不妊の悩みは、年齢や治療内容、体質などによってさまざまです。今回は低AMHや凍結胚の着床率などについて、「多くの選択肢の中から患者さまの治療法を一緒に考え、共に歩んでいく医療」を目指す政井先生に、丁寧にわかりやすく答えていただきました。先生の治療にかける熱い思いも伝わる、質問会の一部をお届けします。
低AMHと男性不妊ベストな治療法は?
司会●今回がダメだった場合、次のステップについて先生のお考えを教えてください。
政井先生●低AMH でなかなか採卵できないケースは当クリニックでも多いです。移植をしないと妊娠するチャンスは生まれません。胚盤胞までいかない、もしくは採卵数が少なく胚盤胞まで育ちにくいなどの場合、必ずしも胚盤胞にこだわらないというのもありだと思います。1人目を初期胚で妊娠されたので、初期胚でも妊娠できると考えられます。ですので、初期胚を念頭に入れた治療も考えられるのではないでしょうか。
司会●6週で流産されていますが、不育症の検査はしたほうがいいでしょうか。
政井先生●検査を考えてもいいと思います。たとえば採卵や移植のタイミングで、周期と周期の間などに検査するといいでしょう。
司会●二段階胚移植にトライすれば妊娠の可能性が上がりますか?
政井先生●私見ですが、二段階胚移植で妊娠率が上がるという印象はありません。2個戻す場合と二段階の妊娠率は変わらないと思います。ただ、いくつか胚がある時には一つずつ戻すことを考えると、時間短縮にはなります。
司会●自然周期、低刺激、高刺激で最適な治療法をアドバイスいただけますか。
政井先生●負担をかけずに自然周期や低刺激を進めるという考え方もあります。ただ刺激をしないと卵子がそもそも採れないという場合もあり、高刺激を選択することも考えられます。過去の採卵経過を見て、その方に合った方法を見つけていきます。
全胚凍結のほうが着床率がいいの?
司会●7個とも胚盤胞までいかず、悩まれています。先生ならどういったアドバイスをしますか。
政井先生●当院でしたら、次回採卵した卵子すべてを胚盤胞まで目指さないということも考えます。たとえば高刺激だと数は同じくらい採れると思うので、いくつかは初期胚を凍結して移植できる胚を確保。もしくは低刺激や自然周期といった刺激の方法を根本的に変えてみます。採卵数が減少するかもしれませんが、卵子の質が違ってくる可能性もあり、新鮮胚移植への選択もありえるでしょう。
司会●病院によっては必ず凍結してから移植するところがあるようですが、そのほうが着床率は上がりますか。
政井先生●凍結胚のほうが自然胚よりも妊娠率が上がるというのは確かにいわれています。凍結胚にする理由は、たとえば卵子がたくさん採れた周期というのは、体がアンバランスな状態となって「着床の窓」にズレが生じやすくなったり、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高くなることから、これらを回避するために全胚凍結を選択することが多くなります。
当クリニックの場合、胚盤胞までいき凍結した場合の妊娠率は移植あたり40 ~ 50%、新鮮胚で戻した場合は30%弱というくらいです。この結果からも胚盤胞までいけば凍結をしたほうがいいと考えています。
胚盤胞を2個同時移植メリット・デメリットは?
司会●2個同時移植の場合、40 歳という年齢ではどのくらい双子の可能性があるのでしょうか。
政井先生● 40 歳の方がどのくらい双子になる確率があるかについては、データがないため明確なお答えはできかねます。比較的グレードの良いものを胚盤胞で戻す、しかも2個同時ですので、双子になると少なからず考えられます。
胚盤胞の移植あたりの妊娠率は、当クリニックでいうと4A くらいのグレードでは40%くらい。若い方だと50%近くになることもあります。それを2個戻した場合は、双子になる可能性が発生するということになります。
司会● 40 歳での2個同時移植のメリット、デメリットを教えていただけますでしょうか。
政井先生●胚盤胞が2つあり、それを1つずつ戻す場合、1回で妊娠しなかったら、次の周期までに2カ月を要します。40 歳という年齢を考えたら、2個同時移植は、その1周期分の時間短縮がメリットになるかと思います。
デメリットは双子になる可能性があるということ。考え方にもよりますが、40 歳での双子妊娠というのは、いろいろなリスクがあるかと思います。現在お住まいの地域の産科医療が、双子のハイリスク出産に対応できるかなど、該当地域の医療体制によっても状況は異なってくるでしょう。そのあたりも考慮しながら、主治医としっかりと相談されるといいかと思います。