保険の治療回数って、 どうなってるの?

保険診療のメリットはあるものの、治療の回数や年齢の制限に不安や戸惑いも。採卵や移植の回数の考え方、転院の際の注意点、40 代からの不妊治療と保険など、複雑で理解するのが難しい保険診療ならではの制限から、保険適用以降のクリニックの選び方まで、臼井医院 婦人科 リプロダクション外来の臼井彰先生に詳しく教えていただきました。

臼井医院 婦人科 リプロダクション外来 臼井 彰 先生 東邦大学医学部卒業。東邦大学大森病院で久保春海教授の体外受精グループにて研究・診察に従事。医局長を経て、1995 年より現在の東京・亀有にて産婦人科医院を開業。

ドクターアドバイス

・採卵は回数制限がないので何度でもOK
・保険診療に対する主治医の方針を確認して
・治療歴把握のため転院時は紹介状が必須に
・不明点があれば、自ら積極的に情報収集を

ART の治療条件を教えてください。

年齢によって回数制限は2通り
 ART の保険適用には、女性の年齢による回数制限があります(40 歳未満なら胚移植は6回まで、40 歳以上43 歳未満は3回まで)。今まで助成金などを受けていても、保険ではゼロからのスタートです。「すでに43 歳だから保険診療ができないのか」「今はギリギリ40 歳未満でも誕生月までに治療開始できなければ通算3回になるのか」など、ボーダーラインの患者さんの多くが不安に思っているかもしれませんが、そうではありません。
 令和4年4月2日から同年9月30 日までの間に43 歳の誕生日を迎える方は、43 歳になってからでも採卵から胚移植までの一連の治療を1回に限り保険で受けることができます。同じ期間中に40 歳の誕生日を迎えて治療を開始する方は通算6回が上限になります。誤った認識で「年齢的にもうダメだ」と早々に諦めず、医療機関やお住まいの自治体、地方厚生局に問い合わせるなど、積極的な情報収集を心がけましょう。

現在 44 歳。保険では人工授精のみ?

人工授精は回数制限がありません。
 年齢による人工授精の回数制限はなく、基本的には保険で何度でも実施できます。しかし、一般的に体外受精よりも人工授精のほうが妊娠率は低くなりますから、人工授精だけではなく、タイミング法も同時に行い、回数を増やして確率を上げることを心がけましょう。
 当院でも40 代で人工授精による妊娠・出産をされた患者さんはとても多いですが、その反面、流産率も増えています。健康でいつまでも若い気持ちがあっても、高血圧などの持病や、妊孕力の低下、妊娠に耐えるだけの体力がないなど、年齢がカベになってくる年代でもあります。
 また、治療のステップアップも30 代の人工授精なら6周期のところを40 代なら3周期にするなどスピード重視になります。年齢制限はなくても、やみくもに時間を経過させるのではなく、たとえば「45 歳まで治療する」「◯回までは頑張る」など、具体的な治療計画を立てていただきたいです。

採卵と移植のカウントの考え方は?

何度採卵しても移植しなければゼロ
 採卵の回数には制限がありません。良い卵子が採れなくて移植できなければカウントせず、新鮮胚でも凍結胚でも移植すれば1回と数えます。3個の凍結胚を各周期に1個ずつ移植すればカウントは3回。2個と1個に分けて移植すれば2回という考え方もありますが、これまで多胎妊娠を防ぐために日本産科婦人科学会では、単一胚移植を基本としていました。しかし、今後は2個胚移植をするケースが増えてくるかもしれません。
 採卵は、1回の採卵費用(保険点数3200 点)をベースに、採卵数や麻酔、抗生物質の使用に応じて費用が加算されます。保険は3割負担ですから、今までに比べれば経済的な負担軽減が期待されます。どのグレードの胚を凍結するか、保存した凍結胚を使うのか、使わずに次の採卵をするのかなど、移植や凍結の考え方はクリニックによって方針が分かれます。ご自身の主治医がどのような考え方なのか、一つひとつ確認することも大切です。

転院する場合はどうなるの?

事実把握のため紹介状は必須に
 今までの助成金制度の仕組みでは、治療開始前(申請時)に支給条件に適しているか否かがわかりましたが、保険制度では治療前の申請自体がありません。すでに回数制限を超えていたとしても、転院先の初診時に「初めてです」と告げられれば、その自己申告を信じて、3割負担での治療を実施します。その際に「問い合わせてよいですか?」などと事実確認もできますが、結果としてお互い気まずくなるのは避けるべきかと思います。そこで、過去の治療計画は不要ですが、事実を把握するためにも紹介状は必須となります。また、凍結胚が残ったまま転院することは可能ですが、胚移送は保険適用外。転院先でも自費診療になります。
 皆さんはホームページなどで熱心に比較検討をされていると思いますが、まずはそのクリニックがどのような方針かを理解し、説明会があれば参加してみるなど、自ら積極的に情報を得ることが納得のいく治療を選ぶコツになるでしょう。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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