タイミング法や人工授精による治療を受ける時に重要にな って くる の が 排 卵 の 予 測 。
ど の ような 検 査 を す れ ば より 正 確 な 排 卵 時 期 を 見 極 め る こと が で き る の か 、かし わ ざ き 産 婦人科の柏崎祐士先生にお話を伺いました。
ドクターアドバイス
複数の情報を参考にして総合的に診断します
排卵日の予測や排卵のリズムは1つの検査、1回の検査で 明確にわかるわけではありません。画像による観察やホル モン値の測定、粘液の状態など、いくつかの情報を総合的 にみて診断していきます。
排卵の時期を知る方法には 自宅で簡単にできるものも
排卵の時期を知る方法や検査はいくつかあります。
まず、自宅でできる方法の一つとしてあげられるのは基礎体温の計測。起床時の体温を計測し表にすることで、妊娠に必要なホルモンの変化やリズムを把握することができます。排卵すると卵巣からプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されます。このホルモンには体温を少し上げる作用があるので、それを排卵の目安としてとらえることができるんですね。
ただし、上がり始めた時期が排卵時期ということになるので、排卵を正確に予測することはできません。予測というより、あとから振り返って「この時期に排卵したのかも」という復習の意味のほうが大きいと思います。自分の排卵リズムを知る一つのバロメーターとして考えていただいたほうがいいでしょう。
自分でできるものとしてほかに排卵検査薬があります。排卵する直前はLH(黄体形成ホルモン)というホルモンが脳下垂体から大量に分泌されます。排卵検査薬は尿中に出たLHの値をみて、排卵の時期を予測するものなんですね。
最近の検査薬の精度はかなり高いとされていますが、尿を使った測定なので水分を多く摂ると色が薄く出てしまったり、基礎値のLHが高い多嚢胞性卵巣症候群の人は排卵する時期ではないのに陽性と出てしまうことも。目安にはなりますが、確実性を求めるなら病院で採血をして、血中のLH値を計測したほうがいいと思います。
卵胞径や頸管粘液の状態からも 排卵を予測できます
病院で行う検査は採血によるホルモン検査のほか、超音波や頸管粘液を調べる検査があります。
生理が始まると、たくさんの卵子の中から排卵するために選ばれた卵子(主席卵胞)の袋がだんだん大きくなってくるんですね。排卵間近になると直径が 18 ~ 20 ㎜に。超音波でみてその大きさに達していたら排卵直前だと判断し、タイミングをとってもらったり、人工授精を行います。同時に子宮内膜の厚さもチェックして、着床に適した状態になっているかどうか確認します。
また、生理が始まるとエストロゲンが分泌されます。このホルモンが子宮頸管の細胞に働きかけ、粘液が出てくるんですね。粘液と一緒になることで精子は受精する力をつけていきますから、分泌が増えていけば排卵が近いということに。病院で粘液を調べればわかりますが、「最近、ドロッとしたおりものが増えている」とご自身で感じる方も。ただし、頸管粘液は排卵が終わるとさっとなくなってしまうので、これだけで正確に排卵を予測するのは難しい部分もあります。
生理3~5日目の卵胞期から 測定するホルモンの基礎検査
月経周期に合わせて行うホルモンの検査は、排卵のリズムを知るためにも重要な要素で、不妊治療スタート時に必須の検査といえるでしょう。
ホルモン検査は卵胞期(低温期)・排卵期・ 黄体期(高温期)の3つの時期に行います。
生理3~5日目の卵胞期には、主にFSH(卵胞刺激ホルモン)とE2(エストラジオール)の値をみます。この時期のホルモン値は基礎値といって、排卵に向けたスタート地点。本来ならFSHもE2値もあまり高くないほうがいいんですね。周期ごとに変動することもありますが、FSHが高いと卵巣機能の低下がみられる、E2が高いと卵子の質が悪くなると考えられています。
排卵期と黄体期にはホルモンが ダイナミックに変化
生理 11 ~ 14 日目の排卵期はE2の値が上昇し、排卵直前にはLH値がポンと高くなります。P 4 (プロゲステロン)値は排卵近くになると微妙に変化して、この時期に少し上昇してくるのですが、上がりすぎるのも良くありません。LHは急激に上がり、E2は200pg/ ml 程度、P 4 は1 ng / ml 程度であることが理想的だと思います。
生理 20 ~ 22 日目の黄体期(高温期)には P 4 の値がピークに。排卵してからだいたい1週間後くらいの時期で、この時にP 4 が 10ng / ml 以上になっているかどうかみます。
黄体ホルモンがしっかり分泌されて黄体 化が順調に進んでいるかどうか。血中のホルモン値の計測のほか、超音波で子宮内膜の厚さもみて、着床・妊娠の準備がきちんと整っているかどうかをチェックします。
検査でホルモン値に異常が出てしまった場合、「妊娠できないかも」と心配されると思いますが、周期や前に行った治療の影響などによって変動が出る場合がありますし、数値が悪くても「このホルモンが低いので補充していきましょう」、逆に「高いから抑えていきましょう」など、状況に合わせて薬でコントロールしていくこともできます。
適切に対処していけば排卵することは十分可能ですから、検査結果を見て悲観することなく、主治医の先生を信頼して前向きに治療を続けていただきたいですね。