【Q&A】着床しても胎嚢確認できません~佐藤幸保先生【医師監修】

かほさん(37歳)

体外受精の治療を始めて2年になりました。
AMH1.1です。顕微受精では胚盤胞にならず、ふりかけ法で胚盤胞まで育つようになり、PPOS法で刺激をしています。1回の採卵で2~4個卵子が採れ、胚盤胞は1~2個獲得出来ています。
初期胚移植2回をして陰性。 胚盤胞移植を4回して2回着床しています。BT12の妊娠判定で1回目HCG780、2回目HCG930でした。
しっかり着床したようでしたが、胎嚢確認までできず化学流産となりました。化学流産の場合、不育症の検査はするべきでしょうか?
染色体異常で分裂が止まったと医師から言われていますが、刺激方法を変える事で改善することは考えられますでしょうか?

ハシイ産婦人科の佐藤幸保先生に伺いました。

【医師監修】ハシイ産婦人科 佐藤幸保先生 京都大学医学部附属病院および高松赤十字病院で体外受精など生殖医療を担当。患者さんそれぞれのニーズに応じて、個別化した不妊診療を提供することをモットーにしている。
資格:産婦人科専門医、生殖医療専門医、周産期専門医・臨床遺伝専門医
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
不育症とは、自然流産を2回以上反復することです。現在日本では生化学的妊娠(化学流産)を流産に含めておらず、生化学的妊娠を2回反復しても不育症とは診断されません。しかし個人的には、生化学的妊娠の反復は不育症と同等と考えており、不育症の原因検索を行ってもよいでしょう。
 不育症の原因としては、胎児(受精卵)の染色体異常の反復が大半を占めており、かほさんの場合も主治医の先生がおっしゃるようにその可能性が高いでしょう。染色体異常による化学流産を予防する方法として、着床前診断(PGT-A)も考慮されますが、保険適用がなく1回するのに100万円近くかかります。最終的に生児を得られる確率は改善しないとの報告もありますので、現段階ではお勧めはできません。
 卵巣刺激法をかえることで、採卵される卵子の質が改善するというエビデンスはなく、それで受精卵の染色体異常を減らすことはできません。ただ多くの卵子を採取すれば、その中に良質な卵子が含まれている可能性は高まるでしょう。ですので、採卵回数を減らすためにも1度の採卵でできるだけ多くの卵子が取れるような卵巣刺激法を実施すべきだとは思いますが、あなたの場合AMHが1.1と低く、PPOS法以外の卵巣刺激法にかえても、1回あたりの採卵数が劇的に増えることはあまり期待できません。
 ポジティブな情報として、2~4個の卵子から1~2個の胚盤胞が獲得できていることがあります。これは、卵子の質がある程度保たれており、クリニックの胚培養環境が適切なものであることを反映しているのでしょう。今後も融解胚盤胞移植をくり返すことで、正常妊娠できる可能性は高いと思います。あきらめず続けてください。
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