凍結胚盤胞移植の時期と染色体異常について

14週で妊娠中断。
同じ採卵時の凍結胚で染色体異常の可能性は?

ひなさん(36歳)第1子の時の顕微授精で保存していた凍結胚盤胞を移植し、妊娠したものの9週で稽留流産。染色体検査では結果が出ず、原因不明でした。2回目は1個採卵、異常受精で培養中止。3回目は2個採卵で2個受精、新鮮胚移植で妊娠しましたが13トリソミーが判明して14 週で中期中絶しました。同じ採卵時のグレードが低い凍結胚盤胞では、染色体異常の可能性は高まるのでしょうか。また、早期の移植を希望していますが、これまでの経過を踏まえて、次の移植時期はいつ頃が適切でしょうか。
セントマザー産婦人科医院 田中 温 先生 順天堂大学医学部卒業。膨大な数の研究と実験は毎日深夜にまで及び、1985 年、ついに日本初のギフト法による男児が誕生。1990 年、セントマザー産婦人科医院を開院。現在も研究と実験に精力的に取り組んでいる。日本受精着床学会監事。順天堂大学医学部客員教授。
胚盤胞のグレードと染色体異常の関連について教えてください。
田中先生●見た目で評価を表すガードナー分類では、グレードの高い胚盤胞ほど流産率が低い傾向にあると言われてきました。しかし、着床前診断でデータを蓄積してきた現在、見た目(グレード)の良いものは「少しだけ」染色体異常率が下がる、という評価に変わりました。やはり、年齢に起因する部分は大きく、一般的に40歳以上の染色体異常による流産率は8割程度です。
染色体異常があった受精卵と同じ採卵時の凍結胚盤胞の場合、染色体異常が発生する可能性は高まりますか?
田中先生●21トリソミーの原因は明らかに年齢ですが、13、18トリソミーは、年齢以外の要因でも発生します。3回目の採卵で2個採卵し、そのうちの1つが13トリソミーだったからといって、もう1つも染色体異常というのは確率的に低いですし、2つとも、というのは私の経験上もありません。
採卵数が少なく、2回目の採卵では異常受精で培養中止という結果でした。
田中先生●身長や体重が人によって違うように、卵巣の機能ももって生まれた「個性」だと私は考えています。
 AMHが低くても、この数値は卵子の数を示すものであって「質」の指標ではありません。数が少なくても質が良ければ妊娠・出産できる可能性は十分にあります。そこで大事なのは、月経開始から3日目までの左右の卵巣の胞状卵胞の数を調べることです。超音波で診ると、10〜12mmの卵胞が見えるので、非常に数が少ない場合を除き高刺激で排卵誘発をすれば採卵の個数を増やすことができます。
現在残っている凍結胚盤胞の適切な移植時期はいつ頃でしょうか。
田中先生●通常の流産や中絶なら1カ月空けてから。しかし、ひなさんの場合は中絶したのが14週とかなりお腹も大きくなってきた頃なので、私なら2カ月は待つことを提案します。なぜなら、妊娠すると脳下垂体から出るホルモンも卵巣から出るホルモンも大きく変わるからです。体内のホルモンバランスを元に戻すには最低でも1カ月かかるので、焦らずに子宮内膜や卵巣の環境を整えてから一番適切な移植時期を決めることが大切です。
 今残っている凍結胚盤胞を移植したあとはしっかりと卵子をつくる排卵誘発を行い、胚盤胞を貯めること。着床率を上げるために、1回の移植で複数個の凍結胚盤胞を戻すことをおすすめします。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。