診察の予約時や初診時に「基礎体温をつけてくださいね」と いわれることがありますが、基礎体温を測ることで何がわかって、 妊娠や不妊治療とどんな関係があるのでしょうか。

とくおかレディースクリニックの徳岡晋先生に説明していただきました。

 

徳岡 晋 先生 防衛医科大学校卒業。同校産婦人科学講座入局。自衛隊中央 病院産婦人科勤務後、防衛医科大学校医学研究科に入学し、 学位(医学博士)取得。2005 年、とくおかレディースクリニッ クを開設。時間を見つけては無理をしないペースでのジョギ ングや腹筋を続けて、体力作りをしている徳岡先生。豊穣の 秋に向けて、万全な体調で治療成績アップを目指します。

基礎体温からわかること

●自分で排卵のバイオリズムを確認できる数少ない方法

●低温期・高温期の状態で排卵やホルモンの異常がわかる

●排卵のタイミングの予測や検査時期を決める目安に

●ARTでは胚移植後のホルモン補充に役立つことも

排卵のバイオリズムを 自分で知ることができる

女性の体温は風邪などの発熱時や極度にストレスを受けている時などを除き、だいたい 0.3 ~ 0.5 度の間で周 期的に変動しています。

この微妙な変化をとらえるのが基礎体温。

月経の1周期を測って数値をグラフ化すると、正常な場合、高温期と低温期の二相に分かれます。

この変動はただの体温変化ではなく、実は妊娠に関わるさまざまなサインが示されているんですね。

月経開始から排卵までの低温期にはFSHというホルモンが分泌されて、卵胞が育っていく。

卵胞が成長していくと今度はエストロゲンというホルモンが出て、卵胞を育てるとともに子宮内膜も厚くしていきます。

ある程度卵胞が成長すると、排卵を起こすLHというホルモンが一気に分泌され、排卵。排卵後1~3日経つとプロゲステロンという黄体ホルモンが出て体温が上昇し、高温期に移行します。

黄体が維持されている期間は高温が続きますが、妊娠 が成立しないと黄体はだんだん退縮していって、いずれホルモンを出さなくなってしまいます。

そうすると子宮内膜が剥がれ、体温も下がって月経期に入っていく。

このように体温の変動により、排卵のバイオリズムを 自分で知ることができるのが基礎体温のメリットです。

もっとも参考にするのは 二相性になっているかどうか

「昨日は何度で、今日は何度だった」と細かく数字を気にする方がいますが、私たち医師が一番知りたいのは、体温がちゃんと二相に分かれているかどうかということ。

多嚢胞性卵巣症候群などでなかなか排卵が起こらない方は、二相性になることはほとんどありません。

また、「生理はちゃんときています」という方でも、基礎体温をみると高温期の体温が非常に低いことも。

そのような方のなかには黄体機能不全といって、黄体ホルモンの産生状態が悪くて体温の上がりも悪くなっている場合があります。

こうしたホルモンの異常による排卵障害や、排卵の予測は基礎体温である程度情報を得ることができますが、それだけで確定的な診断や治療方針を決めることはありません。

超音波で卵胞や子宮内膜の状態を診たり、採血でホルモン数値を調べて、より的確にその方の体の状態を把握していくことになります。

基礎体温はあくまでも排卵のバイオリズムの傾向を知るもので、正確性が100%というわけではありませんが、検査や診断の手がかりやマーカーの一つになることは間違いありません。

たとえば、排卵障害があって、どこで排卵が起こるのかなかなか予測できない方の場合、超音波でまめに診ることができればいいのですが、超音波検査は保険内だと月に2回から3回と回数が決まっているので、毎日受けることは難しいでしょう。

そのようなケースでは、基礎体温の情報があれば少しでも確率を上げるような排卵指導ができると思います。

移植後の黄体ホルモン 補充時にも役立ちます

「基礎体温はタイミング法や人工授精など一般不妊治療を受ける時に必要なもので、体外受精など高度生殖医療では測る必要はないのでは?」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。

確かに高度生殖医療では卵胞の発育やホルモンの状態 を細かくコントロールしていくので、採卵までの間に自然排卵のバイオリズムを参考にするということはほとんどありませんが、移植してからは基礎体温の情報を判断材料の一つにすることがあります。

移植後、黄体補充をする場合、「体温がちゃんと安定 して、高温期になっていますか?」と伺うことがあります。

下がっていれば採血検査の回数を増やし、結果によっては腟錠を増やしたり、黄体ホルモンの注射をプラスすることも。

このように高温期の体温変動はある程度参考になるので、当院では高度生殖医療を受ける患者さんにも基礎体温を測っていただくようにお伝えしています。

1日、2日抜けても大丈夫。 ストレスになっては逆効果!

基礎体温は毎周期ぴたりと同じグラフを描くわけではなく、周期によって多少変動するのが普通ですが、傾向が大きく変わることはないと思います。

排卵誘発 剤のクロミッドⓇなどを飲み続けると、全体的に体温が上がる場合がありますが、バイオリズムが極端に乱れるということはないですね。

しかし、不妊治療と関連のない精神科のお薬や胃潰瘍のお薬を飲むと、高プロラクチン血症を引き起こして無排卵になるなど、排卵障害をきたすこともあります。

そうなると基礎体温も二相性になりません。

基礎体温表を見て医師も確認しますが、心当たりがある方は診察時に申告していただくと、排卵誘発をするなど、より効率的な治療ができると思います。

これまでお話ししたように基礎体温からはさまざまな情報が得られるので、妊娠を望んでいる方はぜひつけていただきたいのですが、つけることがストレスになるようなら、無理して測ることはないと思います。

また、つけるなかで1日、2日測るのを忘れてしまっても構いません。

大きな流れをとらえられればいいので、気軽な気持ちでつけていただきたいですね。

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