私に合った適切な治療法は?

PCOSの診断に疑問が。 体外受精まで進みましたが 今の治療は本当に適切?

柏崎 祐士 先生 京都府立医科大学医学部卒業。2000年まで日本大学板橋病院で主 に不妊治療に従事し、その間、米国エール大学医学部産婦人科で研修。 その後、「かしわざき産婦人科」副院長に。日本生殖医学会生殖医療専門 医、日本産科婦人科学会認定医。O型・おとめ座。昨年末、同医院で妊 娠された患者さんが無事元気な赤ちゃんを出産。体外受精から妊婦健診、 帝王切開での出産まで診てこられた先生。お子さんの名前に先生の「祐」 の一文字を入れたという報告を聞いて大感激されたそう。
マツコさん(30歳)からの相談 Q.昨年から不妊治療を開始しました。クロミッド®、セキソビット®を使って排卵誘発し、タイ ミング療法2回、人工授精6回を実施。その後、体外受精にステップアップ。アンタゴニ スト法で採卵し、良好な胚ができたのに結果は陰性で終わりました。 一度も妊娠しないことと、ドクターの治療方針への不信感から不妊専門病院へ転院。 そこでは体外受精から治療をスタートしましたが、前回と同じく良好な胚盤胞を移植し たのに、やはり陰性という結果に。2回目の移植はシート法で戻しましたが、妊娠には 至りませんでした。生理周期が90~180日と排卵障害があり、多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS)と診断されましたが、AMHの値は3.21ng/mLと低め。他のホルモン値は LH:4.9、FSH:7.7、テストステロン:65です。PCOSが不妊原因といわれました が、本当に私はPCOSなのでしょうか?

PCOSとは

マツコさんはPCOSと診断されたそうですが、本当にこの病態なのでしょうか。
柏崎先生 PCOSの診断基準は2007年、新たに改訂され、以下の3つになりました。
1つ目は無月経、稀発月経、無排卵周期症などの「月経異常」、2つ目は「多嚢胞性卵巣」。
これは超音波検査で両側の卵巣に小さな卵胞がたくさん見られる状態で、少なくとも一方の卵巣で2~9 mm の小卵胞が 10 個以上存在するものです。
3つ目は、血中の男性ホルモンが高値、またはLH基礎値が高値かつFSH基礎値が正常であるという場合です。
マツコさんは月経がかなり不順ということ で、排卵障害があることは間違いないと思います。
しかし、LHやFSHなどのホルモン値については、もしこれが基礎値であれば問題はなく、男性ホルモン・テストステロン値も正常範囲内。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)に関しても、通常、PCOSだと高値になるのですが、マツコさんは3・21 ng / mLと年齢相応の値です。
超音波検査の所見が記載されていませんが、小卵胞の数はどのような状態だったのでしょうか。
初回の体外受精ではアンタゴニスト法で採卵し、卵巣が8 cmに腫れたということですが、これはそれほど重篤な状況ではないでしょう。
拝見したデータを見るかぎりでは、PCOSと診断するには少し無理があるように思います。
超音波検査も含め、もう一度きちんと検査をされて、正確な診断を受けたほうがいいのではないかと思いますね。

PCOSと腹腔鏡下手術

もし本当にPCOSということであれば、今行われている治療法は適切なのですか?
柏崎先生 体外受精を続ける選択もあると思いますが、PCOSであれば腹腔鏡下の手術で卵巣を焼灼するという治療法があります。
これにより卵巣の状態が良くなれば、自然排卵することも。
まだ年齢的には 30 歳と若いので、薬を使わなくても自然妊娠する可能性も十分あります。
金銭的にも身体的にも負担がぐっと減りますよね。
ただし効果は永久ではなく、1年以内に効果が消失してしまうことが多いです。

原点に返ってみる

体外受精では良好胚を移植したにもかかわらず、妊娠に至りませんでしたが。
柏崎先生 3回陰性が続いたということですが、これについてはあまり気にしなくていいと思います。
逆に、毎回良好胚ができたことをポジティブにとらえていただきたいですね。
体外受精に関しては、不妊治療専門病院ということでシート法など先端の治療をされているので、これ以上の治療はないと思います。
不安や負担を感じ始めていらっしゃるなら、やはり一度、原点に返ってみるといいのでは。
先生にもう一度、自分は本当にPCOSなのかどうかを確認し、きちんと検査と診断をしていただくこと。
その結果により、腹腔鏡手術やステップダウンなど、治療の方針やご自身の負担が変わってくるのではないかと思います。
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