【Q&A】胚盤胞到達率低下と胚の質向上の対策について〜宇津宮 隆史先生【医師監修】

とらこさん(30歳)

胚盤胞到達率と胚のグレードが良くないことに悩んでいます。
卵子か精子の染色体異常が多いのでしょうか。そうだとしたら、その原因は何が考えられますか?

私は日頃運動不足なので、できるだけ歩いたりお風呂上がりに足や股関節のストレッチなどを心がけています。
夫の精液検査は良好な結果ですが、肥満かつ高血圧症一歩手前の状態です。

体質改善が必要でしょうか?
できることがあるなら、何をしたら良いか教えていただきたいです。

セント・ルカ産婦人科の宇津宮 隆史先生に伺いました。

【医師監修】セント・ルカ産婦人科 宇津宮 隆史 先生
熊本大学医学部卒業。1988 年九州大学生体防御医学研究所講師、1989 年大分県立病院がんセンター第二婦人科部長を経て、1992年セント・ルカ産婦人科開院。国内でいち早く不妊治療に取り組んだパイオニアの一人。開院以来、妊娠数は 9,500 件を超える。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

① とらこさんはAMH3.11ですが、今まで12個受精卵ができ、凍結が3個、胚盤胞率25%で、通常40%ですから低いと思います。また、5CB、5BCと形態もあまりよくありません。原因はわかりませんが、このように受精卵の質が低い方がいることは時々あります。おそらく何らかの遺伝子の突然変異があるのか、と思います。
しかしそれらの人でもある時、良好胚盤胞ができてうまくいくこともありますので、卵子、精子が取れる間は希望があると思います。そのためにも採卵数を増やして、(何ならOHSSも覚悟して)きれいな受精卵が育つことを期待しましょう。卵子が取れる間は努力するべきでしょう。
そこで、どうにかならないか、ですが、このような方には、当院ではまず、排卵誘発剤の注射を増量して採卵数を増やす、未熟卵を十分成熟させるためにHCGの量や時間をアレンジする、そして常日頃から体調を整える、特に調節刺激に入ったら、採卵時に向けてリラックスして健康な生活を心がけるよう声掛けをします。さらにサプリ(有効性の確かめられているもの:DHEA、ウムリン、VC、VEなど)を試みます。
また、できるだけ新鮮胚移植をします。凍結・融解はそれが胚にとってストレスになるからです。

②ヒトの場合、卵子や精子、受精卵の染色体異常は、非常に多いです。当院の流産の80%は胎児胎盤の染色体異常が原因でした。PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)をしてみれば形態良好胚盤胞でも、染色体正常胚は4個に1個、25%しかありません。それを検査せずに移植しているから、妊娠率は30%前後にとどまっているのです。よって、PGTをせずに妊娠率40-50%以上をうたっているのはナンセンスと言えます。PGTで検査して正常胚を移植すれば70%の妊娠率が得られます。早く保険適用でPGT-Aができることを期待しています。
また、夫婦どちらかに転座がある場合は流産することが多く、その時はPGT-SR(着床前胚染色体構造異常検査)をすればOKです。
これらは染色体レベルの話で、それ以上の小さな遺伝子変化でも妊娠しない(PGT-Aしても妊娠しない率は100-70=30%)、または流産する(PGT-A妊娠の流産率は11%)ことがあります。この30%や11%は小さな遺伝子突然変異が原因と思います。なぜならPGT-Aの患者さんは不育症検査やそのほかの不妊症検査はすべてクリアしているからです。現在「妊娠率が高くなるというエビデンス(証拠)」のない検査法やサプリが驚くほど多数、目に付きます。惑わされないようにしましょう。
染色体異常はPGT-Aで調べられますが、小さな遺伝子異常の検査はまだ無理です。何しろ、遺伝子は25,000種類もありますから。そのうち、妊娠可能な、流産しにくい胚を選ぶ遺伝子検査もできるようになるでしょう。

③BMIはいくらですか?夫婦ともにBMIは20-25くらいを目指しましょう。最近ではむしろやせすぎが多いです。やせすぎで妊娠すると赤ちゃんに影響が出、将来糖尿病や精神異常が増加することが歴史的(第2次世界大戦)にも証明されています。
高血圧は肥満による場合もあり、BMIを参考にしてください。当院では肥満気味の方に指導を行っており、瘦せるだけで自然妊娠した経験もあります。

④子宮卵管造影はしていますか?これは絶対必要です。特に卵管水腫ならそれを治療してから体外受精すべきです。また子宮奇形もチェックできます。

⑤とらこさんは、年齢、AMH、治療結果から見て、方法を変えればまだまだ希望が持てます。できればいい胚盤胞ができたらPGT-Aをした方が良いでしょう。
しかし今はPGT-AをするならIVFも私費診療ですので、経済的に大変です。PGT-Aが先進医療Bに指定され、当院もこの特別研究を要請されて参加し、結果を提出しましたが、保険適用には先が長そうです。よって、当院では患者さんと一緒になって県や県会議員に助成金交付の要望書を出していますが、実現はまだまだ先でしょう。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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