かしわざき産婦人科 柏崎祐士先生のオンライン質問会

「不妊の悩み」は、治療内容や年齢、体質などによってさまざまです。なかでも今回は、着床についてのお悩みから2 人目不妊で移植がうまくいく可能性など、普段の診察では聞きづらい悩みについて、多くの患者さんから信頼されている柏崎祐士先生にご意見を伺ってみました。

かしわざき産婦人科●柏崎 祐士 先生 京都府立医科大学医学部卒業。2000年まで日本大学板橋病院で主に不妊治療に従事し、その間、米国エール大学医学部産婦人科で研修。その後、「かしわざき産婦人科」副院長に。日本生殖医学会生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会認定医。

高額なので着床前診断ができない。どうすればいいでしょうか?

現在37歳。33歳の時に体外受精新鮮胚移植。その後、凍結胚移植を7回行っても着床しません。着床前診断以外の検査は異常なしでした。このまま着床前診断をせず移植を継続して、授かることはできますか?
司会●着床前診断ができない場合はどうしたらいいでしょうか。
柏崎先生●かなり頑張っているのになかなか結果が出ない状況に、相当ストレスが溜まっていることと思います。着床前診断の利点は、検査で異常な胚を見つけて、それを移植しないことで、妊娠の確率を上げられる点にあります。ですから、着床前診断をしないと絶対にダメというわけではありません。正常な胚を移植すれば、着床前診断の有無にかかわらず、妊娠する条件は同じになります。ただ、その正常な胚を移植するまでに移植の回数は増えるかもしれませんが、相談者の方は着床前診断以外の検査はすべて異常なしということなので、粘り強く移植していくのがいいでしょう。着床前診断は2022 年4月以降も保険適用にはなりません。もし保険適用になった場合は、かなり金銭的な負担は減って受けやすくなるとは思いますので、それまで待つという方法もあります。ただ、そうなると年齢との勝負になるので、地道に移植を続けていくか、保険適用になるまで待ってから着床前診断を受けて移植するかは、ご夫婦でよく相談なさってください。
司会●着床前診断はあくまでも(妊娠に至るまでの)効率を上げるもので、この検査をしたから必ず妊娠しやすくなるというものではないということですね?
柏崎先生●そうですね。着床前診断の検査を受けたからといって、胚のクオリティが上がるというものではありません。

2人目不妊で顕微授精を2回失敗。次回はグレードの良い胚盤胞を予定

2人目不妊で治療開始。今まで顕微授精を2回失敗しました。次回の治療でグレードの良い胚盤胞を2個移植する予定です。次回の移植がもしダメだったら、今後、妊娠は難しくなりますか。
司会● 2 人目不妊で治療を行っていらっしゃいますが、これまで2 回、顕微授精を失敗されたそうです。
柏崎先生●はい。2 人目不妊ということは、何年前かにもよりますが一度は妊娠、出産歴があると思いますので、自信をもっていただきたいです。今まで2 回顕微授精をしてうまくいかなかったということですが、今回、グレードの良い胚盤胞が2 個、確保できているということなので、このまま移植を続けていただいていいと思います。2 回うまくいかないと、どうしても心が折れやすくなってしまいますが、2 人目を諦めるのはまだ早いと思います。
司会移植するにあたり、準備しておいたほうがいいことや確認しておくことなどはありますか?
柏崎先生●そうですね。新鮮胚を移植予定の場合は、そのままでいくか凍結するかを主治医に相談してみてください。凍結胚移植を予定している場合は自然周期でいくのか、ホルモン補充周期にするのかで変わってくるので、これについても主治医の先生と相談してみるといいでしょう。さらにクオリティの高い胚盤胞を移植しても妊娠しない場合は、子宮内膜を元気な状態にしてくれるPRP 療法( 多血小板血漿) などを検討してみてもいいかと思います。

今度初めて人工授精を行う予定。予定日前に排卵の兆候があったら?

2月19、21日の通院時に卵胞が11mmと言われ、26日の人工授精をすることに。前回の生理が2月10~12日で周期は25日。ただ14日と18日にガクンと体温が下降。19日の時点で排卵が終わっている可能性は?
司会●卵胞を測定した日の数日前に体温の下降期が2 回ありました。排卵が終わっている可能性はありますか。
柏崎先生●排卵直前の卵胞は20mm程度まで大きくなります。19 日と21 日の時点で卵胞が11mmということは、この時点で排卵が終わっているとは考えにくいです。逆に排卵してからだいぶ経つと卵胞が破裂して小さくなっている可能性はあります。ただ、生理周期から考えると排卵前でしょう。おそらく主治医の先生もエコーの際、子宮内膜の厚さを測っていると思います。21日から24日までの間に主治医がエコーで卵胞のサイズを測ったかは不明ですが、恐らく主治医は「この日が排卵日だろう」と推測して人工授精を計画したと思います。排卵したかどうかについてはエコー検査と血液検査でわかりますが、疑問に感じることがあったら、主治医に単刀直入に聞いてみるのがいいと思います。
司会●もし排卵済みなら人工移植は次回にしたいようです。先生のお考えはいかがですか。
柏崎先生●もし人工授精の予定日から24 時間以上前に排卵していたら、そのまま実施しても受精しません。そのような場合でしたらキャンセルしたほうがいいかと思います。費用もかかって大変かもしれませんが、もしグレードが良くないのであればもう一度頑張って採卵にトライして、今のうちにできるだけ多くの凍結胚をつくっておいたほうがいいと思います。
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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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