【医師監修】小田原 靖 先生 東京慈恵会医科大学卒業、同大学院修了。1987年、オー ストラリア・ロイヤルウイメンズホスピタルに留学し、チーム 医療などを学ぶ。東京慈恵会医科大学産婦人科助手、スズ キ病院科長を経て、1996 年恵比寿に開院。AB 型・みず がめ座。電子カルテを導入し、4月9日からはインターネッ トの予約システムをスタート。呼び出しも予約とリンクさせ て自動になり、よりスムーズな診療体制に。
ちかみーさん(31歳)Q.3 年前、子宮内膜症(チョコレート嚢腫)の手術後、不妊専門病院にて治 療をスタート。人工授精 5 回を経て、体外受精にステップアップしました。 1回目の採卵はロング法で6 個。体外受精と顕微授精の半々で受精させ、 顕微授精のみの2個が受精。3日目の胚を移植するも陰性。2回目の採卵 はアンタゴニスト法で8個。胚盤胞に育った6日目のグレード4BCのもの を凍結し、シート法、アシストハッチングで移植するも9 週目に稽 けい 留流産に。 その後 2回、同じ方法で移植しましたが、いずれも陰性。 次回、また採卵からスタートです。結果が出ないのは子宮内膜症手術の影 響? 次回はまた ※ アンタゴニスト法で排卵誘発をする予定ですが、その方 法がベストなのでしょうか?
子宮内膜症手術で卵質低下
子宮内膜症の手術が妊娠や卵子の質に影響を及ぼすことはあるのでしょうか。
小田原先生 子宮内膜症が卵子の質を落としてしまうということはあります。
また、子宮内膜症の手術をすると、卵巣などの血流が悪くなったり、卵子の数が減ってしまうという弊害が起こる場合もあります。
実際、子宮内膜症の手術後は卵巣予備能を示すAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が非常に低くなるといわれていますので、やはり子宮内膜症という既往が現時点でのちかみーさんの卵子の質に少なからず関わっている可能性があるといえるのではないでしょうか。
誘発と月経周期の関係
他に問題はありますか?
小田原先生 ちかみーさんは月経周期が 40 日で長めとのこと。
これも排卵を誘発するための薬や方法に何らかの悪影響を及ぼしているかもしれません。
月経周期が長かったりすると、薬を使ってもうまく卵子が排卵されなかったり、途中でホルモンの値をきちんと調整できず、結果的にいい卵子が採れないという場合があるのです。
ですから、そのあたりのことも考えていかないといけないと思います。
卵巣やホルモンの状態を把握
今後やるべきことは何でしょうか?
小田原先生 まず1つは、卵巣やホルモンの状態をきちんと評価することです。
まだAMHの検査をしていないなら、受けてみてはいかがでしょうか。
AMHの値から手術の影響や、多嚢胞性卵巣の有無などがわかると思います。
それから、できればLH̶RHテストというホルモン負荷試験も行っていただきたいですね。
これは、視床下部から分泌されて下垂体を刺激するホルモンを注射し、その後の下垂体のレベルをみるものです。
ある意味、体外受精の際の卵巣刺激のシミュレーションになってくるんですね。
治療と共に血流改善も
次回もアンタゴニスト法で排卵誘発される予定のようですが。
小田原先生 これまでの採卵数6〜8個というのは平均的で、決して少なくはありません。
担当の先生も卵巣の反応をみて、次回もアンタゴニスト法を提案されたのではないでしょうか。
同じ方法でも、注射の打ち方や薬の種類を変えることで結果も変わってくるので、再度トライする意味はあると思います。
それと同時に、ヨガなど運動で体の血流改善も行っていって、ぜひ前向きに治療を続けていただきたいですね。
※子宮内膜症、チョコレート嚢腫(嚢胞):子宮内膜に類似した組織が卵巣や卵管、ダグラス窩などで増殖し、出血したり炎症を起こしたりする ものが子宮内膜症。卵巣にできた子宮内膜症の炎症部位から出血した血液が中にたまり、嚢状になったものをチョコレート嚢腫という。