保険はどの治療に使えるの?
項目と治療費をまとめてお伝えします。
ギリギリまで保険適用の詳細が伝わってこなくて、これからの治療をどうするかやきもきした人も多かったのでは。ここで改めて、4 月から保険適用になった治療についてお伝えします。
4 月から保険適用になったもの
一般不妊治療
生殖補助医療(ART)
①採卵 ②採精 ③体外受精・顕微授精 ④受精卵胚培養 ⑤胚凍結保存 ⑥胚移植
付随して、AMH、卵子活性化、精巣内精子採取術、Y染色体微小欠失検査、アシステッドハッチング、エンブリオグルーも保険適用に。
*保険で受けられる生殖補助医療には年齢制限があります。(40 歳未満…胚移植6 回まで / 40 歳以上43 歳未満…胚移植3 回まで)
*保険と自費診療の併用は認めらません。保険外の検査をしたり薬剤を使ったりすると、保険適用になった治療分もすべて自費となります。
*ただし、「先進医療」と認められた治療や検査に関しては、保険診療と併用して行うことができます。(詳細は左ページをご覧ください)
ART 自己負担額
採卵
採れた個数によって16,800円(1個の場合)~31,200円(10個の場合)
体外受精
12,600円。(顕微授精の場合は、卵の個数によって14,400円~38,400円)
胚培養
初期胚
卵の個数によって、13,500円~31,500円
胚盤胞
卵の個数によって、13,500円~31,500円
凍結保存
卵の個数によって、15,000円~39,000円 ※凍結保存管理料、年間10,500円
胚移植
新鮮胚移植
22,500円
凍結融解胚移植
36,000円
*別途、生殖補助医療管理料 750 円or900 円
ケーススタディ/ 体外受精の場合
A子さんは採卵で10 個採れて、体外受精をしたところ7 個が受精。2 個胚盤胞まで育ったので、胚凍結保存。凍結融解胚移植を1 回行いました。
今回の治療でのA子さんの自己負担額は約150,000 円
(採卵10 個31,200 円+体外受精12,600 円+胚培養2 個36,000 円+凍結保存2 個21,000 円+凍結融解胚移植36,000 円+管理料、その他 お薬代など)
保険適用になったことで「高額療養費制度」が使えるようになります。
高額療養費制度とは、1 カ月の診療費が限度額を超えた分について払い戻しを受けられる制度。自己負担の限度額は、年齢や所得によって異なります。
たとえば、限度額が8 万円の人は、1 カ月の支払いが15 万円だった場合、8 万円を超えた分の7 万円が加入して
いる保険組合を通して払い戻されます。
先進医療を徹底解説 !
先進医療って何?保険診療と一緒にできる?先進医療にはどのような治療が承認されたのでしょうか。今後の展望は?
高度生殖医療に必要な技術が先進医療に認められる
先進医療とは、保険外診療(自由診療・自費診療とも呼ぶ)のなかから、「保険診療としてはまだ認められないけれど、先進的な医療技術である」と厚生労働省が認めたものです。さらに詳しく言うと、先進医療の技術は保険診療と併用しても「混合診療」とはみなされず、保険の部分はそのままに、先進医療は自費で治療ができる制度です。
現在、日本の保険制度は、例外を除いて混合診療を禁止しています。したがって、皆保険制度のもとでは保険診療と自由診療を併用した場合、保険が使える部分もすべて自由診療扱いとなってしまいます。
しかし混合診療を禁止すると、保険診療を希望する患者さんにとっては、医療費の負担増や、受けられる治療に限りが出るという課題が出てきます。なぜなら保険適用になった技術は、生殖医療全体から見ると少ないからです。
そこで、患者さんに対してどうしても必要な技術を、ドクターが厚生労働省に申請して認めてもらったのが先進医高度生殖医療に必要な技術が先進医療に認められる療というわけです。
また先進医療という制度には、今までドクターの方々が積み上げてきた生殖医療の高度で最先端の技術を低下させない役割もあります。 今回、先進医療とされるのは「タイムラプス」や「SEET法」、「子宮内膜受容能検査」などの7技術。これは高度生殖医療において保険診療内の治療とセットで組み合わせることができます。どれも、妊娠率を高めるために必要な技術です(詳細は下記参照)。
なお、皆保険制度は2年ごとに、該当する項目や診療報酬などが改定されます。今回承認された先進医療は、次の改定で保険診療になる可能性もあります。また、患者さんの多くが関心を寄せているPGT-A(受精卵の移植前に染色体の異常を調べる検査)は、保険にも先進医療にも承認されていません。しかし今年(2022年)12月をめどに日本生殖医学会が臨床結果をまとめるので、有効性や安全性が認められれば先進医療に承認される可能性もあります
先進医療に承認された治療
SEET法
受精卵(胚)の培養に使った培養液を胚移植の数日前に子宮に注入し、胚の着床に適した環境を作り出す。
タイムラプス
受精卵(胚)を育てる培養器に内蔵されたカメラで、培養中の胚を一定間隔で自動撮影し、胚の評価を行う。
PICSI
培養するために調製されたヒアルロン酸を含む培地を使って、成熟した良い精子を選択し、顕微授精を行う。
IMSI
1000 倍以上まで拡大できる顕微鏡を使って、精子の頭部の状態などを詳細に観察。よい形態の精子を選定。
子宮内膜スクラッチ
胚移植を行う予定の前周期に、子宮内膜をこすって傷(物理的な刺激)を与えて着床しやすい環境を作る。
子宮内細菌叢検査(EMMA/ALICE)
子宮の細菌叢の状態を調べる検査。着床に関係する乳酸菌の割合や、子宮内膜炎の原因菌の有無を調べる。
子宮内膜受容能検査(ERA)
子宮内膜の細胞を採取して、遺伝子を解析し、内膜組織が着床に適した状態であるかを調べる検査。
*取材(3月22日)のあと、4月14日に「二段階胚移植」が先進医療に承認されました。