子宮環境を整え、着床をサポートするラクトフェリンのこと、もっと知りたい!

体の免疫力を高めて、流産や早産を予防する働きが期待されている「ラクトフェリン」。治療での活用例について、うつのみやレディースクリニックの宇都宮智子先生にお話を伺いました。

うつのみやレディースクリニック 宇都宮智子 先生 和歌山県立医大附属病院で体外受精などの不妊治療と研究に従事。2010年に「うつのみやレディースクリニック」を開院。一般不妊治療から高度生殖医療まで行い、「認定がん・生殖医療施設」として、妊よう性温存治療にも力を入れる。「患者様が一日も早く赤ちゃんを抱けるように」との思いで、スタッフ一丸となり治療に携わっている。

腸内の環境が整うと子宮内の環境も整う

ラクトフェリンは、お母さんの初乳などに多く含まれる成分です。腸内フローラに働きかけて善玉菌を増やすこと、免疫細胞に直接作用して免疫力を高める働きがあります。コロナやインフルエンザなどのウイルスが流行した数年前から、注目されるようになりました。最近は妊活中や妊娠中の人はもちろん、体力が低下する高齢の人まで、幅広い年代に欠かせない栄養素の一つになっています。

ラクトフェリンが作用する腸内は「第2の脳」と言われ、免疫システムをコントロールしています。腸内フローラが整っている時は、全身を護る仕組みが強固になっています。良好な腸内環境は、子宮内の善玉菌を増やし、妊娠しやすい子宮環境に整えてくれます。一方で、腸内フローラのバランスが乱れると、子宮内にも悪玉菌が増え、流産率が高くなるとされています。

善玉菌1%未満の人が半年後に80%まで改善

私共のクリニックでは、約3年半前から子宮内の善玉菌を増やす取り組みを始めています。特に体外受精では、せっかく良い受精卵ができても、赤ちゃんが育ちにくい子宮内環境に移植してダメにしてしまってはもったいないと思います。そのため、体外受精を行う人には、子宮内膜の善玉菌(ラクトバチルス属菌)の割合を調べる「子宮内フローラ検査」を必ず行い、子宮内環境をしっかり整えてから胚移植しています。

実際に子宮内フローラ検査を行ってみると、驚くことに年齢にかかわらず、善玉菌が1%未満の人が約35% もいることがわかりました。このような人には、抗生剤を使って悪玉菌を減らした後、善玉菌を増やすプロバイオティクスやラクトフェリンのサプリメント(経口剤・腟剤)の摂取を続けてもらっています。すると約6カ月後には、ほとんどの人の善玉菌が80% 台まで増え、胚移植できる状態に改善します。

この取り組みを始めるまでは、子宮側の原因が疑われる妊娠20週前後の流産や早産に直面することがよくありました。せっかく体外受精で妊娠しても、突然破水して流産したり、生命力が弱い低体重児として生まれてくることもあり、それはお母さんにとっても、私にとっても本当につらいことでした。

子宮内フローラ検査やラクトフェリンなどのサプリメントを使用するようになってからは、こういった子宮内感染による流産や早産がほとんどなくなりました。この経験からも子宮内環境を良い状態に整える重要性を実感しています。

一般不妊治療中の人にもラクトフェリンは有効

一般不妊治療を行っている人は、先進医療の子宮内フローラ検査を受けることができません。自費で受ける場合も検査費用が5万円前後と高額なため、どちらにしても検査のハードルは高くなります。

先ほどお話ししたように、善玉菌が1%未満の人が3人に1人の割合でいることを考えると、赤ちゃんを希望するどの世代の女性も、子宮内の善玉菌を増やしておくことがとても大事です。そういう意味では、経口タイプのラクトフェリンは取り入れやすく、毎日続けやすいと思います。

そして妊娠したら終わりではなく、妊娠を維持していかないといけません。特に妊娠中は抗ウイルス薬などが使えなくなります。お母さんが健康な体を保ち、流産や早産を防ぐためにも、ラクトフェリンは少なくとも出産するまで飲み続けてもらうようにお伝えしています。

また、生まれたての赤ちゃんはお母さんの初乳を飲んで、さまざまなウイルスに負けない免疫を獲得します。妊活中はいろんな栄養素の摂取が必要になるので大変だと思いますが、ラクトフェリンは妊活、妊娠中のお母さんの健康の土台づくりだけでなく、生まれてきた赤ちゃんにも必要な栄養素だと思います。母乳由来の成分で赤ちゃんにも安心ですから、授乳中もできるだけ飲み続けてほしいと思います。

ラクトフェリンサプリの疑問にお答えします!

ラクトフェリンはどんな人におすすめ?

ラクトフェリンは腸の善玉菌を増やし、免疫力を高めて体を元気にする働きがあります。同時に子宮内環境を整え、妊娠を維持するのに役立ちます。妊活中から妊娠期、授乳期まで長く続けることが、赤ちゃんのためにもおすすめです。

サプリメントの選び方を教えて

ラクトフェリンには胃酸で溶けてしまうタイプもあります。必ず腸まで届く「腸溶性」タイプを選びましょう。ネットで購入できる安価なものは、本当に必要な成分が入っていない可能性もあります。多少高価でも主治医の先生がおすすめしているものが安心、安全です。

いつ飲めばいいですか?

「朝・昼・晩」や「食前・食後」にかかわらず、いつ飲んでも大丈夫です。飲んだり、飲まなかったりすると効果が出にくいので、飲みやすいタイミングで毎日続けていきましょう。6カ月後から効果があらわれやすくなります。

プロバイオティクスのサプリと併用してOK ?

一般的に「プロバイオティクス」はラクトバチルスなどの善玉菌そのもので、「ラクトフェリン」は善玉菌を元気にさせる成分とされています。どちらもあることが大事なので、それぞれのサプリメントを併用したり、プロバイオティクス配合のラクトフェリンを選ぶといいでしょう。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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