寧々さん(36歳)今年1月に7個採卵し、6個の成熟卵で体外受精を行いました。2個の受精卵を得ましたが、桑実胚までしか育てられませんでした。
移植はキャンセルされました。2月に再度採卵し、あまり刺激しなかったので採卵数は3個、すべて成熟卵子で
顕微授精を行いました。
今度は分割胚で成長が止まったため、移植がキャンセルとなりました。
前回の受診では、先生にFT手術を勧められました。今後の治療は不透明です。ネットで調べたところ「低AMHかつ高齢の方にはFT手術を勧めない」という情報がありました。
そこで、第三者の観点からは、このタイミングでFT手術を受ける必要(メリット)がありますでしょうか?体外受精と顕微授精にチャレンジすることが優先でしょうか?先生なら、なかなか胚盤胞ができない中、どういう治療(アドバイス)をされますか?
【医師監修】いながきレディースクリニック 稲垣 誠 先生
1994 年、浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院、鹿児島市立病院、聖隷沼津病院などで産婦人科医の経験を重ね、2012 年、不妊治療専門施設「いながきレディースクリニック」を開院。「お一人ひとりに寄り添いながら、それぞれの患者さまに合った最適な治療を心がけています」
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
●受精卵が桑実胚や分割胚で成長が止まり、なかなか胚盤胞ができないのは、どのような原因が考えられますか?
ご質問にもあるように、AMHが低値であることから卵子数の減少が推定されます。それにより卵子のクオリティにおいても良好卵―不良らんの幅が狭まり、結果として良好卵が獲得できにくくなっている可能性が考えられます。ただ、一回目の採卵ではまずまずの採卵数であることから、単純に卵子数の問題ではないかもしれません。
●寧々さんに対して、この段階で FT手術を提案されたのはどのような理由が考えられますか?
FTをする目的は大きく2つあると思います。1つは閉鎖した卵管を開通させて自然妊娠の可能性を模索すること、もうひとつは卵管閉塞により卵管からのサイトカインなどの物質が遮断されており、FTによりそれらの閉塞状況を打開することも期待されます。
質問者さんの場合はさらに1つ、採卵―体外受精の結果が芳しくなかったため採卵間隔をあけるインターバルをとることができるという見方もできるかもしれません。これはあくまでも私の視点です。

●FT手術を行うことによるメリットやリスクについて教えてください。
メリットは上述の通りです。リスクは手術時の穿孔等のトラブルの可能性、いったん開通しても再閉塞の可能性もありますし、その原因として手術に伴う再癒着の可能性もあるかと思います。
●胚盤胞がなかなかできない中で、体外受精と顕微授精を続けることが優先か、それとも他の治療法への切り替えを考慮すべきか、先生の意見をお聞かせください。
AMH値から考えればやはりARTが優先されると思います。
受精所見についてはきっと一般治療や人工授精を行っても同様のこと(受精卵が発育しない)が卵管で起きるということでしょうから、さらに受精成立の可能性が低いわけですからあまりメリットはないのではないかと思います。
体外受精においては胚盤胞の獲得の実を目指すのではなく、初期胚の段階での胚移植も検討して、胚移植をするということも意義があると思います。
質問書に帝王切開瘢痕症の疑いありとのことですので、受精卵が着床するのかどうかということも検証しないといけないのではないかと思います。帝王切開瘢痕症候群は厳格な定義はないため、診断が困難ですが、着床障害が疑われるような経過だった場合は精査、加療が考慮されます。