【Q&A】胚盤胞について~政井先生

政井先生にお聞きしました。

佐久平エンゼルクリニック 政井 哲兵 先生
鹿児島大学医学部卒業。東京都立府中病院、日本赤十字医 療センター、佐久市立国保浅間総合病院、高崎ARTクリニック 勤務を経て、2014年に佐久平エンゼルクリニックを開院。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
みほさん(39歳)
昨年の5月から体外受精にステップアップしました。
5月採卵5個→受精せず、8月採卵6個→受精3個→胚盤胞1個、11月移植→陽性→6w稽留流産
受精障害ありとなったため、今年の2月に転院し、顕微授精を行いました。
採卵9個→受精3個→胚盤胞1個、4月胚移植陰性。
5月に採卵7個→受精6個→胚盤胞3個育ちました。
この3個は全て4BCです。
このまま移植をしていくべきか、悩んでます。
まず、受精障害については明確な定義というものはありませんが、一般的には十分な数の精子がいるにもかかわらず受精しない状態とされています。
受精障害にも程度があり、完全受精障害と言われる状態(採卵された卵子に対して十分量の精子を体外受精で混ぜ合わせても受精卵が全く得られない状態)から、受精はするが受精率が低く得られる受精卵が少ない状態まで様々です。
受精障害については原因によりいくつかの治療方法が考えられますが、体外受精で受精率が低い場合はその後の媒精方法で顕微授精を選択したり、さらに通常の顕微授精でも受精率が低い場合などは電気刺激法やカルシウムイオノファーと呼ばれる特殊な培養液を使って卵子活性化を行ったりする方法があります。

また、そもそも採卵によって成熟卵が得られないとその後の受精が進まないとされているため、受精障害の原因が未成熟卵子によるものであれば、卵巣刺激の方法を変えてみたり、ダブルトリガーといって、採卵決定時のトリガーにGnRHアゴニスト(点鼻薬)と、HCG(注射)の2種類を使って成熟卵子の獲得率を上げるなどの工夫を行うこともあります。

相談者様の場合ですが、最初の施設での1回目の採卵では完全受精障害の状態で、2回目の採卵では6個の卵子から3個の受精卵が得られたとのことなので、この間に例えば卵子回収のタイミング(採卵決定のタイミング)の違いなどにより成熟卵子がより多く得られたためではないか?などの推測ができるかと思います。

また、2件目の施設では最初から顕微授精を選択されていますが、顕微授精を行う場合は卵子の透明帯と呼ばれる膜をはがし、成熟確認を行ってから実施をしますので、成熟卵子の確認もできているかと思います。
2件目の施設での初回採卵ではたしかに顕微授精後の受精率が低いようにも見えますが、2回目の採卵ではその点も改善されているように思われますことから、治療施設の方で1回目の採卵を踏まえて何かしらの創意工夫がなされたのではないかと推察いたしました。

この後、3個の胚盤胞が確保できていますので、治療内容や方針的にも決して悪くはないように思いました。

今後は、そちらの施設の先生の考え方もあるかとは思いますが、このままおおらかな気持ちで胚移植に臨んでいただくでもよいのではないかと思います。

もしくは、将来に向けてもう少し受精卵を貯卵しておきたい希望がありましたら、先生と相談して採卵を続けてみるというのも考え方としてはありだと思います。いずれにしてもそこは主治医の先生とよくコミュニケーションをとりながら自身の理想とする治療が達成できればいいですね。

また、最近はいわゆるトリオ検査など、胚盤胞をよりよい環境で子宮に戻すための確認検査もあったりします。

年齢を考えるとたしかに貴重な胚盤胞ですので、これらの検査を事前に行って万全の体制で移植に臨むという考え方もありではないでしょうか。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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