【Q&A】移植予定前のタイミング法について~前沢 忠志先生【医師監修】

りんごさん(29歳)
移植に向けて取り組んでいるが、移植予定日䛾前日に、内膜の厚さが足りないことから移植が中止になることがありました。
その場合、タイミングも取れてないため、その周期の妊娠の可能性はゼロになります。
移植の予定がある時には、タイミングは取らないほうがいいのか、タイミングでの妊娠の可能性も考えてタイミングをとっても良いのか、
どちらの方がいいのか毎回気になっています。

【医師監修】三重大学医学部附属病院 高度生殖医療センター 前沢 忠志 先生 日本産科婦人科学会専門医、指導医。日本生殖医学会専門医、指導医。母体保護法指定医。2005 年浜松医科大学を卒業後、初期研修を経て三重大学産科婦人科の医局に入局。済生会松阪総合病院、紀南病院などを経て、2012 年よりIVF なんばクリニック、IVF 大阪クリニックで不妊治療を学び、2016 年より三重大学医学部附属病院勤務。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
1 SLE全身性エリテマトーデスの患者さんが不妊治療を行う場合の治療の進め方や注意点などがあれば教えてください。
全身性エリテマトーデスの場合、高率に合併する抗リン脂質抗体症候群が問題になります。本疾患は、習慣性流産を引き起こす代表的な疾患であり、妊娠後は妊娠継続のためにバイアスピリンやヘパリンといった抗凝固療法が必要になります。そのため、まずは凝固系の測定及び胚移植からの抗凝固療法の実施が必要になります。主治医とよく相談してください。
2 移植予定がある場合はタイミングを取らないほうがいいのか、もしくは妊娠の可能性を残すためにタイミングをとってもいいのか、教えてください。
排卵周期で胚移植を行う場合、排卵した卵子と受精し妊娠する可能性があるため、移植胚と自然排卵した胚の両方が着床した場合、双胎、品胎などの多胎のリスクになるため、推奨は出来ません。しかし、タイミングを取るよう指示しているクリニックもあると聞いたことはあります。多胎妊娠は周産期リスクが非常に高いため、タイミングは取らない方がよいです。
3 移植当日まで内膜の厚さを保つために、どのような方法がありますか?
ホルモン補充周期を行うのであれば、エストラジオール錠やエストラーナテープの増量で対応するしかないかと思います。過去には、G-CSF製剤の子宮内注入などの方法も言われておりましたが、効果がみられる患者さんは限定的で、多くの方に結果が出る方法ではないと思います。SLEがあるのであれば、バイアスピリンの併用で血流を少しでも良くすることを期待して使用するのも一つの方法かと思います。しかし、基礎疾患に-SLEがあり、凝固系が亢進しているのであれば、卵胞ホルモン製剤は使用するのが難しいため、自然周期での胚移植を行わなければならず、内膜肥厚を図るのは難しいと考えます。
4 内膜の厚さ不足で2年間移植できていないそうです。今後の治療の進め方について、アドバイスをお願いします。
基礎疾患の状態によりますが、卵胞ホルモン剤が使用可能なのであれば、月経後からのエストラジオール錠とエストラーナテープの併用及びバイアスピリンの内服を試してみてもよいかと思います。卵胞ホルモン剤が使用出来なければ、残念ながら難しいです。
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