3度の流産を乗り越えて

3度の流産を乗り越えて。

夫の献身的な協力と 思い切った3カ月の治療休憩で ついに待望の妊娠、出産へ  。

子ども好きな夫のためにも、自分の年齢的にも 確実な方法で早く赤ちゃんが欲しいから 着実にステップアップを進めてきたジュンコさん( 40 歳)。

3度の流産を経験しながらも前向きに治療に挑んだ 二人の物語の後編をお届けします。

体外受精後初の移植で 2度目の堕胎手術

34歳の時に4つ年下のヒサ ノリさんと結婚し、不妊治療 を始めたジュンコさん。AMH0.5ng/ml と低い数値ながら も、治療をすればすぐに子ど もは授かるだろうと思ってい ました。

また、確実な方法を選択した いからと、一年間のうちにタイ ミング法、人工授精、体外受精 へと果敢にステップアップして いきます。

しかし、思うように結果が 出ないばかりか人工授精時に1回流産、体外受精も初の移 植で妊娠反応が出るものの、 すぐに心音が止まってしまい、 合計2回の堕胎手術を受ける ことに。

「2回目の堕胎手術の時には、 体への負担も考えて、薬ででき ないのか、先生に相談したんで す。

でも答えはNO。

結果、手 術をしたのですが、その時は普 段穏やかな主人もその方針に納 得できなかったようで、後から 周りの人に聞くと、相当怒って 愚痴っていたそうです」

ジュンコさん自身、2度の つらい堕胎手術後は、それま で前向きに治療を続けてきた気持ちに余裕がなくなってき ていたと振り返ります。

さらに続く3度目の流産 でも諦めたくなかった

体外受精に進んでからは、 自己注射も始まっていました。

「看護師という職業柄、注射す ることに抵抗はなかったはず なのに、次第に苦痛を感じる ことが増えていました。

どうして私、こんな痛い思 いをしているんだろうって思 い始めたんですよね。

それで 着床しなかった、またやりま しょうっていう時に、またやるのか…という思いがよぎり 始めて…」

その後、5回目の移植時に は、妊娠検査薬の自己判定で 陽性反応が出たものの、診察 当日には心音が消えていると いう悲しい出来事も。

「この頃が一番つらい時期で したね。

ジネコとかも見て、つらいのは自分一人じゃない、 同じように頑張っている人も いるのはわかっている。

でも、 諦める人の書き込みに共感を 覚えるようにもなっていたの です。

体外受精からステップ ダウンして人工授精やタイミ ング法だけでやる方法もある のかなとも思ったり…」

とジュンコさん。

それでもまだ諦めたくはな い、反応が出るのなら治療は続 けようと気持ちを奮い立たせて いたといいます。

それは、ひと えに「彼の遺伝子をもった子が 欲しかったから。だから、落ち 込んでいた時期には、私でなく てもいいのかなと思って、彼に 『浮気する?』なんて聞いたり もしました(笑)」

自分の体を信じて 3カ月の治療休憩を決意

なかなか結果の出ない治療 がつらくなってきていた日々 のなかで、ある日ふと、この まま続けていてもいい卵がで きないのではないかという思 いが、ジュンコさんの心をよ ぎります。

それは不妊治療を始めて2 年間、3回の流産を繰り返し ながらも自分の体と真摯に向 き合ってきたからこそ、理屈 ではなく体の感覚として実感 したともいいます。

「仕事でも、体が疲れた時に いい仕事ができなくなるよう に、卵巣も同じなのではない か。

体と心が繋がっているの であれば、卵巣も一度リフレッ シュしたほうがいいのではな いかと感じたのです」

悩む時間はそんなに長くは かかりませんでした。

「決めた 時にはドキドキしましたし、正直、賭けのようなものでし た。

先生にもきちんと卵がで きる人なんだから治療は継続 したほうがいいといわれたの ですが、自分が思っていた以 上に長引いている治療に、一 度区切りというかケジメをつ けたかったのです」

そして、ジュンコさんは3 カ月間、治療を休むことを決 意します。

この時、体外受精 で採卵は4回、移植はすでに 8回目を迎えていました。

ヒサノリさんも彼女の気持 ちをそのまま受け止め、二人 は久しぶりに不妊治療から離 れた日常生活を謳歌したとい います。

定期的な通院のため にこれまでできなかったこと にチャレンジしたり、二人で 安産祈願の神社参拝をかねて 旅行にも出掛けました。

「休憩前はやはり煮詰まって いたんでしょうね。

治療をお 休みしたらすごくサバサバし た気持ちになれて。赤ちゃん も自然な夫婦生活のなかで、 できたならできたでいいねっ て二人で話して、気持ちも体 もリセットできたような気が します」

休憩後初の受精卵を移植 そして、ついに妊娠!

そして、3カ月の治療休憩 後、初の採卵。これまでにない、 よいグレードの卵が採れました。

「これはイケる!って思 いましたね(笑)」。

ジュンコ さんの直感通り、この時の受 精卵を凍結融解胚移植で2個 戻し、1個が無事着床。

今度 こそ心音が途絶えることもな く、ついに不妊治療専門クリ ニックを卒業し、一般産科へ と移ります。

「本当に嬉しかったですね。

今、振り返れば、思い切って 休憩したことが良かったのか もしれません。

また、どんな 時も、夫が常に冷静に話を聞 いてくれて、支えてくれてい たからこそ、治療を続けるこ とができたのだとも思います。

でも、実は姉が妊娠 10 カ月の 時に流産していることもあっ て、今も不安と喜びは7対3。

不安のほうが大きくて…」

取材時、大きくなったお腹に 目をやりながら、そう語ってい たジュンコさんは、2015年 9月1日に元気な男の子を無事 出産しました。

分娩室に入って40 分後には生まれた超安産だっ たといいます。

「実はまだ2つ凍結卵が残っ ているのです。

主人も私も三 人兄弟だから、できればあと 2人欲しい、どうせなら双子 でもいいなんて思っています (笑)」

そう笑顔で語るジュンコさ んとヒサノリさん。

二人三脚 で叶えた夢には、まだまだ幸 せな続編がありそうです。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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