転院後に二段階胚移植。検査、治療しても着床しないのはなぜ?

内田クリニック 内 田 昭 弘 先 生 島根医科大学医学部卒業。同大学の体外受精チームの一員として、1987 年、島根県の体外受精による初の赤ちゃん誕生に携わる。1997 年に内田クリニック開業。生殖医療中心の婦人科、奥様が副院長を務める内科、大阪より月1 回来院の荒木先生による心理カウンセリングとサポー ト体制が充実している。

相談者:アイアイさん(35歳)5 年前、子宮外妊娠で右卵管を切除。その後、人工授精7回、体外受精顕微授精を3回行いましたが、陰性で病院を変えました。今回、転院後初めてホルモン補充周期で二段階胚移植を行い、陰性。これまで造影検査、腹腔鏡、トリオ検査、子宮鏡検査を受けましたが、着床しません。子宮頸がん、体が んは毎回、引っかかりフォロー中で、不育症の検査は結果待ちです。残りの凍結胚が初期胚、胚盤胞1つずつです。次も二段階胚移植をするのか、シート法を行うのか迷っています。

 

アイアイさんの相談内容で、気になる点はありますか?

内田先生●僕は妊娠成立の条件として受精卵の問題が8割から9割、残りの1割から2割は子宮側の着床条件と伝えています。アイアイさんは子宮外妊娠の経験があるので、子宮の問題がある可能性も考えなければならないと思いますが、やはり受精卵を中心に考えたいです。気になるのは、顕微授精をしていること。僕は転院した人の場合、体外受精で受精卵になった患者さんには顕微授精はしません。体外受精でできる受精卵のほうが顕微授精よりいいと思っています。もしかしたら、体外受精をした周期の時に顕微授精を必要とするような情報があったかもしれませんね。転院後の受精卵についての情報がないので断言はできませんが、顕微授精を3回して凍結周期がなかったということは、あまりいい受精卵ではなかったのかもしれません。しかし、受精卵の良し悪しについては、まだ解明されておらず、P G T-A (着床前胚染色体異数性検査)を行って、染色体検査での異常を認めない受精卵を移植しても 1 0 0 %の妊娠率にならないという報告もされています。受精卵については、解明を待たないといけないところです。

転院後、二段階胚移植  を行っています。シート法との違いはどのような点にありますか?

内田先生●二段階胚移植では2 回に分けて受精卵を子宮に戻します。まず凍結保存した初期胚の受精卵を戻し、その後2日から3日のうちに凍結保存した胚盤胞の受精卵を戻します。しかしこの方法では双子になることがあるので、その確率を下げるため受精卵を2回に分けて戻すのではなく、1段階目は培養液のみを入れる方法に変更されました。それがシート法です。

今後の治療の進め方や検査について

内田先生●今後は残りの胚が初期胚と胚盤胞だから、次も二段階胚移植を行えばいいと思います。敢えてシート法をする必要はないでしょう。二段階をやらないとしたら初期胚がますからね。1つ残ってしまいまた今年に入り、僕は子宮内フローラを調べています。検査をすると、約半分の患者さんは子宮内細菌叢が乱れています。患者さんからしてみれば、子宮内の環境が良くないなかで胚移植するのはとても抵抗があるようです。検査でも治療でも、後悔が残るようであれば、できることはしたいですね。といってもコストもかかりますから、ご夫妻でよく考えてということになります。

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