
▶︎卵胞まで育たない理由と刺激法について
夫(24歳)が海外勤務のため凍結精子で体外受精をしています。私のホルモン値はAMH3.2ng/ml、AFC6、LH3.0mIU/ml、FSH9.1mIU/ml、PRL10.7ng/ml。今までPPOS法を2回実施。1回目は採卵4個で最終的にD6胚盤胞3BBと1BC。2回目は採卵4個で、1つも凍結できず。凍結精子のため2回ともカルシウムイオノフォアを入れています。2回の結果から胚ゲノムの活性化に問題があるのではと思っていますが、今後、採卵数を増やして5日目胚盤胞を得るにはどうすればいいでしょうか。
これまでの治療データ
●検査・治療歴
生理3日目のホルモン検査のみ。子宮内膜から遠い位置に筋腫12㎜があるが、妊娠への影響はないとのこと。
●精子データ
良好、解凍後も問題なし。解凍前数値:精子濃度2000万/ml 運動率55% 前進運動率40% 正常形態率15%
●サプリメント服用
コエンザイムQ10
●不妊の原因となる病名
なし

医学博士・産婦人科専門医・日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医・日本生殖医学会生殖医療専門医。2018年、体づくりができるフィーカレディースクリニック(東京・日本橋)を開設。佐藤病院院長、高崎ARTクリニック・フィーカレディースクリニック理事長を務める。専門分野だけでなく、栄養学や抗加齢医学などの知識も深く、患者さんにも積極的に生活習慣の改善を指導。
●刺激法をPPOS法から変更を
●新鮮精子での体外受精を検討
●分割期胚移植も視野に!
つかさんの治療データから、気になるところはありますか。
佐藤先生●月経3日目の数値でAFC6とありますが、AFCは卵胞数のことで、卵巣内にある卵胞の数を示したものです。周期ごとに数えても、3回確認しても毎回同じくらいの数だったそうですが、AFCから考えると、もう少し採卵数を増やせる可能性があります。また31歳という年齢から考えると、一般的に採れた卵子の4~5割程度は、胚盤胞まで育つくらいの質の良い卵子のはずです。例えば4つ採れれば2つ、6つ取れれば3つ胚盤胞になり得るということになります。ホルモンの検査データと合わせると、1回の採卵で10個前後は採卵できる可能性があるでしょう。
胚盤胞まで発育する卵子を増やすにはどうしたらいいでしょうか。
佐藤先生●つかささんは、1回目、2回目とも刺激方法は黄体ホルモン併用卵巣刺激法(PPOS法)とのことでした。これは、排卵を抑制するために注射を使わず、黄体ホルモンの飲み薬を使う方法です。薬代を抑えることができ、体への負担も軽減できるため、刺激法の第1選択にしている医療機関も多いでしょう。ただ、なかなか形態学的評価(グレード)の良い胚盤胞を得られないのであれば、アンタゴニスト法やショート法など、今までと違う方法で刺激してみるのも、ありだと思います。刺激方法を変えることで採卵数も増えることもあり、採卵数が増えれば質の良い卵子が得られる可能性も高まります。
タイムラプス映像を見ると3日目までは順調ですが、それ以降の分裂が遅いそうです。
佐藤先生●分裂がうまくいかない理由として、まずは卵子の問題が考えられます。これについては、先述のような方法を試みるといいでしょう。また、生活習慣を見直す、体質改善をすることで卵子の発育環境を整備できるケースもあります。
それ以外だと精子の問題が考えられます。凍結精子で、解凍後も問題ないということですが、胚の分割がうまくいかない一因である可能性も否定できません。帰国されるタイミングを見計らって新鮮精子でトライしてみるのもいいかもしれません。
つかささんが通院しているクリニックでは、凍結精子を使う際に標準オプションとしてカルシウムイオノフォアを入れているそうです。カルシウムイオノフォアの使用を標準としているクリニックはありますが、これがなくても受精は可能ですので、使用しない方法も選択肢として考えてみるのもいいと思います。それから精子のDNA損傷率を調べる検査をしていないようであれば、受けてみるといいでしょう。
つかささんは年齢的にも卵子の質は悪くないと考えられます。それでも形態学的評価の良い胚盤胞まで育たないのであれば、分割期胚を移植し、お腹の中で育てる方法を試してみる価値はあると思います。
着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)を受けると妊娠率は上がりますか。
佐藤先生●PGT-Aは、移植前に受精卵の染色体異常を調べることで、流産する確率を減らす効果があります。基本的にPGT-Aの適用は、胚盤胞を移植しても妊娠しない人や、年齢が高い人に用いる方法として選択肢にありますが、胚盤胞まで到達しない方には不向きでしょう。
子宮筋腫があるそうですが、妊娠には影響しますか。
佐藤先生●子宮内膜から遠い位置なのと、大きさが12㎜なので、妊娠するにあたって問題はありません。そのまま様子を見ていいでしょう。つかささんは31歳と年齢も若いので、妊娠する力は充分にありますが、たまたまその2回の周期に受精卵がうまく育たなかったということも考えられます。同じ方法でトライし、うまくいかなかったのであれば、主治医と相談し、まだ行っていない方法を試みるのもありです。希望をもって治療に臨んでくださいね。