人工授精で妊娠の可能性はありますか?

精子の運動率が低くても人工授精で妊娠する可能性はありますか?

相談者 : ももさん(28歳)人工授精を2回行いました。主治医から「問題ない」と言われていますが、精子の運動率がWHO 基準値を下回っています。検査1回目の結果(調整前)は精液量3.2ml、総精子数117.45百万、精子濃度36.70 百万/ml、精子運動率39.82%、前進運動率17.40%。2回目は精液量2.1ml、総精子数125百万、精子濃度60 百万/ml、前進運動率15%(調整後24%)でした。人工授精で妊娠できる可能性はあるのでしょうか?私側の異常は、AMH 値が10.91ng/ml と高いことです。
セント・ルカ産婦人科 宇津宮 隆史 先生 熊本大学医学部卒業。1988 年九州大学生体防御医学研究所講師、1989 年大分県立病院がんセンター第二婦人科部長を経て、1992 年セント・ルカ産婦人科開院。国内でいち早く不妊治療に取り組んだパイオニアの一人。開院以来、妊娠数は 9,900 件を超える。

精液検査の結果、運動率がWHOの下限を下回っていることについて、先生の考えをお聞かせください。

宇津宮先生●精子のデータは、検査した日の体調などに左右されやすく、とてもばらつきがあるので、そんなに心配しなくてもよいでしょう。ただし、精子の運動率が低い患者さんのなかには精索静脈瘤などが原因となっている場合もあるので、一度、男性不妊専門の泌尿器科や男性不妊治療の実績のあるクリニックできちんと検査を受けることをおすすめします。

人工授精で妊娠できる可能性について、どう思われますか?

宇津宮先生●不妊治療は基本的に同じ治療を4〜5回ないし半年つづけて結果が出なければ、次の治療にステップアップします。しかし、ももさんは人工授精での妊娠を望んでいるようなので、まずは腹腔鏡検査を受けてみてはいかがでしょう。年齢的に子宮内膜症があったり、癒着があるなど、人工授精では解決できない何かが腹腔鏡をすれば見つかる可能性もあります。私が主治医なら、第一に腹腔鏡検査、そうでなければなるべく早期に体外受精にステップアップすることを提案します。

AMHの数値がとても高いそうですが、治療の選択肢や治療するうえでの注意点があれば教えてください。

宇津宮先生●AMH値が10ng/ml以上とのことなので、ももさんは多囊胞性卵巣症候群(PCOS)の可能性が十分に高いでしょう。PCOSは多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクがあるので、排卵誘発をする際には注意が必要です。そして、稀に子宮内膜がんが隠れている場合や、将来罹患する可能性もあります。リスクや不妊原因を確定し、治療の選択肢を明確にするためにも、適度なステップアップは必要だと理解してください。

最後に、アドバイスをお願いします。

宇津宮先生●PCOSは卵巣に卵胞がたくさんできるので、体外受精では一度の採卵で多くの卵子を得ることができるというメリットがあります。その一方で、2型糖尿病との関連があるので、正確に診断するために糖負荷検査を受け、糖尿病の場合は適切な治療を受けていただきたいですね。ももさんご夫婦の現在の優先順位は不妊治療が一番になっていると思いますが、2型糖尿病は不妊治療が終わってもずっと付き合っていかなければならない病気ですから、ご自身の体のケアを最優先することを心がけてください。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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