最後の採卵に向けて

採卵4回、移植5回を実施。

卵巣刺激法を工夫して 採卵を優先すべき?

ノミコさん(39歳)からの相談 Q.38歳で治療を開始。不妊原因は夫の閉塞性無精子症、PCOS、片側卵管閉 塞です。TESEにより精巣内精子を採取して顕微授精を行い、現在まで採卵4 回、移植5回で4回目のみ陽性。しかし、8週目で流産してしまいました。あと 2日目4分割胚1個、胚盤胞2個凍結してあります。卵巣刺激法は4回ともアン タゴニスト法です。凍結精子があと1回分のみであることと私の年齢を考慮し、 採卵はあと1回で終わらせるつもりですが、刺激法はまた同じでいいでしょうか。 まもなく治療を再開するつもりですが、少しでも若い卵子を確保するため、採 卵から始めたほうがいい? また一般的に、39歳では残り3つの受精卵が正常 である確率はどれくらいですか?
吉田 仁秋 先生 獨協医科大学卒業。東北大学医学部産婦人科学教室入局、不妊・ 体外受精チーム研究室へ。米国マイアミ大学留学後、竹田綜合病 院産婦人科部長、東北公済病院 医長を経て、吉田レディースクリニッ ク開設。2016 年 1月に「仙台 ARTクリニック」として移転・リニュー アルオープン。2017 年秋に仙台で開催されるIVF学会を主催。1~ 2年前から準備を始め、内容を決めていきます。仙台ARTクリニック は今回、PGSやPOI、がん患者の精子・卵子温存治療などが主な 発表テーマになる予定だとか。

採卵4回、移植を5回行ってもなかなか妊娠に至らない原因は?

やはり卵巣刺激法などを変えていったほうがいいですか。
吉田先生 4回目の採卵では 17 個中 10 個が 変性卵、3つが未成熟卵だったということ。
数はたくさん採れているのに、成熟卵が4個だけというのは少ないですね。
断定的にはいえませんが、おそらく女性側の年齢とPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)、両方の要素でなかなか良い卵子が獲得できないのだと思われます。
卵巣刺激法に関して、この方は4回同じ方法を繰り返していらっしゃいます。
どの回も 16 ~ 30 個と、数は採れても良い結果が 得られていないので、やはり次回から工夫していく必要があると思いますね。
PCOSの方の場合、当院ではIVM(未成熟卵体外培養)というやり方で、ある程度成果を上げています。
この方法は卵胞が未成熟の状態で採卵し、体外で卵子を培養して成熟させるというもの。
通常の体外受精では卵胞の直径が 20 ㎜前後の時期に採卵 を行いますが、IVMでは 10 ~ 12 ㎜の大き さになる頃を目指して採卵を行い、体外で成熟させた後、体外受精または顕微授精を行って胚を移植します。
このやり方なら卵胞を成長させなくてよいので、排卵誘発のための注射を減らすことができるし、卵巣への刺激が少ないのでOHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクを避けることもできます。
また、妊娠率も年々上がってきており、当院の最近のデータでは 40% 近くに。
どこでもできる方法で はありませんが、実施を始めた施設は全国的に徐々に増えてきています。
もう一つ、これは刺激法ではありません が、PCOSの方で、インスリン抵抗性をもっている場合、それを下げるメトホルミンというお薬を採卵前3カ月程度飲んでいただくと、卵子の質が改善されることがあります。
当院ではIVMの前にもほとんどの方に処方しているので、このような形で体質改善を試みるのも一つの手だと思います。

今 39 歳ということですが、やはり移植よ り採卵を優先したほうがいいのでしょうか。

吉田先生 この年代になると、半年、1年のスパンで卵巣機能がどんどん低下していきま
す。
ノミコさんはまだ卵子が採れていますから、できれば 30 代のうちに採卵しておくこと がベターなのではないかと思います。
凍結してある、胚盤胞2個を含む残りの受精卵が正常かどうかの割合ですが、これについて現状では着床前診断を受けてみないとわかりません。
一般的に、 40 歳を過ぎ ると卵子の染色体異常の割合は5~7割といわれています。
着床するかどうかはまた別の問題ですが、うまく着床できたとしても流産しやすくなる。
このようなことから考えても、もし次の採 卵を考えているのならなるべく早く、できるだけ質の良い受精卵でトライできるよう、集中して治療に臨んでいただきたいですね。
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