子宮卵管造影検査後に下腹部などの痛みが続いています

ささ山 高宏 先生 産業医科大学医学部医学科卒業。産業医科大学病院、和歌山労 災病院、九州労災病院、セントマザー産婦人科医院の勤務を経て、 1997年4月、幸の鳥レディスクリニックを開業。患者さん一人ひとりを 大事にする姿勢で生殖医療に携わる。A型・おひつじ座。スポーツが 趣味の1つという先生。「先日も福山マラソンに出場したら、患者さん が『院長、頑張って!』と大声で応援してくれました。その日のタイムがよ かったのは、あの声援のおかげだと思います」と語ってくださいました。
mnyさん(33歳)からの相談 Q.不妊治療を始めて5年です。ダイエットがきっかけで18歳から25歳まで月経が止まり、 今も月経不順ぎみです。卵巣年齢は20代の数値でしたが、 ※ 多嚢胞性卵巣症候群のため 排卵しません。そこで、ホリルモン注射で卵子を育てようとしていますが、なかなかうまく いかず未だ排卵がありません。 3週間ほど前に子宮卵管造影検査をしたのですが、それ以来、右脚の付け根あたりと下 腹部がジンジンして今も重い痛みが続いています。また、おりものが黄色くなり、量も増 えています。ひょっとして細菌などに感染したのでしょうか。今後、妊娠・出産はできるで しょうか。

子宮卵管造影の影響

mnyさんが訴えている痛みが心配ですが、子宮卵管造影検査による副作用の可能性はありますか。
ささ山先生 子宮卵管は腹腔内とつながっているため、子宮や卵管に菌がいると、造影剤を流すことによってお腹の中に菌が散ってしまいます。
放置すると骨盤内に広がった菌が増殖して腹膜にまで炎症が広がる可能性もあります。
これを、骨盤腹膜炎というのです が、特にクラミジア感染症の方はなりやすいと思います。

骨盤腹膜炎の疑い

もし骨盤腹膜炎だとしたら、どのような治療が必要ですか?
ささ山先生 骨盤腹膜炎を放置すると、最悪の場合、循環血液の中で菌が増殖して敗血症になることも考えられます。
そうなると命の危険性も出てきます。
すぐに病院で炎症反応などの検査を受けて抗菌剤による治療を受けなければなりません。
mnyさんの症状は、骨盤腹膜炎の疑いがあると思います。
もしくは、油性の造影剤を使って いた場合、このような症状が起こる可能性も稀にあります。
造影剤には油性のものと水性のものがあり、吸収が遅い油性の造影剤を使用した場合、卵管の周囲や骨盤内に肉芽腫や癒着ができることがあるのです。
それによる痛みの可能性も考えられなくはないですね。
副作用を防ぐ方法はありますか?
ささ山先生 炎症の元となる細菌の検査をすることですね。
当院では、子宮卵管造影検査の前に、必ず検査を行います。
おりものの変化についてはいかがですか?
ささ山先生 おりものの量が増えて黄色くなるなどの症状は、カンジダ腟炎と思われますので、これまでの症状も踏まえ、すぐに病院で受診してほしいと思います。

体重と排卵

注射をしても排卵しないことも気にされていますが。
ささ山先生 ホルモン検査のデータがないので、mnyさんの下垂体や卵巣機能がどの程度なのかは不明です。
しかし、ダイエットをきっかけとした長期の無排卵ということから、おそらく多嚢胞性卵巣症候群ではなく、体重減少性無月経だろうと思われます。
mnyさんの現在の体重と身長か ら計算すると、BMIは 16 ・3。
これは痩せすぎですよ。
好きなものをたくさん食べてもいいので、もっと太りましょう。
また、ホリルモン注射と書かれて いますが、フォリルモン注射ではないでしょうか。
フォリルモン注射のようなLH(黄体形成ホルモン)をほとんど含まない H MG製剤で反応が出にくい場合は、LH含有比の高い製剤を選択するとまず排卵が起こるでしょう。
卵巣年齢が若く、無排卵が原因で 妊娠しないのですから、排卵することができれば妊娠・出産できる可能性は十分にありますよ。
※多嚢胞性卵巣症候群(PCOS):月経異常や不妊、多毛、肥満などの症状があり、慢性的にアンドロゲン(男性ホルモン)の過剰や血液中の黄体形成ホルモンが高値(卵胞刺激ホルモン上昇を伴わない)を示す。卵巣内に たくさんの小嚢胞がある。
※敗血症:免疫力が低下している状態の時に、たとえばクラミジア感染症など、局所的な感染症を起こした細菌が血液を介して全身に回り、発症した全身性炎症反応症候群。
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