人工授精後のリセットまでの期間について

人工授精後、リセットまでの 期間が21日かかることも。

こんなに長いものですか?

伊藤 哲 先生 順天堂大学医学部、同大学院修了。順天堂大学医学部産婦人科学講 師、国際親善総合病院産婦人科医長を経て、1999年あいウイメンズクリ ニック開院。日本生殖医学会生殖医療専門医。蒸気機関車をはじめ、写 真撮影が一番の趣味。日本を代表する山、富士山の姿も一度は写真に収 めたいけれど、意外にも山登りが大嫌いだという伊藤先生。ヘリコプターで 頂上まで乗せていってくれるならご来光を撮りたいそうです。
さぁーさん(31歳)からの相談 Q.現在、5回目の人工授精に向けて準備中。通院している施設では、D10に卵胞をチ ェック。1日2㎜成長という計算で人工授精の実施日を決め、実施後にHCG注射。 3日後に排卵を確認して、そこからルトラールⓇを7日間服用するという流れで進 めています。もともと卵胞の育ちが遅めだったのですが、ここ3回はD10で12~ 13㎜に育ち、D13~15に人工授精を実施。3日後に排卵チェックをすると、必 ず排卵しています。そこからルトラールⓇを服用するのですが、人工授精をしてか らリセットまでの間が長いのです。基礎体温を測っていないのでわからないのです が、だいたい19日間。3回目は21日間で、妊娠かと思って期待してしまいました。 ルトラールⓇの影響もあるかと思うのですが、こんなに長いものなのでしょうか?

キメ細やかな卵胞チェック

さぁーさんが受けている人工授精の手順についてどう思われますか?
伊藤先生 当院のやり方とは異なるので、ちょっと理解できないところがありますね。
まず、「1日2㎜成長という計算で人工授精の実施日を決める」という部分について疑問を感じます。
必ずしも卵胞が1日2㎜成長するとは限らず、まったく成長せずに前日と同じ大きさだったり、大きくなっていても排卵しない方もいらっしゃいます。
それなのに人工授精を実施して、後からHCG注射を打つということでしょうか。
また、 10 日目に卵 胞チェックということですが、1回チェックするだけではうまく見極められないのでは。
当院では患者さんも少し大変ですが、毎日卵胞の状態を見ていって、LHサージが起これば当日か翌朝に人工授精を行うようにしています。
もし休診日に当たってしまいそうだったら、その時はHCG注射を打って少し排卵を早めて、実施日を調整。
排卵が起こっていない場合には人工授精の後にHCG注射を打つ場合はあります。
卵胞の成長や排卵のスピードはお一人お一人違いますから、もう少しきめ細やかに見ていく必要があるのではないかと思います。

ルトラールの影響

リセットまでの期間が長いのは、その手順と関係しているのでしょうか。
伊藤先生 人工授精をしてから3日後に排卵確認をして、ルトラールⓇを服用するということですよね。
当院の場合だと、だいたい2日後に排卵確認をします。
3日後ということはHCGを打って 36 時間。
そのへんから タイムラグが出てきてしまい、黄体ホルモン剤を飲み出す時期と排卵の時期が少し遅いように感じます。
さぁーさんも書かれていますが、ルトラールⓇというお薬自体の影響も考えられますか。
伊藤先生 そうですね。
確かにルトラールⓇには体温を上昇させる作用があり、患者さんの中にも「高温期が長引く」と訴える方が多いようです。
当院では、同じ黄体作用のあるお薬でも、体温上昇作用のないデュファストンⓇを使うことが多いですね。
これはルトラールⓇよりマイルドで、妊娠中でも使いやすいので、多くの方に処方しています。
どちらのお薬を使っても効果はほとんど変わらないのですが、ルトラールⓇを使って高温期が長引いてしまうと、さぁーさんのように妊娠を期待してしまい、違うとわかった時に落胆されてしまう方が多いんですね。
いろいろ気をもまれるなら、デュファストンⓇに変えてもらってもいいかもしれません。
リセットまでの期間が長いことは大きな問題ではないでしょう。
まだお若いので、人工授精もあと1~2周期続けてもいいのでは。
ただ、もしこれまで自然周期だけで実施されてきたのなら、次は排卵誘発をされてみてはどうでしょうか。
クロミッドⓇなどを飲むと妊娠率が15 %程度上がるといわれていますから、試して みるのも一つの方法だと思います。
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