにしたいと思っています。 治療中は不安なこともあると思いますが、当院で は移植前に必ず培養士が直接、患者さんに受精卵 の状態をご説明する機会がありますので、疑問が あればどんどんご質問ください。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。