卵子提供【医師監修】

情報を正しく知ることの大切さ

法律に守られた台湾での卵子提供という選択肢

国営で卵子提供を実施している台湾。治療の対象や流れ、知っておきたいポイントなど、華育生殖医学センターの院長、徐明義先生にお聞きしました。

不妊治療を頑張っても願いが叶わなかった時、ほかにも子どもをもつための道があることをご存じですか?
まずは知ることから始めましょう。

徐明義(シュ・ミンイー)先生 華育生殖医学センター院長。約5年間、世界で初めて排卵誘発による体外受精を行ったアメリカのJones Institute for Reproductive Medicineで研究医として実績を積んだのち、台湾に戻って当センター開院。現在までに台北医学大学医学部産婦人科専任教授、教育部(日本の文部科学省に相当)認定教授などを歴任。

できるだけ多くの情報を事前に得ることが大切です

台湾で卵子提供の対象になるのは、生まれつき卵巣に異常があり卵子が存在しない方、高齢により治療しても妊娠できない方、手術や免疫が原因で排卵機能が失われている方です。また、若くて健康でも卵巣機能低下など自分の卵子では子どもが望めない方も受け入れが可能です。男性側は正常な精子を凍結できることが必須条件です。

治療期間は基本的には3〜6カ月。初診でカウンセリングや子宮鏡検査、免疫検査、精液検査などの関連検査をし、卵子ドナーとのマッチングを開始します。次の渡航は胚盤胞を移植するタイミング。通常、渡航回数は2回ですが、初診での検査で何かしら異常が見つかれば回数が増える場合もあります。

当センターが提示している現在の費用は上の表のとおりです。

さらに、関連検査も別途費用がかかりますが、日本国内で受けた検査データを持参すれば、台湾で改めて検査を行わず、よりスピーディーに治療を進められる場合があります。当センターでは患者さんの状態を確認するためにメールやLINEなどで事前ミーティングを実施しているので、子宮鏡検査や卵管造影検査、免疫検査など、受けておいたほうがいい検査の情報を渡航前に伝えることも可能です。

ドナーの条件や選考基準を施設選びの参考にしましょう

台湾では、ドナーの名前や住所など個人を特定する情報を開示することを法律で認めていません。ただし、人種、肌色、血液型などは選定の際の情報として知ることができます。

法律で決められているドナーの年齢は20歳〜40歳未満ですが、当センターではさらに条件をしぼって30歳以下に限定。さらに、国の規定よりドナーの検査項目を多く設定しているため、ドナー候補に100名の登録があったとしても実際に採卵までたどり着くのはそのうちの約7%のみとなっています。

また、「1回の採卵で10個以上の卵子がとれること」もドナーの選定条件のため、同じドナーの卵子で2人目、3人目を望むこともできます。

現在、台湾では晩婚と高齢化が進み、不妊に悩む約5%の人が卵子提供で出産しています。日本でも卵子提供が必要な方や、希望している方は多いかもしれませんが、一方で卵子提供についてあまり知られていないようにも思います。どんな将来を描くにしろ、情報を得ることがより選択肢を増やすことにつながりますので、ぜひ日本の皆さんに台湾の卵子提供について知っていただきたいと思います。

里親制度

家庭で愛情をもって子どもを養育

一定期間、育てる養育里親と実の親子になる特別養子縁組

実の親に代わって家庭で子どもを養育する里親制度。一般社団法人東京公認心理師協会、里親リクルーターの芝山希美さんに、制度について詳しくお聞きしました。

家庭に迎え入れ温かい愛情で育てる里親制度

日本全国に虐待や親の病気、経済的な理由など、さまざまな事情で生まれた家族と暮らせない子どもたちが約4万5000人います。こうした子どもたちを法的な責任のもとでお預かりし、社会全体で育てていくこと、そして子どもを育てることに大きな困難を抱える家庭を支援し、子どもを家庭で育てられるようにしていこうという仕組みを社会的養護といいます。子どもの最善の利益のために、社会全体で子どもを育むということを理念として行われています。家庭に迎え入れ温かい愛情で育てる里親制度特別養子縁組の制度も、この理念のもとにあるものになります。

社会的養護のもとで育つことになった子どもたちは、里親等、児童養護施設、乳児院などさまざまな場所で暮らしています。児童養護施設は3歳以上の子どもが生活している施設、乳児院はおおむね2歳までの乳幼児が生活している施設です。子どもたちの多くはこれらの施設で暮らしていて、里親等というところで生活しているのは、4万5000人のうちの2割に満たない状況です。

里親制度は大きく4つに分かれています。 専門養育里親、親族里親の2つはなれる方が限られているので、ほとんどのご家庭は養育里親か養子縁組里親のどちらかになっていただくということになります。

養育里親とは養子縁組を目的とせず、一定期間子どもを育てる制度です。家庭に迎え入れて、温かい愛情と正しい理解をもって養育します。

養子縁組里親には特別養子縁組と普通養子縁組があります。里親制度でいう養子縁組里親とは特別養子縁組を前提として、子どもを養育する家庭になります。 特別養子縁組は、さまざまな事情により家庭で暮らすことのできない子どもを、自分の子どもとして家庭に受け入れる制度です。子どもを委託された後、6カ月間の試験養育期間があり、その後家庭裁判所に審判を申し立てて、審判が確定すると実の親子として成立します。この審判確定までの間は、里親として子どもを育てていくことになります。

不妊治療と並行して登録まで行うことが可能

東京都の場合、養育里親で登録するのか、養子縁組里親で登録するのかで研修内容が少し変わってきますので、研修を受講する前にご希望を伺っていますが、どちらの里親にも登録できる自治体もあります。

特別養子縁組を実施しているのは、 自治体のほか、民間あっせん団体もあります。民間あっせん団体は都道府県の許可制となっており、現在全国に23団体あります。養子縁組あっせん事業者一覧で検索していただくと、インターネットで調べることができます。

また、Tokyo 里親ナビというサイトでは、養育里親、 養子縁組里親になった方のインタビュー記事を載せていますので、ぜひ一度ご覧ください。

登録までの段階は、不妊治療と並行していただくことが可能です。ですから、気持ちが固まっていなくてもお気軽にご相談いただくことができます。世の中にはいろいろな形の家族があり、それを認め合って、納得のいく人生が開けることを祈っております。

Tokyo 里親ナビ

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。