移植を早めたほうが 着床しやすいのでは ないでしょうか?

石原 尚徳 先生 高知医科大学卒業。神戸大学医学部大学院修了。兵庫県立成人病 センター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、2012年より久保みずきレ ディースクリニック菅原記念診療所院長。不妊治療から周産期・小児医療 まで、地域に根ざした総合的なサポート態勢が整う同クリニックで、精力的 に活動する。不妊外来だけでなく、出産にも立ち会う機会が多いという先 生。「今年は当院で出産される方が、おそらく1万人目を超えるでしょう!」と のこと。ますます多忙な一年となりそうです。
コナさん(38歳)からの相談 Q.現在、体外受精で採卵を2回行い、1回目は7分割の新鮮胚を移植しました。2回目は 14個採卵できて7個が受精。すべて凍結してクロミッド®で排卵させて凍結胚盤胞を1 個移植してリセット。またクロミッド®を飲み、5日目の胚盤胞を移植しました。現在は結 果待ちですが、リセットしそうな感じです。 そこで質問ですが、排卵日を0と数えて5日目に移植していますが、排卵日が22時か ら0時までの場合の排卵日はいつになるのでしょうか? たとえば、19日夜に排卵した ら、「20日が排卵日0日」と数えて移植しています。1日早く移植したほうが着床しや すいのではないでしょうか?

排卵日の正確性

そもそも排卵日のカウントにおいて、数時間の差は影響するものですか?
石原先生 基本的に数時間では変わらないと思いますが、1日というのは変わってくる可能性がありますね。
本来、卵子と精子が出会う受精は、卵管内で成立するものです。
受精卵は分裂をくり返して成熟しながら少しずつ卵管内を移動し、受精後3〜4日目に子宮にたどり着いて、4〜5日目に胚盤胞となり、そこで子宮内膜に着床します。
体外受精はそのスケジュールに基づいて行われているわけですね。
一般的に排卵日を0日目として考えると、受精卵は4日目から5日目に胚盤胞となるので、その時期に胚移植すると、半日から1日くらいで着床するだろうと考えられています。

着床可能な期間

なるほど。ということは、体外受精の場合、受精卵の成長が多少遅い場合もあるし、スケジュール通りにいかないこともある?
石原先生 そうですね。
人間の受精卵が着床できる期間は短くて、2日間ほどといわれています。
夜中に排卵した場合、たとえば、ご相談のように 19 日の夜に排卵したとしたら、私はその日を0日目とカウントします。
コナさんは 20 日を0日目と書いておられますね。
主治医の先生にもお考えがあるのでしょう。
おそらく、今までうまくいっているからそのスケジュールで移植されていると思いますが、1日早く移植したほうが着床しやすいことも可能性として、なくはないと思います。
移植のタイミングに関しては、同じ受精卵 を使って比較するというわけにはいきませんので、難しいところです。
あくまでもセオリー通りに5日目から6日目にかけて着床すると考えれば、一般的なスケジュールから1日ずれて、6日目から7日目に着床となってしまうと、やはり着床できる期間が短くなっている可能性がないとはいえません。

自覚症状も参考になる

精子の運動率が不良で人工授精を 12 回行った後に体外受精へとステップアップ。今後の治療、先生ならどう治療しますか?
石原先生 排卵周期での移植日の決定については、いつ排卵しているのか、できるだけ正確に把握する必要があると考えますので、超音波検査をメインに確認していきます。
補助的に血液検査で黄体ホルモンのレベルなども参考にします。
あとは患者さんの自覚的な症状を参考にしています。
排卵痛があったとか、なかったとか。
担当する患者さんのうち、半数ぐらいの方は、いつ排卵したかがご自身でもわかるようです。
おそらく、もうすぐ排卵日だと自覚されているからだと思うのですが、その感覚も大切にしたいですね。
クロミッド ® は子宮内膜に影響するといわれているので、当院では胚移植のためには用いません。
当院ではホルモン補充周期や、あるいは自然排卵周期で移植しています。
胚移植は子宮内膜の着床できる状態、着床可能な時期を優先して行うことが最も重要だと思います。
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