良好な胚盤胞ができません。すぐに自費診療に移行し、貯卵したほうがいい?
40 代になってから保険診療で不妊治療をスタートした場合、なかなか結果が出ないと自費診療への移行を考える人も多いようです。どのような形で進めていったらいいのか、松本レディース リプロダクションオフィスの松本玲央奈先生にアドバイスをいただきました。
聖マリアンナ医科大学卒業。東京大学大学院修了。2015 年にはヨーロッパ生殖医学会において着床に関する研究で、最も権威のあるAwardなど国内外で多数受賞。2020 年松本レディースクリニック/リプロダクションオフィス理事長就任。「患者さん一人ひとりにご納得いただける診断や治療を提供すること」が当院のモットー。
ドクターアドバイス
●胚盤胞は見た目の評価に囚われすぎない。
●PGT-A は有効ですが費用面がネックに。
●刺激を弱めてしまうと改悪になる可能性も。
胚盤胞になったことが重要。見た目の評価に囚われすぎないこと
この方の相談内容を見て、どのような印象をもたれましたか?
松本先生●直近の治療については、成熟卵が全体の半数程度しか採れない時が多いということですね。ご心配されているようですが、全体としてみたら卵子の数はしっかり採れていますから、それほど気にされることはないと思います。
卵巣刺激をして採卵されていると思われますが、41歳という年齢の割にはある程度個数を確保できているのではないでしょうか。
また、なかなか良いランクの胚盤胞ができないというお悩みについてですが、見た目の評価について囚われすぎる必要はないと思います。Aが入っていないから妊娠しないというわけではありません。同じ5日目の胚盤胞であれば、AもCも妊娠率にはそれほど差はないのかなと思います。
見た目の評価を気にするよりも、受精卵がきちんと胚盤胞になっていることが重要。この方は刺激して卵巣もそれに反応し、胚盤胞を凍結することもできています。41歳という年齢を加味すると良い治療を受けているという印象です。
「PGT -A」を受ければ無駄な移植の繰り返しを避けられます
できればPGT – Aにも挑戦したいというご希望があるようですが。
松本先生●卵子が採れていて胚盤胞にもなり、移植をしているけれど結果が出ない。komaさんのようなケースの場合、胚盤胞の染色体異常を調べるPGT – Aは確かに有効だと思います。事前に正常な胚を選別できれば、無駄な移植を繰り返さなくてすみます。医学的に非常に理にかなった方法であり、効率性は高くなるのではないでしょうか。この検査には胚盤胞が必要になってくるので、komaさんは適用の対象になると思います。
ただネックになってくるのが費用面。現状、PGT – Aは自費になります。不妊治療自体を自費に切り替えないとできないので、経済的な負担が大きくなってしまいます。komaさんはまだ保険で可能な移植回数が残っていますので、無理をしなくていいのでは?
自費での採卵、貯卵も考えていらっしゃるようですが、A M H の値は年齢の割に良く、卵子もしっかり採れている状態なので、今すぐではなく保険診療を終了してから自費での治療を考える流れでいいと思いますね。
刺激法は変えず、OHSSに注意しながらなるべく多くの卵子確保を目指します
OHSSのリスクを心配されていますが、刺激に関してはどう思いますか。
松本先生●詳しい刺激法は書かれていないのでわかりませんが、卵子が採れているのでこのまま同じやり方で続けられていいと思います。変えてしまうと改善ではなく改悪になってしまう可能性もあります。
卵巣が腫れるというのは懸念するべきことですが、逆にいえば卵巣がちゃんと反応しているということ。先生にとっては想定内のことかもしれません。刺激を弱くすればOHSSのリスクは減らせますが、採れる卵子や凍結できる胚の数が減ってしまうというデメリットが生じてしまいます。
komaさんは、卵子をしっかり採るということが今最優先の課題になると思います。OHSSを引き起こさないように注意を払いながら、現状レベルの刺激で卵子を採りにいったほうがいいと思います。