採卵数が少なく、変性卵ばかりです。

AMH値で採卵しても 変性卵のくり返しです。 どんな採卵法がいい?

蔵本 武志 先生 久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修了。山口県立中央病院産 婦人科副部長、済生会下関総合病院産婦人科部長を経て、1990年オー ストラリア・PIVETメディカルセンターへ留学。帰国後、1995年蔵本ウイメ ンズクリニック開院。O型・おうし座。開院から18年が経ち、この夏には不 妊治療での妊娠数が1万人を突破。「さらによりよい医療体制を整えるため に、スタッフ育成にも力を注いでいきたい」と先生。
りのさん(32歳)からの相談 Q. 一昨年、子宮内膜症の腹腔鏡手術をしました。昨年から不妊治療を始めましたがAMH値 は0.24ととても低いものでした。そのため、すぐに体外受精の準備に入りました。今年 に入り、2回採卵しました。1回目はアンタゴニスト法で3個採卵しましたが、すべて変 性卵。2回目はロング法で1個しか採卵できず、変性卵でした。 AMH値とここまでの結果を考えると、非常に焦ってしまいます。今後も体外受精にチャレ ンジしたいと思っていますが、どのような採卵方法がいいのでしょうか。また、日常生活で できることがあれば教えていただきたいです。

チョコレート嚢胞とAMH

りのさんは、2年前の秋に子宮内膜症の手術を受けていますが、AMHの値と関係はありますか?
蔵本先生 りのさんの子宮内膜症は、もしかしたらチョコレートのう胞だったのではないでしょうか。
チョコレートのう胞の手術は、注意していても正常な卵胞を多く取ってしまうことがあります。
普通の卵巣のう胞でも少し正常卵胞が取れてしまいますが、チョコレートのう胞はそれ以上に取れてしまうので、術後はかなり卵胞数が減少し、AMH値も低下します。
しかし、チョコレートのう胞は大きくなると、まれにがん化したり、のう胞が破れて急性腹膜症を起こして結果的に手術で取ることになる恐れがあります。
大きさにもよりますが、手術前に早く妊娠できるといいのですが。
りのさんは卵巣の予備能が低下し て、卵子が少なくなっていることが予想されます。
そういう場合、ロング法ではちょっと難しいです。
むしろ非常に反応が悪くなります。
注射の本数が多くなるので。卵巣予備能が低下しているなら、月経初期のエコーで、小卵胞、つまり胞状卵胞が4個ぐらい見られたら、ショート法などのもう少し強い方法で排卵誘発を行うのがいいでしょう。
胞状卵胞が1〜2個しか見えない 時は、どんなに注射をしても数は増えません。
ですから胞状卵胞の数にもよるのです。
その時は、質のいい卵子を1〜2個採取することを考えたほうがいいでしょう。

低卵巣刺激法を進めるケース

具体的にはどんな方法ですか?
蔵本先生 やや軽めの低卵巣刺激法をおすすめします。
月経開始2〜3日目よりクロミフェン1日1錠を7日間くらい服用し、途中からFSH製剤かHMG製剤を150単位ずつ1日おきに注射します。
卵胞径が18 ㎜以上になったら、HCG製剤を注射して採卵します。
クロミフェンを使うと子宮内膜が 薄くなることがあるので、できた胚の質がよければ、胚を凍結しておき、別の周期に融解・胚移植をするのがいいと思います。
この方法なら2カ月に1回の採卵は可能です。採卵時の採卵針の吸引圧はあまり強くせず、卵子にダメージを与えないように採卵するのが望ましいですね。

日常で出来ること

日常生活のなかでできる、卵子の質を上げる方法はありますか?
蔵本先生 コエンザイムQ 10 やビタミンC、ビタミンEなど抗酸化作用のあるサプリメントを服用してもいいと思います。
下半身浴で血行を改善するのも一つの方法でしょう。
また、ストレスがかからないよう に休みながら治療するのもいいと思います。
強いストレスはホルモン分泌を行う視床下部に影響を与え、それが結果的に卵胞の発育低下にもつながると考えられますので。
りのさんは採れたのは変性卵でしたが、卵子がないわけではありません。
いい卵子をつくるためにも、できるだけリラックスして過ごしてください。
※子宮内膜症、チョコレートのう胞:子宮内膜に類似した組織が卵巣や卵管、ダグラス窩などで増殖し、出血したり炎症を起こしたりするものが子宮内膜症。卵巣にできた子宮内膜症の炎症部位から出血した血液が中に溜まり、嚢(のう) 状になったものをチョコレートのう胞という。
※ロング法、ショート法:採卵を目的に、クロミフェンやFSH製剤、HMG製剤といった排卵誘発剤を用いて卵巣を刺激する方法。通常、比較的若く(30歳代半ばくらいまで)卵巣機能に問題がなければロング法、 卵巣機能が低下している場合や30歳代後半の場合には、ショート法が選択される。
※低卵巣刺激法(マイルド法):卵巣刺激法の1つで、通常、35歳以下で卵巣機能に問題がない場合、多嚢胞性卵巣症候群や卵巣過剰刺激症候群を起こしやすい場合、 注射をしても卵胞があまり育たない場合に適応となる。
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