【Q&A】体外受精へのステップアップについて~林先生

人工授精で治療中に、男性不妊が発覚。

体外受精にステップアップするべきでしょうか?

林先生に聞いてきました。

林 直樹 先生 1983年、東京大学医学部卒業。埼玉医科大学総合医療 センター(川越市)などを経て、現職。「体外受精、顕 微授精も高いクオリティで対応していますが、できる限 り自然に近い不妊治療をご提供したいと考えています。 患者さんはそれぞれお悩みも違いますから、どんなこと でもまずご相談を。時にはご要望に沿えず、厳しいこと を申し上げるかもしれませんが、常に患者さんにとって ベストな治療法をご一緒に見出したいと思っています」。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

せきえさん(34歳)

私は多嚢胞でタイミング法でもなかなか授からないため、先日人工授精にステップアップしました。
その際にいくつか気になる点があり、早々に、体外受精に切り替えた方が良いか検討しています。
1子宮頸管?の曲がりが強くカテーテルが奥まで挿入できなかったため子宮口入り口での精子注入となった。
(1番硬いカテーテル使用したいただいたようです)
2夫(40代)の精子の結果が悪かった。
精液量4ml 濃度4000万/ml、総運動率1桁、前進運動率 0、BMI 0

■洗浄後
濃度 400万、運動率 90%
過去2回の結果を見ても、総運動率は20〜30%以下、前進運動率は1桁
このような場合、人工授精を続けるよりも体外受精に進んだほうが良いのかなと思うのですが、
やはり複数回は人工授精で様子を見るべきなのでしょうか?
夫婦間では体外受精へのステップアップも視野に入れて考えは一致しています。

多嚢胞性卵巣症候群の方の排卵誘発剤としては、2018年エビデンスに基づいた国際的なガイドラインではクロミッドよりもレトロゾールの妊娠率および多胎妊娠回避という点で有用性が高いと発表されており、自費診療(1錠数百円~千円に設定されていることが多い、1日1錠か2錠5日間内服)という点を除けば、レトロゾールを今後試してみてもよいかもしれません。
児への安全性も問題ないと報告されています。
現在レトロゾールの保険適応化が検討されています。
子宮の前屈が強い方など、子宮内へのカテーテルの挿入が難しく、やむを得ず手前の子宮頸管内への注入を余儀なくされる場合があります。
諸家の報告では妊娠率はやや劣るとされています。
こうした場合、膀胱に尿をある程度貯めていただくと子宮の屈曲の程度が緩和され、同時に経腹超音波ガイド下にカテーテルを挿入することでうまくいくことがあります。
それでも難しい場合、経腟超音波ガイド下に、子宮の裏側のダグラス窩をごく細い針で穿刺して、腹腔内や卵胞内に精子を注入する方法(前者はDIPI、後者はDIFIといいます)があります。
局所麻酔を併用するとほとんど痛みなく施行することができ、人工授精法と同等の妊娠率が期待できます。
人工授精手技に著しく時間を要したり苦痛を伴う場合には選択してみてもよいと考えます。

ご主人の精子の検査データはやや心配なところがありますね。
ただし人工授精時に処理後の運動率が処理前の2.4%から90%へと劇的に回復しているところをみると検体採取時ならびに運搬時の保管温度が適切であったかどうかまずチェックする必要があります。
検体はカバンやポケットに入れず直接肌に接するように運搬いただくのがよいです。
最近は保温性に優れた検体容器を使用する医療機関もあるようです
とくに寒い季節は注意が必要です。精子数が少ない場合や運動率に問題がある場合、男性側の専門医による診察を是非お勧めします。
精索静脈瘤など治療によって劇的改善する場合があります。

一般的には人工授精回数としては最低3〜4回、可能ならば6回程度行ってもよいと考えます。一方で最近、一般的な精子パラメータでの評価だけでなく精子の質の評価法として、精子DNA損傷の検査を取り入れる医療機関もあります。
DNA損傷率が高くかつ男性側の治療で改善がみられない、もしくは改善方法がない場合には、タイミング療法や人工授精治療を経ないで、すぐに顕微授精治療へステップアップした方がよいと考えます。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。