子宮外妊娠の手術後、 急激なAMHの 低下が不安です

藤野 祐司 先生 大阪市立大学医学部卒業。米国留学、同大学医学部婦人科学教 室講師を経て、1997 年にクリニックを開業。現在、同大学で非常 勤講師も務める。B型・おとめ座。先日、誕生日を迎えて、いつに なく親孝行をしたい気持ちが強くなったという先生。「そういう年頃なの かな?」と、恥ずかしそうに照れ笑いをされる優しい表情に、思わず癒 される取材スタッフでした。
ももさん(35歳)からの相談 Q.2013年8月に子宮外妊娠で完治後も卵管に大きな血の塊が残ってしまい、 2014年、今の病院に転院し、腹腔鏡手術をしていただきました。血腫は大きか ったものの、卵管温存になりました。また、手術してくださった先生は、腹腔鏡・ 不妊治療でかなり有名な方で安心しておりました。しかし、1年半の間にAMHは 5.3ng/mlから1.55ng/mlへと極端に落ちてしまい、かなりショックです。7月 から体外受精を始め、胚盤胞2回移植するも陰性。次回、初期胚を2個移植予定 です。質問は、子宮外妊娠の術後でAMHがこんなに下がることがあるのでしょうか? 手術によって下がったとしても、やはり刺激してもあまり卵子の数は採れないのでし ょうか。また、AMHがまた上がってくれることはないでしょうか。次回また子宮外 妊娠で手術したとしたら、AMHがどこまで落ちるのだろうと不安でいっぱいです。

AMHは年齢と共に

AMHの値が1年半で急激に下がったことを気にされています。手術の影響が少なからずあるのでしょうか?
藤野先生 AMHというホルモンの値は、あくまでも卵巣予備能力を測る指標の一つに過ぎません。
参考にしていただいたらいいと思いますが、年齢とともに下がるのは事実ですし、それが卵巣に残っている卵子の数を表しているといえるかもしれませんが、AMHがすべてで絶対的な治療の結果を表すものではないということは、十分理解していただいたほうがよいでしょう。
また子宮外妊娠の治療のために卵管の血腫を切除する腹腔鏡手術を受けていらっしゃいますが、手術とAMHが低下したことを直接結びつけるのは早計かもしれません。
本来、今回の手術は、卵管機能を残すように血腫だけ取り除く手術だと思いますので、卵巣をとりまく血液の流れに大きな影響は出ないのではないかと思われます。
熟練した専門医による手術のようですし、そのせいでAMHが低下したとはお考えにならないほうがよいでしょう。

手術がなくても低下していたかも

手術をしなくても、AMHが低下していた可能性もあるということですか?
藤野先生 統計的に女性は 35 歳を過ぎると、 妊孕性、つまり妊娠する力が大きく低下する傾向にあります。
そして下がり方のカーブには大きな個人差があります。
なだらかに下がる方もいらっしゃれば、急激に下がる方もいらっしゃいます。
ももさんの年齢がちょうど 35 歳であることを考えれば、年齢的な 影響が出始めても不思議ではありません。
当院のデータではAMH1・ 55ng/ ml といえば、ちょうど 40 歳くらいの平均値です。

採卵数は減る可能性があるが

採卵数にも影響しますか?
藤野先生 もちろん採卵できる卵子の数が減る可能性はあるかもしれませんが、体外受精をするにあたっては、そんなに心配する必要はないと思います。
おそらくショート法などの従来の一般的な刺激法を使っても、一度の採卵で 10 個とか 20 個といった数はもう期 待できないでしょう。
しかしながら、3〜4個の卵子を採取できれば、そこに質の良い卵子が出てくる可能性は高いと思います。

数字にとらわれず胚盤胞移植で

今後の治療について、アドバイスをお願いします。
藤野先生 やはりAMHの数値だけにとらわれすぎないことですね。
妊娠歴があり、受精卵も胚盤胞にまで到達していることを見ると、それほど後ろ向きに考える要素は少ないと思いますので、このまま体外受精の治療を進めていかれることをおすすめします。
もう一つ気になるのは、初期胚移植をされていますけれど、子宮外妊娠の既往があるのであれば、できれば今後は初期胚移植よりも、子宮外妊娠のリスクがより少ない胚盤胞移植を選んだほうがいいでしょう。
妊娠率も 1.5 倍ほど高まりますので、結果に結びつく 可能性が高いと思います。
質の良い卵子を見極めるということも含めて、胚盤胞移植での治療を続けられるのがいいと思います。
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