【Q&A】貯卵を移植するか、破棄して採卵するか悩んでいます。~林先生【医師監修】

さーさん(33歳)

保険適用が残り1回。残っているたまごはday6の4BAと4BCです。次移植するなら2個戻しの予定です(今まで2個戻しはしていません)。SEET法は1回しています。DAY6の4AA移植時はグレード5AA、DAY6の5BA移植はグレード6BAを戻すも着床していません。2回の移植はグレードがわかりません。
卵管水腫がまた溜まっているのかと思っても、先生は大丈夫と言っていました。原因がわかりません。
残っているたまごを移植するか、今のたまごを破棄して、また採卵をしてもらいもっといいたまごをとるか悩んでいます。他に検査した方がいいものがありますか?

ウィメンズクリニックふじみ野の林先生に聞いてきました。

【医師監修】ウィメンズクリニックふじみ野 林 直樹 先生
1983年、東京大学医学部卒業。埼玉医科大学総合医療 センター(川越市)などを経て、現職。「体外受精、顕微授精も高いクオリティで対応していますが、できる限り自然に近い不妊治療をご提供したいと考えています。 患者さんはそれぞれお悩みも違いますから、どんなこと でもまずご相談を。時にはご要望に沿えず、厳しいこと を申し上げるかもしれませんが、常に患者さんにとって ベストな治療法をご一緒に見出したいと思っています」。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください
腹腔鏡下卵管采形成ならびに癒着剥離手術既往のある33歳の方で、反復人工授精、反復体外受精不成功の方ですね。文面からお察しするに比較的受精卵の状態も良さそうにお見受けしますし、年齢からも受精卵の染色体異数性の頻度も25~30%程度と推定されます。
着床障害検査として、ERA検査歴、子宮内細菌叢検査歴がありますが、問題なしあるいは結果を考慮し修正されての胚移植がなされているとすると、やはり着床障害の代表的な疾患である卵管水腫と、(検査すみかもしれませんが)子宮内病変(子宮内膜ポリープ)の有無が気になりますね。かつて手術を受けた卵管病変が進行して卵管水腫に発展することも時に経験され頑固な着床障害となります。
卵管造影検査と子宮鏡検査をお勧めしたいです。それが否定されたとすると難題となります。
ネット上でもよく上がっている免疫学的検査(Th1/Th2検査、ネオセルフ抗体など)もありますが、前者は一部の医療機関(先進医療Bですので)を除いてはやはり自費検査、後者も自費検査のため、検査を受けますとそれ以後の移植も自費となってしまいます。今後自費での体外受精胚移植を行っていくのならば、検査を受けてみるのもありかと思います。ただし昨年のESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)の発行した反復着床障害のgood practice recommendations にはそれらの検査は推奨される、もしくは考慮してもよい検査にはリストアップされておらず、つまりエビデンスに乏しいということです。

また残っている胚を破棄して採卵することは、本来の保険適用の趣旨からは外れてしまいますが、医療機関の所在する都道府県によってもその適否の解釈は微妙に異なることもあるのでご担当の先生に尋ねてみてください。

2個移植を選択することもやむを得ない選択かと思います。多胎妊娠のリスクが上がるだけで、生児獲得率は大してあがらないですが、1個ずつ移植していくという心理的負担や胚移植回数の保険適用の問題もありますね。難しいところです。わたくしの知る限り、2個移植とSEET法の着床率の違いの報告はないと思います。

卵子の質を上げるための排卵誘発法はとくにありません。おそらく卵巣予備能は問題ない方と思いますので、副作用を抑えて、採卵数を増やすとしたらアンタゴニスト法やPPOS法でよいのではないでしょうか。頭で考えこみネガティブ思考になるとよくありません。運動不足の解消など体質改善はある程度効果があるかもしれません

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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