Q 顕微授精の受精率 71 %は低い? 治療継続か転院か悩んでいます

 
波多野久昭 先生 日本医科大学卒業。ハンブルク大学産婦人科学教室留学後、日本 医科大学婦人科学教室講師、飯田市立病院産婦人科科長を経て、 2005年ノア・ウィメンズクリニックを開院。開院して10年、2015 年10月からは電子カルテを導入。昨年の9月から週4日ドクター2人 体制となり、患者さんをお待たせする時間が少し減りました。4月から は本格的に毎日2人で診療に当たります。ご期待ください!
 
じねこビギナーさん(31歳)からの相談 Q.男性不妊のため28歳から顕微授精で治療。一つ目の病院 ではアンタゴニストで採卵し4BBで妊娠するも初期流産。 その後の採卵4回は胚盤胞にすらならず自然周期のクリニッ クに転院しました。そこで最初の採卵で高評価の胚盤胞が でき、29歳で妊娠、出産。第2子希望ですが、主人の 転勤があり関西の系列病院に通院しています。今回もクロ ミッド Ⓡのみで2つ採卵し、1つは未受精、1つは初期胚盤胞でストップしたため凍結はゼロという結果でした。治療 は採卵3回までと決めています。第1子の経験から顕微は 技術が重要だと思っています。今の病院は私の年齢での顕 微授精の受精率が71%と聞き、少し低い気がして転院も 検討中。転院候補の病院は金額が2倍になりそうです。   

今通っている病院は顕微授精の受精率が71 %と聞き、少し低いのではと思われている ようです。

波多野先生 データはどんな人が顕微授精を しているかによって結果が変わりますので、 ほかの病院と比べるのは難しいですね。です が、一般的には顕微は8~9割の受精率なの ではないかと思います。当院も年齢別には データ化していませんが、トータルでの顕微授精率は9割くらいです。
  一般的な数字と比べると7割というのは少 し低く感じますが、こうして数字を教えてく れる病院はきっちりデータを取っていて、誠 実にやっていらっしゃる病院だと思うので、 信頼していいのではないかと思います。

顕微授精をするのに、技術による差は出る ものなのでしょうか。

波多野先生 顕微授精のポイントとして、ま ず一つ目に精子の選別があります。形のい い精子を選ぶということです。次に精子の 不動化をします。精子のしっぽを傷つけて 動きを止めるのですが、それが十分でない と卵子活性因子が出ず受精がうまくいかな いといわれています。それから細いガラス 管で卵子の膜を破って精子を中に入れるの ですが、その膜が十分に破れていないと精 子が入っていかないことがあります。
  慣れている培養士ならこれらの流れをミス なく行えると思いますが、そこに技術の差が 出る場合も多少はあると思います。

じねこビギナーさんは今後どのように治療 を進めればいいと思われますか?

波多野先生  今の病院は誠実な病院だと思い ますし、転院候補の病院は金額も高いとのこ とですから、このまま頑張ってみるのがいい のではないかと思います。  第 1 子の時は低刺激で評価の高い胚盤胞 ができたとのこと。じねこビギナーさんに は低刺激が合っているのでしょうね。次回はクロミッドⓇに注射を2~3回プラスして みたらいいのではないでしょうか。うまく いったのかどうかをどこで判断するかにつ いて、もちろん移植して妊娠するところま で行けばベストですが、質の高い胚盤胞を 得られたらその方法でOKと考えていただ くといいかと思います。
 
一般的にはグレードがBB以上であれば まずまずだとされ、妊娠率も高くなります が、たとえCがつくグレードの良くない胚 盤胞でも妊娠出産まで行くことはあります。 特に年齢が若い人はグレードが低い受精卵 でも妊娠することが多いと経験から感じて います。見た目が良くなくても生命力が強 い受精卵が多いのではないかと思います。

 
いずれにせよ凍結までもっていければ、 排卵誘発の方法や顕微授精の技術は問題な いと考えていいと思います。今回の治療で は採卵は3回までと決めていらっしゃると のことですが、2回目でグレードのいい胚 盤胞が凍結できたのであれば、3回目も同 じ病院で同じ方法で行えばよいのではない かと思います。
 
ただ、もし今の病院に不信感をもつよう だったら、転院されたほうがいいかもしれ ません。

 

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