子宮頸管粘液分泌不全の改善について

子宮頸管粘液の分泌不全を 改善する方法はありますか?

美馬 博史 先生 東京慈恵会医科大学医学部卒業。同大学附属病院産婦人科、 美馬産婦人科院長を経て現職。産科婦人科および不妊治療 の臨床医としての長いキャリアを経て、妊孕性(妊娠する力) を守る大切さを訴え、体にやさしいホルモン治療、カウンセリ ング療法、抗酸化食事療法等を積極的に啓蒙。普段着る服 はセレクトショップなどで自ら選ぶという美馬先生。先日、銀 座を歩いていたら声をかけられ、オシャレで粋な老紳士を紹 介する『Dannasm』という雑誌に掲載されたそうです。

ドクターアドバイス

●精子を受け入れにくい原因がないか、ほかにできる検査を
●女性ホルモンを補充して、再度ヒューナーテストの実施を
ねばねばさん(26歳)からの相談 Q.結婚2年目。今月から不妊専門のクリニックに通い始め、 現在検査はヒューナーテストのみ行っています。その結 果は「子宮頸管粘液分泌不全(粘液が固い)」「精子の 運動率が悪い(子宮頸管内 20%、腟内0%)」で、普 通と不良の間くらいとのことでした。粘液が固いのでムコ ソルバンⓇ(本来、絡んだ痰の切れを良くする薬)を処方 され、夜にもう一度夫婦生活をもつように先生にいわれ ました。聞き慣れないことばかりで先生にもあまり質問で きなかったので、子宮頸管粘液の分泌不全をネットで調 べたところ、だいたいの方が人工授精をしていることを 知りました。できれば自然妊娠の形をとりたいのですが、 粘液の分泌不全を改善する方法はありますか?

子宮頸管粘液の分泌不全とはどのような ことなのでしょうか。

美馬先生 通常は排卵が近くなると、精子 を通りやすくするために頸管粘液はかなり 増えてきます。
頸管粘液はほとんどの場合、 無色透明で、 10 ㎝程度伸びるほど粘稠性が あるんですね。
分泌が増え、酸性からだん だんアルカリ性に傾くことで、精子の受け 入れ態勢が整います。
ヒューナーテストはこの受け入れ準備が きちんとされているかどうか調べるもの で、自然妊娠を希望されているご夫婦には 欠かせない検査です。
結果が良好であれば、 タイミング法でも妊娠する可能性は高いと 思います。
ねばねばさんは「粘液が固い」と診断され たとのこと。固いというのは量が少ないとい うことだと思われます。
少ないのは、卵巣の 働きが悪いからではないでしょうか。
正常な場合だと、排卵すればエストロ ゲンプロゲステロンなどの女性ホルモ ンがしっかり分泌されます。
成熟卵子1 個あたりで250~300pg / ml 程度の量 の女性ホルモンが分泌されていれば頸管 粘液が増えて、子宮内膜が厚くなってき ます。
ねばねばさんの場合はそのシステ ムがうまくいってないことが考えられま す。
ヒューナーテストの結果は担当の先 生が診断されているように不良で、この ままの状態ではタイミング法で妊娠する のは厳しいのではないでしょうか。

頸管粘液を改善する方法はありますか?

先生からはムコソルバンⓇという薬を処方 されたようですが。
美馬先生 ムコソルバンⓇというのは普通 は風邪の時に出す内科の薬で、頸管粘液 を改善するために処方するというのは聞 いたことがありません。
これを飲むことで粘液の量が増えるとはちょっと考えに くいですね。
当院だったらまず、エコーで排卵する卵 子がちゃんとあるのかどうか調べてみま す。
成熟の度合いをみて、進みが悪いよう なら女性ホルモンを補充します。
これは飲 み薬、貼り薬、どちらでも構わないでしょう。
もしクロミッドⓇという排卵誘発剤を使 いながらタイミング法をしているのなら、 使用を中止します。
この薬を服用すると頸 管粘液が減ったり、子宮内膜が薄くなる副 作用が出ることも。
使用を中止できない場 合はできるだけ量を減らし、並行して女性 ホルモンを加えるようにします。また、精子をうまく受け入れられないと いう場合、ほかにクラミジアによる子宮頸 管炎や、まれですが、抗精子抗体をもって いるケースも考えられます。
このようにあらゆる可能性を調べて、一 つずつつぶしていく。
そして、問題がない ようなら女性ホルモンを補充して、再度 ヒューナーテストを受けていただきます。
そこでまた結果が不良だったら、ご本人も 納得して次のステップである人工授精に進 むことができるのではないでしょうか。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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