死産後、次の妊娠について

死産という結果でしたが 妊娠できたのは点鼻薬を 使ったからでしょうか?

大島 隆史 先生 自治医科大学卒業。1982年、新潟大学医学部産科婦人科学教室入 局。産婦人科医として3年間研修後、県内の地域病院の1人医長として 4年間勤務。1992年、新潟大学医学部において医学博士号を授与さ れる。新潟県立がんセンター新潟病院、新潟県立中央病院勤務を経て、 1999年、大島クリニックを開設、院長に就任。6月15日(日)に上越文化 会館で開催される公開不妊セミナーに、大島先生はオープニングで「妊活の ための治療の受け方と進め方」というテーマで講演予定。特別講演ではカウ ンセラーの方のお話もあり、参加費も無料なので、興味のある方は同院まで お問い合わせを。
Sariさん(30歳)からの相談 Q.タイミング法5回、ヒューナーテスト1回。十分な精子はいるけれど2個くらいしか 動いておらず、私のAMH値も1.14といわれて人工授精をしました。その時、「精子が少なく運動率も低いので、今回はやめたほうがいい」といわれましたが、トライ しました。2日前に夫婦生活の指導があり、次の日にスプレキュア®を点鼻。翌日、 人工授精を行いましたが、胎児異常が見つかり、16週目で泣く泣く別の病院で人工死産しました。通っていた病院は不妊治療専門。初期から切迫で絶対安静だった ので、妊娠を知らせた後は行っていません。 死産でしたが、妊娠できたのはスプレキュア®で排卵がうまく促されたからかな、 と思っています。なるべく自然な形で妊娠できるなら、次は「タイミング法でスプレ キュア®使用」という方法も考えられますか? それとも人工授精のほうがいいで しょうか。

人工死産はつづく?

妊娠の可能性について、まず人工死産されたというのは、今後の妊娠に何か影響がありますか?
大島先生 胎児異常といってもさまざまなケースがあります。
Sariさんの場合、どのような状態だったのかはっきりわかりませんが、人工死産になったのはたまたまで、これが何度も続いたり、今後の妊娠に大きく影響するということはおそらくないと思います。

低AMHでも…

もう一つ、気になるのがAMHの値ですが、1・ 14 というのは低いのではないでしょうか。また、ご主人の精子の状態も良くないようです。
大島先生 AMH(抗ミュラー管ホルモン)の検査は卵巣の予備能をみるためのもので、残りの卵胞数が予測できるといわれています。
Sariさんの値は1・ 14 とのこと。もし単位がナノグラム( ng/ mL )なら、やはり低い数値ですね。
30 歳であれば平均値はだいたい 3.5 ng / mL 程度。
1・ 14 だと 40 歳くらいの値だと思い ます。
ただ、妊娠するための条件として、最終的には女性の年齢が重要になってくるので、それほど心配されることはないのでは。
残りの卵胞は少なめですが、卵子の質には影響がないので、妊娠される可能性は十分あると思います。
当院でも、 32 歳でAMHの値がSariさんくらいの方がいらっしゃいましたが、人工授精1回で妊娠されました。
精子については、最初の精液検査では異常 は見られなかったとのこと。
精液所見は結構変動がありますから、もし次に人工授精にトライされるようでしたら、その時にまた洗浄した精子の状態をチェックして、見極められるといいと思います。

卵胞の成熟度を上げるには

Sariさんはスプレキュア ® で排卵が促されたので妊娠した、と考えられていますが。
大島先生 スプレキュア ® というのは自然周期で排卵させるホルモンを誘導するので、持続効果が少ないんですね。
ですから、この薬で妊娠されたというより、たまたま人工授精でタイミングが合って妊娠されたのでは?
当院では、卵巣が大きく腫れそうな方以外、 点鼻薬で排卵させることはほとんどありません。
スプレキュア ® よりHCGを使ったほうが卵胞の成熟度が上がると思いますし、持続性があるので排卵後も黄体期まで刺激します。
黄体期のことを考えても、点鼻薬よりHCG注射で排卵を促したほうが有効性は高いのではないかと思いますね。

HCGを使った人工授精

今後の治療方針は?
大島先生 人工授精の前は薬なしでタイミング法に5回臨まれています。自然の排卵では難しかったということは、やはり排卵誘発の薬は使ったほうがいいでしょう。
もしタイミング法を望まれるのなら、薬を使った誘発で3周期ほど行って、それでも結果が出なかったら、やはりHCGを使って人工授精にトライされてみては?
以前通われていた病院に 死産を報告し、気持ちを切り替えて、また前向きに治療に臨んでいただきたいですね。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。