自力では生理が来ません。

FSHが高値でAMHが0。

妊娠するための治療法は?

卵巣機能不全と診断され、自力では生理が来ない場合、 どのような治療法があるのでしょうか。

福田ウイメンズクリニックの福田先生にお聞きしました。

福田 勝 先生 順天堂大学医学部・同大学院修了。米国カリフォルニア大学 産婦人科学教室留学後、順天堂大学医学部産婦人科学教室 講師を経て、1993年福田ウイメンズクリニック開院。デニムスタ イルがお似合いの福田先生。もう20年間続けていて、患者さん にはおなじみです。外見とともに気持ちも若々しく、友人との電話 での会話は学生の時のノリと変わっていないとか。

ドクターアドバイス

AMHは卵巣予備能をみる1つの目安。低値でも排卵・妊娠している人はいます

卵巣機能不全で妊娠を望む方は、体外受精など高度生殖医療も視野に

これまでの治療データ

検査・ 治療歴

治療歴10年。

2年ほど前にMRIで卵巣の検査をした際、卵巣がはっき り見えず、子宮も小さめといわれる。

染色体検査は異常なし。

2年前の 検査ではFSH値80~150、AMH値0。

数年前からカウフマン療法 を続けているが、不妊治療はまだ始めていない。

不妊の原因 となる病名

卵巣機能不全

精子 データ

まだ行っていない

早期卵巣機能不全

ぬとっとさんは 20 歳頃から生理不順になり始め、現在は薬を使わないかぎり、自力では生理が来ないそうです。これは医学的にはどのような状態なのですか。

福田先生 ご本人もすでに診断されているかと思いますが、POI(早発卵巣機能不全)であると思われます。

通常、女性は 50 歳前後で閉経を迎え、卵巣の機能も失われますが、POIの人はそれよりも早く、 40 歳未満の時期に卵巣の機能不全を起こしてしまいます。

POIの自然発症頻度は 30 歳まで に0・1%、 40 歳までに1%。

卵巣手術や抗がん剤治療、放射線療法、膠原病の治療後など医原性によるものを加えると、全女性の2%に近い症例が存在するのではないかといわれています。

多くはありませんが、決してまれな病態ではないともいえるでしょう。

診断する時の目安としてはFSH の値もそうですが、ほかにAMHやインヒビンBの値によっても卵巣の予備能をみることができ、POIの場合は著しい低下がみられます。

AMHが低い=妊娠出来ないではない

AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が0ということですが、これは完全に閉経状態で、妊娠の可能性はないということなのでしょうか。

福田先生 検査方法にもよりますが、通常は0という数値はなかなかなく、最低ラインは0・1程度ではないでしょうか。

当院では0・ 16 未満が最低値となっています。

表す数値が多少違うといっても低いことには変わりがなく、ほとんど分泌されていない状態であることは間違いないでしょう。

しかし、AMHの値はあくまで1つの目安であり、卵胞はもう0で、妊娠の可能性はないと断言はできません。

海外のデータでは、POIでAMHの値が1以下の人でも卵胞発育、受精が可能な症例があることが報告されていますし、当院でも、AMHが測定不能の0・ 16未満の患者さんが自然で排卵されたケースがあります。

卵胞が完全に枯渇してしまった早 発閉経の場合は妊娠は難しいといわざるをえませんが、POIの病態で、治療によって少しでも反応するのであれば、まだ妊娠の可能性はあると思います。

カフマン療法

治療として、生理を起こすために何年かカウフマン療法を行ってきたということですが。

福田先生 通常、続発性の無月経の治療として、カウフマン療法やエストロゲン(卵胞ホルモン)を補充するエストロゲン療法は第一選択になると思います。

カウフマン療法は規則的な月経周 期を人為的につくり出す方法で、低温期にあたる時期にエストロゲンを、高温期にあたる時期に、エストロゲンとプロゲステロン(黄体ホルモン)を投与します。

卵巣の機能が低下して排卵がうま くいかないと、脳にある下垂体が卵巣にもっと働くように指令を出し、卵胞を大きくさせる働きを持つFSHというホルモンをたくさん分泌させます。

一見良いことのように思えますが、FSHが高い状態が続くと、卵巣ではFSHの受容体が減ってしまい、逆に卵胞が反応しなくなってしまうんですね。

カウフマン療法では、卵巣から出 るホルモンを外から加えます。

それを下垂体から出るホルモンが認識して、通常はFSHの分泌が抑えられるのですが、ぬとっとさんは何回行ってもなかなかFSHの値が下がらなかった。

つまり、ちゃんと反応しなかったということですね。

点鼻薬を活用

そこで、カウフマン療法に加え、ナサニール R 点鼻薬を使うようにしたら、FSHの値がぐっと下がったということです。

福田先生 ナサニール R はGnRHアゴニストというお薬で、視床下部に働きかけることで脳下垂体ホルモンの分泌を抑制する作用があります。

FSHの値を下げるので、ぬとっとさんのようにカウフマン療法だけでは反応しない場合に併用することがあります。

FSH値が大幅に下がったということですが、やはりこれはナサニール R の作用で一時的に下がっている状態で、AMHの値もほとんど変わらないと思います。

ナサニール Rをやめてしまえば、おそらく、またFSHは高値に戻ってしまうでしょう。

妊娠率の高い高度生殖医療を併用

今回は、薬なしの状態で基礎体温が二相に分かれ、卵胞らしきものも見えているそうですが、今後、妊娠を望むとしたらどのような治療をしていけばいいのでしょうか。

福田先生 二相に分かれているということは排卵している可能性もありますね。

FSH値が下がったということですから、しばらく様子をみていくのも1つの方法。

またFSH値が戻ってしまうようなら、これまでと同様にカウフマン療法などで反応をみたり、ナサニール R のようなGnRHアゴニストを使っていく。

ただし、今回反応が良かったからといって、次回どうなるのかはなかなか予測が難しいところです。

もし早く妊娠を望まれるようなら、自然の排卵を待って自然妊娠や一般不妊治療に期待するのではなく、より妊娠率の高い高度生殖医療を併用するのも選択肢の1つになるかと思います。

※POI(早発卵巣機能不全):40歳未満で、4~6カ月間月経がなく、ゴナドトロピン高値、エストロゲン低値がみられる。加齢による閉経とは異なり、卵巣機能が改善する可能性もある。

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