子宮内膜 が薄いために 移植を4回キャンセル。
4年間の治療で心が限界に
子宮内膜の状態は妊娠にどう影響しているのでしょうか。
また、子宮内 膜の状態をよくする方法はあるのでしょうか。
高いAMHや心の状態な ど気になる点を含めて、レディースクリニック北浜の奥裕嗣先生にお話 を伺いました。
ドクターアドバイス
これまでの治療データ
AMHの値
検査・ 治療歴
妊娠歴
AMHが 20 代女性の数値とのことです。
奥先生 一般的に 40 代の方が体外受精を行う場合に問題となるのは、AMH(抗ミュラー管ホルモン:卵巣予備能を表す)の低下によって、排卵誘発を行っても採卵できる卵子が少なくなることが問題となります。また、年齢とともに、卵子の染色体異常の割合が増えてくることも問題となります。基本的には、AMHが高ければ卵子はたくさん採れますので、 40 歳でもAMHが高いほうが妊娠に有利に働くことが多いですね。
ただし、AMHが高い方のなかには、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)をベースにもっている患者さんがいます。PCOSの方は、卵子がたくさんできやすいため、基本的には妊娠率は高くなります。一方で、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクも高くなります。卵子が過剰にできてしまう場合は、排卵誘発の方法を変える必要があります。当院では、注射の種類や量を調整したり、受精卵の凍結法をカスタマイズしたりします。例えばアンタゴニスト法であれば、HCG注射をアゴニストという点鼻薬に切り替えて卵子を成熟させるなど、オーダーメードの治療を行うことによって対応しています。
この方は月経不順ではありませんので、PCOSの可能性は低いと思います。ただ、AMHが高いとOHSSのリスクも高くなるので、担当の先生に「AMHが高すぎてもよくない」と言われたのかもしれませんね。
また、PCOSであると、卵子の質がよくない方がいらっしゃいます。このような場合は、インスリン抵抗性を確認します。治療が必要な方にはメトホルミンの投与や、マイタケ由来の成分でできたグリスリンⓇと
いうサプリメントを使用することによって、卵子の質を改善できる可能性があります。この方は妊娠歴がありますし、胚盤胞にもなっているので、卵子の質に問題はないと思います。
PCOSの診断は、月経不順や超音波検査で卵巣の状態を確認して行いますので、AMHの数値だけで決めることはできませんが、AMHが平均値よりも高いことも一つの診断基準にはなります。
子宮内膜の状態をよくする方法はありますか。
アドバイスをお願いします。
奥先生 凍結している受精卵は、いまの年齢で止まっていますが、母体の年齢とともに出産のリスクが高くなっていきますので、早くに移植をされたほうがいいと思います。流産されているということは、子宮内で着床しているということですので、受精卵の質に問題がある可能性は少ないと思います。
流産や子宮外妊娠などつらいご経験をされてきて、もう病院に行きたくないというお気持ちもよくわかります。カウンセラーがいる施設であれば、一人で抱え込まずに、治療と並行してカウンセリングを受けられてみてはいかがでしょうか。
残りの受精卵が5個ありますから、子宮内膜の血流を促す治療で着床環境を整えて、染色体異常でない受精卵に出会えれば、着床するチャンスはあります。医師、看護師、カウンセラーに遠慮せず、精神面のサポートをお願いしましょう。