「高額だから」を理由にステップアップをためらってはいませんか?しかし、考えようによってはお得なうえに体にも優しいかも。
高度生殖医療は全額自己負担で、各クリニックのいわば“言い値”
不妊治療にかかる費用には検査と治療があり、治療はさらに一般不妊治療と高度生殖医療とに分かれます。一般不妊治療はタイミング指導と人工授精まで、高度生殖医療は体外受精( I V F )、顕微授精( I C S I ) となります。現在、検査や一般不妊治療の多くは健康保険でカバーできますが、人工授精や高度生殖医療は健康保険適用外で全額自己負担となり、クリニックによってその設定料金もまちまちです。
時々、「高額なので高度生殖医療を受けたくない」という患者さんがいらっしゃいますが、高度生殖医療のほうが比較的妊娠率が高く、体外受精が適応であれば、一般不妊治療を続けるより安く早く不妊治療を終わらせることが可能かもしれません。凍結した胚は半永久的に保存可能で、再び採卵、体外受精をすることなく、第二子、第三子にとそのまま活かせます。助成金制度も活用し、ぜひ高度生殖医療も前向きに検討してみてください。
納得のいく治療、治療費で、不妊治療が楽になることも!
体外受精とは、女性の卵子を体の外へと採り出し、パートナーの精子と出合わせ、できた受精卵(胚)を子宮に戻すものです。受精の方法は大きく分けて、媒精(シャーレの上で卵子と精子を出合わせる)、顕微授精( 卵子に直接精子を注入する)の2つがあります。
卵子を採り出す前には、十分に成熟した卵子が育つように排卵誘発剤という薬を使用しますが、刺激の強い排卵誘発剤ではたくさん卵子が採れるものの、患者さんの体への負担も大きく、卵巣の予備能力(卵巣年齢)がない方ほど高負担となるので注意が必要です。
採取した卵子は、洗浄・濃縮後にピックアップした元気のよい精子と出合わせます。精子の数が極端に少ないために媒精が困難、過去の体外受精で受精障害があった場合は、顕微鏡下で卵子に直接精子を注入します。
その後、厳しい管理のもと、受精卵(胚)は培養液の中で細胞分裂します。2~ 3日育てた胚を子宮に戻すことを初期胚移植、5~ 6 日かけて育てた胚を戻すのが胚盤胞移植、いったん凍結して保管した胚を、適切な時期に融解して戻すことを凍結融解胚移植と呼びます。
胚盤胞になるまでの成長過程を観察することで、生命力の強そうな胚かどうかがある程度わかり、その胚を選んで戻すことができます。卵管水腫、卵管閉塞などの疾患がある場合も、胚盤胞まで育ててから子宮に戻したほうが着床しやすいのではないかと考えられています。
治療法にはそれほど大きな差はありませんが、費用は先に申し上げたとおりクリニックによってまちまちです。そこはレストランと同じで、技術料に加えて、立地の良さや設備の充実度などが加わることもあるでしょう。
料金設定としては、大きく分けて 2 種類あるように思います。フランス料理にたとえるならば、一方はフルコースで一般的に必要とされる検査と治療のすべてがパックになったもの。もう一方はアラカルトで、必要な検査と治療をその都度選び、その費用が加算されます。フルコースのほうが割安感はあるものの、必要のない検査を受けざるを得なかったり、途中で治療をやめると損をすることも。アラカルトは自分好みにアレンジできますが、治療の回数が重なるほど当然費用が増し、見積もりが立てにくいなど、どちらにもメリットとデメリットがあるので、クリニックのホームページなどを見て、患者さん自身もあらかじめきちんと比較検討してみてください。
しかし、自分にとっての「良い不妊治療」は費用だけでは計れません。高額だからこそ、担当医との相性、通いやすさなどにもこだわってクリニックを選びましょう。
モデルケース
体外受精(顕微授精) プラン
全胚凍結のコース 1 例
(高崎ARTクリニックHPより)
採卵………………………53,000円
精子調整……………………7,000円
顕微授精1個………………25,000円
※追加(1個あたり)………5,000円
分割期胚…………………10,000円
(胚盤胞期胚……………30,000円)
胚凍結……………………30,000円
保管/年間(1個あたり)…10,000円
胚移植……………………55,000円
凍 結胚融解………………20,000円
※アシストハッチング…10,000円
合計 255,000円~
妊娠成立時(+管理技術料300,000円)
(※はオプション。薬、検査費用は含まず)
「当院は、“アラカルト”式の料金設定 です。ひとつひとつの料金はできるだ け抑え、胎児の心拍を確認できた妊娠 成立時に、“管理技術料”(名称は各ク リニックによって違います)というい わば成功報酬を頂戴する料金システム にしています」(佐藤先生)