妊娠できないのは子宮内膜症と子宮筋腫が原因なのでしょうか

明大前アートクリニック 北村 誠司 先生 昭和62 年、慶應義塾大学医学部卒業。平成2年、同大学産婦人科IVFチームに入る。平成5年、荻窪病院に入職。平成20 年、虹クリニック、院長として就任。平成30 年2月、明大前アートクリニック開設。医学博士。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医学会・生殖医療専門医。日本産科婦人科内視鏡学会評議員。
相談者 : るいさん(31歳)結婚して2年目になりますが、授かることができません。産婦人科で一通り検査をしましたが、特に大きな問題はありませんでした。原因としては「卵管の通りがあまり良くないかもしれない」ということと、もともと子宮内膜症子宮筋腫(2~3cmのもの)があります。それが原因なら、生理を止める方法もあると医師からいわれましたが、少しでも早く授かりたいので悩んでいます。どのように治療を進めていけばいいのか、アドバイスいただきたいです。
子宮内膜症や子宮筋腫が妊娠を妨げているのでしょうか。まずはそれらの治療を優先したほうがいいですか?
北村先生●できた場所や程度にもよると思います。子宮内膜症の場合、たとえば子宮腺筋症などがあり、着床を妨げる懸念があれば、点鼻薬や注射を使ったホルモン治療を4~6ヵ月行ってから妊活を行う選択肢もあります。
 また、卵巣の中に内膜症ができるチョコレート囊胞があると卵巣予備能が下がってしまうことも。8cm以上など囊胞が大きいとがん化するリスクも高まるので、4cmを超える大きさであれば不妊治療より手術を優先することがあります。ただし、この措置をすると卵胞の在庫が減ってしまう懸念があります。
 子宮筋腫はかなり大きかったり、子宮粘膜下にできていると着床しづらくなるので、その場合も不妊治療より手術を先にするケースが多いと思います。筋肉の中、もしくは子宮の外にあるタイプの筋腫だったら、手術はせずに経過観察しながら不妊治療を進めていったほうがいいと思いますね。
治療の方針を決めるためにはどうしたらいいのでしょうか。
北村先生●まずは子宮内膜症や子宮筋腫がどの程度なのか、手術をしなくてもいい状態なのか、きちんと検査することが重要だと思います。
 エコーなど基本的な検査に加え、MRIで病変を詳しく観察する、子宮内膜症に関しては腫瘍マーカーで調べてみるなど。また、チョコレート囊胞がある方はAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が低いことが多いので、一度この数値を測ってみてもいいでしょう。
主治医から「卵管の通りが良くないかも」といわれたようですが。
北村先生●子宮内膜症があると、卵管采や卵管周囲に癒着を起こして通りが悪くなることがあります。自然妊娠を希望されるなら、癒着を取り除くというのも手です。
 るいさんは少しでも早く赤ちゃんを授かりたいとのこと。タイミング法をはじめて半年ですから、子宮内膜症などがなくてもそろそろ次のステップへ進む時期かもしれません。不妊治療に保険が適用されて経済的なハードルが下がったので、体外受精を視野に入れるという選択肢もあるでしょう。
 まずは病状をきちんと調べ、自然妊娠では時間がかかりそうであれば考えてみてもいいのでは? 体外受精をすることで、今までわからなかったほかの原因が見つかる可能性もあります。
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