受精率が低いので卵活性化を予定していますが男性不妊外来の受診も必要?

絹谷 正之 先生 愛媛大学医学部卒業。広島大学医学部産科婦人科学教室入局。その 後、東京の山王病院リプロダクションセンターにて高度生殖補助医療研 修、顕微授精を修得。1999年にはカナダ、アメリカにて高度生殖補助医 療研修を行う。2000年、絹谷産婦人科副院長、2002年より院長に。広 島県産婦人科医会常務理事。ISO9001やJISART(日本生殖補助医 療標準化機関)の認定を2010年〜2011年に取得。今春から、多目的室 で「初診前説明会」を開始。「現在当院では初診まで4カ月ほどかかることか ら、あらかじめ不妊症の治療や検査など基本的なことをお話しして、当院の 方針を知ってもらい、それまでにできる生活改善などもお伝えします」と先生。
バナナさん(35歳)からの相談 Q.精子無力症、乏精子症で男性不妊のため、顕微授精を2回行いました。1回目は、成熟 卵7個でしたが、すべて受精せず。2回目は、成熟卵14個で5個受精、そのうち2個 が分割へ進みました。8分割新鮮胚の1個を移植するも陰性。先日、残りの凍結6日目 胚盤胞を移植しましたが、化学流産でした。 夫婦ともに染色体検査は正常、卵巣年齢は27歳くらいと言われました。今後の方針はま だはっきり決まっていませんが、卵活性化をして受精率を上げようということでした。よい 受精卵ができるのかとても不安です。他にも方法はありますか? また、男性不妊外来へ の受診も考えたほうがいいでしょうか? 精子のデータは、精子運動率20%、精子濃度 400万/mL、SMI 32、奇形率 30%です。

状況から、男性因子を疑う

バナナさんのこれまでの経過を見てどう思われますか?
絹谷先生 まず、バナナさんは 35 歳で卵巣年齢が 27 歳くらいということ、月経周期も順調なことから、おそらく卵子側には問題がなく、女性側の因子は考えにくいです。
たしかに男性側は、精子濃度も運 動率も低いので「乏精子、精子無力症」だと思います。
そして、顕微授精2回で合計 21 個の卵子が採れていて、5個しか受精していないということですから、受精率は2割と少し。
確かに受精率は低いです。
一般的には顕微授精をすれば、8割以上の高い受精率になります。
ですからこの方の場合、ただ精子が少ない、精子の運動率や濃度が低いというだけでなく、精子の質自体に問題があるのかもしれません。

精子の能力を高める

今後、受精率を上げるために卵活性化をされるようですが、これについてはいかがですか?
絹谷先生 本来、精子には卵子を活性化させる機能が備わっています。
バナナさんご夫婦の場合、いわゆる精子が動いているなどだけではない、精子の質といわれる「精子の能力」が、もしかしたら低いのかもしれません。
その機能を手助けするために、カルシウムイオノフォアやストロンチウム、電気刺激の力を借りて、人工的に卵子に活性化処理をして受精させる方法は、1つの選択肢としてとてもいいことだと思います。
受精率が低かった人が卵の活性化をさせることで受精できたという症例は多いので、有効なのではないでしょうか。

男性不妊外来の受診

あわせて男性不妊外来も受診したほうがいいでしょうか?
絹谷先生 そうですね、精子の力が少し足りないのであれば、それを手助けするのが卵活性化なのですが、やはり精子がこういった状態にあることを何らかの方法で解決する、もっと改善する手段を探す取り組みも大切だと思います。
ですから、泌尿器科・男性不妊専門外来への受診はとてもいいことだと思います。
何か精子側の因子を解決する手立てを考えていただくといいのではないでしょうか。
必ずしもいい方法があるとはいえませんが、きちんと原因を知ることはとても大切です。
たとえば、男性不妊の患者さんの 約4割にみられる、精巣に血液が逆流して精巣の静脈血管がこぶ状に腫れる「精索静脈瘤」がある場合は、手術をすることで精子の状態が改善され、妊娠できた例もあります。
検査をすると、そういった状態が見つかる可能性もあるので、ぜひ一度受診されてみてはいかがでしょうか。
もし、受診しても原因が見つから ない場合は、直接、睾丸(精巣)から精子を採取することによって、精子の質が改善することがあるので、そういう方法を検討してみるのもいいと思います。
いずれにしても主治医の先生ともよく相談して、優先順位を決めて治療を進めてください。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。