子宮内膜ポリープの妊娠への影響は?

 

おいもさん(38歳)
治療歴は約3年。排卵障害があり、AMH9.38。タイミング法を1年、人工授精を4回、体外受精4回しましたが、妊娠せず。そのうち一度着床はしましたが化学流産でした。
その後、子宮鏡検査をして子宮内膜ポリープが見つかったので、先日除去手術をしました。その後、体外受精をまた再開したいのですが、ずっと陰性が続いたことで「また陰性かも」と考えてしまいます。周りの妊活をしている人たちがどんどん妊娠するのをみると、妬ましく怒ってしまう自分にも嫌になります。
ポリープがあったことが原因で着床しなかったり、妊娠継続しなかったのでしょうか。ポリープ除去後したことで妊娠する確率は上がるのでしょうか?
しばらくはタイミング法や人工授精で様子を見た方がいいでしょうか?
また月経時に肛門痛があります。病院に伝えたところ、薬のせいだろうと言われましたが、子宮内膜症ではないかと不安です…。
【医師監修】湘南茅ヶ崎ARTレディースクリニック 院長 佐柄 祐介 先生
東海大学医学部卒業後、東海大学医学部付属病院、新百合ヶ丘総合病院などを経て2023年4月に地元の茅ヶ崎にて湘南茅ヶ崎ARTレディースクリニックを開院。「すべての女性があなたらしく生きるために」というコンセプトのもとに、患者さんの訴えに耳を傾け、ひとりひとりに寄り添った診療を行っている。
日本産科婦人科学会 専門医。日本生殖医学会 生殖医療専門医。日本産科婦人科内視鏡学会認定 内視鏡技術認定医(腹腔鏡)。

子宮内膜ポリープを見つける子宮鏡検査とはどんな検査ですか

子宮鏡検査とは、子宮に内径3mmぐらいのスコープを挿入し、子宮内を直接覗く検査です。エコー検査とは違い直接内腔を観察できるのでポリープや筋腫、慢性子宮内膜炎の診断につながりやすいのが特長です。

どんな場合に検査をすることが多いでしょうか。また、痛みやかかる時間もお教えください。

エコー検査で子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫の疑いがある方、また着床不全をくり返す方などにも子宮鏡検査を行っています。確かに、痛くない人はいないかもしれません。ただおおよその方が我慢できる痛みであり、時間も約3分程度で終わるため頑張っていただいていることが多いです。子宮の入口が曲がっている人や狭い人は少し強く痛む場合があり、それが予想される場合は鎮痛剤の使用などを提案させていただいています。

子宮内膜ポリープがあると着床や妊娠継続に影響を及ぼすのでしょうか。

現在までの報告を統括すると、妊娠に影響を与えるとするものと、影響を与えないとするものの2通りあります。ただ十分なデータに乏しいものの、私は除去をすることで着床率や妊娠率を向上させる可能性は高いと思っています。そのため子宮鏡検査でポリープを見つけた時、余程のことがない限り手術を勧めています。

月経時に肛門痛があるそうですが、おいもさんが考えているように子宮内膜症の可能性はありますか。

おいもさんが心配されている通り、子宮内膜症の可能性もあるかもしれません。子宮内膜症の中でも卵巣内に子宮内膜組織が発生してしまうチョコレート嚢胞や、子宮筋層内に子宮内膜組織が発生する子宮腺筋症は、エコー検査でも確認することができます。

ただ、子宮と直腸の間にあるダグラス窩に子宮内膜症ができると、エコーで見ただけではなかなか診断がつきません。そのため、患者さんから排便痛や肛門痛などの訴えがあった場合、内診をして痛みの走る部位を確認します。患者さんからの訴えは大事な情報ですので、当院ではそれをもとに検査や診察を行っています。

おいもさんは38歳で保険適用での体外受精が残り2回と推測されます。ご本人は、タイミング法や人工授精などのステップダウンも考えているようですが、先生でしたら今後、どのような治療を提案されますか。

AMHが9.38と高く、やはり多嚢胞性卵巣症候群の可能性が示唆されます。もしかしたら採取できた卵子の質が良くないこともあるのかもしれません。また今までに体外受精を4回されて1度しか着床されていないところをみると、慢性子宮内膜炎による着床障害の可能性もあり得ます。

慢性子宮内膜炎の検査については、子宮内膜の組織を採取して形質細胞という細胞がいるかを確認する検査や、EMMA/ALICE検査に代表される子宮内のフローラ(細菌叢)を分析する方法があります。最初に述べたように子宮鏡検査でもある程度調べることができるので、ぜひ検査を受けた方がいいでしょう。また着床のタイミングにずれがないかを調べるERAやERPeakという検査も必要だと思います。

こういった必要な検査を受けたうえで、すでにある受精胚のグレードが良い場合は、タイミング法や人工授精で様子を見るよりも、それを移植する方がいいと思います。

また、採卵してある卵のグレードが良くない場合、まだはっきりとしたエビデンスに乏しい部分はありますが、イノシトールやメラトニン、レスベラトロールなどのサプリメントを活用することで、卵子の質を上げられる可能性はあります。

でも今後の治療に際し、一番大事なのは主治医の先生と相談することです。後悔しないように不安な点を残さず、勇気を持って相談してみてください。きっと親身になってお話ししてくれると思いますよ。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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