精子の運動率が低くても人工授精で妊娠する可能性はありますか?
精液検査の結果、運動率がWHOの下限を下回っていることについて、先生の考えをお聞かせください。
宇津宮先生●精子のデータは、検査した日の体調などに左右されやすく、とてもばらつきがあるので、そんなに心配しなくてもよいでしょう。ただし、精子の運動率が低い患者さんのなかには精索静脈瘤などが原因となっている場合もあるので、一度、男性不妊専門の泌尿器科や男性不妊治療の実績のあるクリニックできちんと検査を受けることをおすすめします。
人工授精で妊娠できる可能性について、どう思われますか?
宇津宮先生●不妊治療は基本的に同じ治療を4〜5回ないし半年つづけて結果が出なければ、次の治療にステップアップします。しかし、ももさんは人工授精での妊娠を望んでいるようなので、まずは腹腔鏡検査を受けてみてはいかがでしょう。年齢的に子宮内膜症があったり、癒着があるなど、人工授精では解決できない何かが腹腔鏡をすれば見つかる可能性もあります。私が主治医なら、第一に腹腔鏡検査、そうでなければなるべく早期に体外受精にステップアップすることを提案します。
AMHの数値がとても高いそうですが、治療の選択肢や治療するうえでの注意点があれば教えてください。
宇津宮先生●AMH値が10ng/ml以上とのことなので、ももさんは多囊胞性卵巣症候群(PCOS)の可能性が十分に高いでしょう。PCOSは多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクがあるので、排卵誘発をする際には注意が必要です。そして、稀に子宮内膜がんが隠れている場合や、将来罹患する可能性もあります。リスクや不妊原因を確定し、治療の選択肢を明確にするためにも、適度なステップアップは必要だと理解してください。
最後に、アドバイスをお願いします。
宇津宮先生●PCOSは卵巣に卵胞がたくさんできるので、体外受精では一度の採卵で多くの卵子を得ることができるというメリットがあります。その一方で、2型糖尿病との関連があるので、正確に診断するために糖負荷検査を受け、糖尿病の場合は適切な治療を受けていただきたいですね。ももさんご夫婦の現在の優先順位は不妊治療が一番になっていると思いますが、2型糖尿病は不妊治療が終わってもずっと付き合っていかなければならない病気ですから、ご自身の体のケアを最優先することを心がけてください。